↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第十四章/リリアンヌを知るとき
415/425

そして日常へ

リリアンヌ視点



「ごめんなさい」



「何を怒っているのかも分からないのに、謝らないでください」


やっぱり、怒っているらしい。



「…気は、済みました」

リリアンヌは、小さな声で返した。



「ブルックのおかげで、いろいろと分かりました」



「そうではなく。一体、何をそんなに調べているのです」



「…何か、対策ができればなと思って…」

つい、誤魔化してしまった。


“ま族”の件を、アランフォースにも伝えるべきだろうか。


でも…枷とは関係のない話だし、きっと困らせてしまうだけだし…



「…そんなに、私を信じられませんか?」



「…!?アランフォースのことは、信じています」

咄嗟に、思いきり首を振った。



「私が、あなたを護ると言いました」

アランフォースは、まっすぐに言い切った。



「あなたは、絶対に異形の存在(ゼノプーパ)になりません」



「……」


…違う。


そうじゃない。


私は、絶対に――



「…不安な気持ちは分かります」


静かな声が落ちた。



「ですが…他のことにも、目を向けましょう」



「…他のこと?」

リリアンヌは、そっと顔を上げた。



「…昨日の私の言葉を、もうお忘れのようですね」

アランフォースは、わずかに眉をひそめた。



「あなたは戻ってきてからずっと、そのことばかり考えています」



「だって…考えないわけにはいかないでしょう?」


枷の件は、特に。



「…考えるなとは言っていません」

アランフォースは、間を置いて答えた。



「ですが、それ以外のことも忘れないでほしいと言っているのです」



「…それ以外?」



「あなたは、村を出たあとに何と言っていましたか?」



「え…?ええと」


村を出たあと、ミホバに貰った腕輪を見つめて――



『早く王都に帰って、やりたいことも多くあります』



「…あ」



「あなたの望みは、何ですか?」

アランフォースは、ゆっくりと尋ねた。



「…!」



――大好きな人たちと、大切な時間を過ごしたい



「…明日、町まで出かけてもいいですか?」


自然と、そんな言葉が出ていた。


無性に、サムやギタンたちに会いたくなった。



「もちろんです」

アランフォースはしっかりと頷いた。



「サムのお店…開業したのかな」


王都に戻ってきたら、すぐにでも訪ねる予定だったのに。



「ビッケと一緒に戻ってきたことも、伝えなくちゃ」


メルやカヤは、きっと大喜びするだろう。



「でも…きっと、授業もいっぱい待っているかな」

リリアンヌは苦笑いを浮かべると、窓の方へ顔を向けた。


もう、屋敷は近い。



「お母様に、戻ってきたらお茶会に行きましょうって言われていたの」


いくら成人前とはいえ、王族だ。


いつまでも避けてばかりでは駄目だろう。



「また…日常が戻ってくる」


枷の件があっても――


日々は、続く。



これもまた、大切な私の物語だ。



「やっと…帰ってきた感じがしました」

ふっと微笑み、再び正面に顔を向けた。



「…そうですね」

アランフォースが、優しく微笑んだ。



やがて、馬車がゆっくりと速度を落とした。


屋敷の門の前でアランフォースと別れると、キリがすぐに合流した。


二人で、入り口へ向かっていく。



「お嬢様、キリ様。お帰りなさいませ」


「お帰りなさいませ」


ステファンの後ろで、ビッケが真似してお辞儀した。



「ただいま。ステファン、ビッケ」


ビッケを見たら、ほっとした。


やっと息が深く吸えた気がした。



「ビッケ、頑張ってね」

小さく手を振り、階段を上がっていった。



「…キリ。明日ね、城下町の方に行こうと思っているの」



「そうか」



「ついてきてくれる?」



「当たり前だ」



「精霊探しを…本当に、ゆっくりしてもいいのかな」



「精霊王自身が、そう言った」



「そうだね」



「…まだ不安か?」



「…ううん。みんなが傍にいてくれるから、大丈夫」



「そうだな」



「キリ…ありがとう」

リリアンヌは、キリの手をぎゅっと握った。



「君の夢を、叶えろ」

キリが、そっと微笑んだ。



「…うん」


枷を知っても、私を受け入れてくれる人たちがいる。


夢を叶えろと、背中を押してくれる人たちがいる。



本当に、幸せだ。



…でも。


十八歳になれば、きっと――


“物語”と同じように、なるのだろう。



…それを、誰かに言う必要なんてない。


だから――



――大好きな人たちと、大切な時間を過ごしたい



今は、まだ。


その望みを叶えていく。




『今までとは比べものにならないほどつらいことが、君を待ち受けているだろう』




――物語が大きく動くのは、


それから二年後の話。



第十四章・完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。