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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第十四章/リリアンヌを知るとき
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“ま族”のなぞ

リリアンヌ視点



この世に存在する種族は――


人族、


エルフ族、


獣人族、


ドワーフ族。


いなくなったとされていた、精霊。



セスランディアには、人族、エルフ族、獣人族が住んでいる。


それから、自分の肩の上とデューゼの森に、精霊はいる。



“ま族”の情報は…どこにもない。


樹牧族についても、触れられていない。



けれどネウロの言う通り、樹牧族は聖樹なのかもしれない。


どうしてそんな名前なのかは謎だけれど、あれだけ特別な樹だ。


まったく分からないのは、ま族だけ。



ま族――


考えられるのは…魔族。



魔族って…何だろう。


この世界に、魔物はいない。


“物語”にも、一切登場しなかった。


…魔。



『この、悪魔め』



「リリアンヌ殿下」



「…はいっ」

ぱっと、本から顔を上げた。



「そろそろ部屋へ向かわないと、間に合いません」


階段の脇にいたはずのアランフォースが、目の前に立っていた。



「あ…もう、そんな時間」

リリアンヌは、慌てて本を閉じた。


机に積まれた本に重ねると、急いで螺旋階段へ向かった。



「ごめんなさい…本を戻すのを、お願いしてもいいかな?」



「ええ、もちろんです」

案内の者が、お気をつけてと見送った。


久しぶりに会ったけれど、変わらず元気そうで良かった。



記憶を頼りに、図書室のある北館から本館の上階へと向かった。


初討伐へ行く前までは、いつも通っていた。


たった数年前のことなのに、ひどく懐かしい。



…魔族。


やっぱり、悪魔しか思い浮かばない。



『この地を支配していた悪魔を、精霊王が精霊たちを率いて征伐したことが、この世界の始まりだと言われています』


その名は、教師の口からも出ていた。



精霊王によって倒された、精霊の天敵。


それに、大聖堂に通っていた時、アイラ様も本を見ながら教えてくれた。



『この地はもともと、精霊だけの世界でした。

そこに、この“ふたつ”の悪魔が現れ、支配するようになりました』


『男女一体ずつ、ふたつの悪魔です』


『男の方は凄まじい武力を持ち、精霊を捕まえました。

対して女の方は、精霊を魅了し、騙し、喰らってきたと言われています』



…一生懸命、説明してくれたのに。


当時は他のことに気を取られて、話半分に聞いていた。



『ふたつの悪魔は、精霊王オーリアによって討伐された後――』


あのあと、何と言っていただろうか。


とても大事なことを聞き逃してしまった気がする。



…アイラ様に、会いたい。


マコにも…


三年前にザンビア砦で心配させてしまって、それきりだ。


助けてもらったのに、礼も言えていない。


仲良くなった霊拝師(オランス)たちとも、会いたい。



でも…私が行けば、きっとまた問題を起こしてしまう。


スワハマは、引退した。


今は、誰が大教主となったのだろう。


聖守護騎士団(サークラグラディウス)も全員いなくなって…大聖堂は、一体誰が護っているのだろう。



「…その階段が、近道です」



「…あ」


考えごとをしていて、階段を通り過ぎてしまっていた。



「ごめんなさい…まだ、よく場所が分かっていなくて」

リリアンヌは苦笑いを浮かべながら、階段を上がっていった。



「この階段で、そのまま部屋まで行けるの?」



「いいえ。あと三つ階段を上がったら、廊下をお進みください。その先の階段で、最上階まで向かいます」

アランフォースが、後ろから答えた。



「…なるほど」


王城は、本当に広い。


いつまで経っても、道を覚えられる気がしない。



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