表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第十四章/リリアンヌを知るとき
405/411

山積みになった課題

リリアンヌ視点



「すまないが、まだ隠してくれないか」

玉座の間から出てすぐに、ロデオがビッケに向かって言った。



「はい」

ビッケは、すぐに頭からマントをかぶった。



「お父様…」



「…分かっている」

ロデオは言いながら、すっと腕を差し出した。


リリアンヌはその腕に手を添え、二人で並んで廊下を進んでいった。



後ろから、アランフォースとキリとビッケが続いている。


途中ですれ違った使用人や近衛隊の兵たちが、驚いたような顔を向けた。



ドレスではなく、旅帰りの装いだ。


綺麗な床を汚してしまっているようで、なんだか申し訳なかった。



「…ビッケの件は、お前の好きにするといい」



「…本当ですか?」

リリアンヌは、ぱっと顔を上げた。



「成人前とはいえ、お前が主だ。その意味は分かるな?」

ロデオが、言い聞かせるように続けた。



「はい。何があっても、私の責任です」



「少し違うが…まあ、いい。必ずステファンから指導を受けろ。お前について回るなら、まず仕事を覚えさせるんだ」



「……」

リリアンヌは、ちらりと後ろへ視線を向けた。


ビッケがしっかりと頷いた。



「分かりました」

再び顔を前に向けて、父に答えた。



「ステファンの許可が出たら、人前に出ることを許そう」



「…分かりました」


それもきっと、ビッケのためになることだ。



ロデオは王城を出ると、エラドリオール家の紋章が入った馬車へ向かった。



「屋敷までは、馬車で戻れ」



「でも…汚れてしまいます」


マントも靴も、土埃だらけだ。



「そんなことは気にするな」

ロデオは小さく溜息をついた。



「いいか。お前は、王族だ」



「…はい」


レックスと同じことを言われてしまった。



「お前は少し目を離した隙に、より警戒心がなくなってしまった」



「……」


それも、同じようなことをアランフォースに言われた気がする。



「自覚は、あるな?」



「はい…」



「いくら好きなことをしていいと言っても、自分の立場を忘れるな」



「…分かりました」


久しぶりに父から説教されてしまった。



馬車の前で、ロデオはそっと腕を解いた。



「また夜にな。気をつけて帰れ」


娘の額に口づけすると、すぐに城の中へ戻っていった。


四人で馬車に乗り込み、エラドリオール邸へ向かっていく。



「ホ~」


リリアンヌは、窓辺へ飛んでいくスノウを目で追った。


そのまま、窓の外をぼうっと見つめた。



旅から帰ってきた途端――


課題が、たくさんできてしまった。



左肩のことを、ゆっくり考えたい。


だけど…


どうして私は、こんなに冷静なのだろう。



異形の存在(ゼノプーパ)になると、分かっているのに。


どうして左肩は、ちっとも痛まないのだろう。



『瘴気を送られても。また、私があなたを助けます』



「……」


ザンビア砦で、ヌシカに瘴気を使われた。


感情が一線を越えれば、同じように瘴気を送り込まれる。



あの時は…自力では戻ってくることができなかった。


ひとりでは、絶対に無理だ。



そういえば…


瘴気を送られて無事だった人が、


私以外に、もうひとり――



「…リリアンヌ殿下。着きました」



「…あっ」

リリアンヌは、はっと思考を止めた。



いつの間にか馬車の扉が開き、アランフォースが手を差し出して待っていた。


キリもビッケも、とっくに降りている。



「…ごめんなさい」

リリアンヌは慌てて手を取り、馬車から降りた。



「お帰りなさい」


「お疲れ様でした」


門番たちが、門を開けてくれていた。



「ただいま帰りました」


自然と肩の力が抜けた。


やっと、帰ってきた実感が湧いてきた。



門を入ったところで、アランフォースとふたりで足を止めた。



「アランフォース。先ほどは、ありがとうございました」



「……」


何も返ってこない。



「その…必ず助けると言ってくれて、嬉しかったです」

リリアンヌは、構わずに続けた。



「ええと…それで」



「本当に、分かっているのですか」



「…え?」

きょとんと見上げた。



「精霊王の言葉の意味を。陛下が、精霊王へ伝えたことを。本当に、分かっていらっしゃるのですか」

アランフォースは、険しい表情を浮かべていた。



「…分かっています」

リリアンヌは、口をきゅっと結んだ。



「ですから、アランフォース。お願いがあります」



「…なんでしょうか」



「また、伯父上と話す時間が欲しいです」



「…陛下と?なぜでしょう」

アランフォースはさらに眉を寄せた。



「お願いしたいことが…あるから」



「……」



「それで…できればアランフォースにも、傍にいてもらえればいいなって」



「それは、もちろんです」

声が、少しだけ和らいだ。



「良かった」

リリアンヌは、ほっと息を漏らした。



「急いではいないので、伯父上のご都合がいい時にお願いしたいです」



「…恐らく、陛下はすぐにでも機会を設けるでしょう」



「いえ、すぐにはきっと無理です。伯父上は、忙しいから…」

思わず、苦笑いがこぼれた。


すでに、十分時間を使わせてしまっている。



そのまま、わずかな沈黙が流れた。



「…あの、アランフォース。明日なのですが」

リリアンヌは、そっと切り出した。



「出かけるつもりはないので、護衛は大丈夫です」



「……」



「まずは、伯父上とお話ししてから考えます」

ふっと微笑んで、姿勢を正した。



「長旅、お疲れ様でした。また、これからもよろしくお願いします」

言い切ると、屋敷の方へ振り向いた。


そのまま足を踏み出し――



「リリアンヌ殿下」


すぐに呼び止められた。



「…はい」

リリアンヌは、ゆっくりと振り返った。



「あなたは、望みを叶えるべきです」

アランフォースは、まっすぐな目を向けていた。



「…分かっています」


分かっている。



だからこそ――


確認を。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ