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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第十一章/帰ってきた少女
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祭りのまえ

リリアンヌ視点



「…ごめんなさい」


リリアンヌはブライアンに手を引かれながら、その場にいる全員へ謝った。



「キリを見つけたら、嬉しくなっちゃって、つい…」



「本当に、君は変わらないな」

ブライアンは苦笑をこぼしながら、そっと手を離した。



「…その、キリ。お帰りなさい」

リリアンヌは、嬉しそうにキリを見上げた。



「…ただいま」


ほんの少しだけ、キリの表情が和らいだ気がした。



「手っ取り早い、良い上演だった」



「!」



「勝手に名を売ってくれるとはな」


レックスが、エドガーと共に大正門の階段から下りてきた。



「…そういうつもりでは、ありませんでした」


思わず、むくれた声が出た。


町の人を、驚かせてしまったけれど。



「お前が自由に動けば、勝手に物語に真実味が出る」


レックスは顔を近づけると、リリアンヌにだけ聞こえるよう囁いた。



「もっと、名を売れ」



「…本当に、自由にしてもいいのですか?」


名を売る気はないけれど…


やりたいことは、たくさんある。



「いいって言ってんだろ」



「…では、お祭りに行ってきてもいいですか?」


父に許可は貰っているけれど、一応、国王の許可も欲しい。



「好きにしろ。アランフォースかブライアンを貸すか?」



「いっ!?い、いいえ…っ!」


慌てて、首を振った。


二人が近くにいるのに、何を言っているのだろうか。



「キリと、行ってきます」


国で一番有名な騎士や王太子と歩いたら、目立って仕方がない。



「…お前の祭りだ。楽しんでこい」


レックスはそう言うと、馬車の方へ向かっていった。


その後ろから、エドガーとアランフォースが続いた。



「…一応、私が君を屋敷まで送ってもいいかな」

ブライアンが、そっと切り出した。



「あ…一度、着替えなきゃ」


さすがに、このドレスを着たままでは祭りには行けない。



行きと同じ馬車に、ブライアンとキリと一緒に乗り込んだ。


窓の外では、大正門の上にいた人たちが慌ただしく動き回っている。


騎士たちも、下りてきたようだ。



「…ね、キリ」


リリアンヌは窓から目を離し、隣に座る人物へ顔を向けた。



「三年間、どこに行っていたの?」



「いろいろなところを巡っていた」

キリは、淡々と答えた。



「旅していたの?」



「精霊を探していた」



「!…見つけた?」



「反応はあった」



「えっ!」


どこだろう。



「…待て、リリアンヌ。それは、私が聞いてもいい話か?」

正面に座るブライアンが、さっと口を挟んだ。



「はい…ええと、駄目かな?」



「君がいいなら、いい」

キリはすぐに答えた。



「じゃあ、大丈夫です」


ブライアンは、無闇に言いふらしたりしない。


それに、とっくに信用している。



「どの辺り?私が聞いても、分かるかな?」

リリアンヌは、再びキリに顔を向けた。



「ラジャタ村の近くだ」



「…!」


ラジャタ村――


“物語”でも出てきた村の名だ。


仲間のひとりの出身地でもある。



「ここから、馬で十日ほどだな」



「ブライアン様は、行ったことがあるのですか?」



「いや、ない。だがラジャタ村は、獣人族が住んでいることで有名だ」



「そうですね。私も、習いました」


習ったのは、領の名前だけだけれど。



確かに、物語でもラジャタ村の“跡地”で精霊を見つける。


ただそれは今から五年後の話だし、もちろん村は跡地にもなっていないはずだ。


きっと、同じ場所にはいないのだろう。



「ラジャタ村か…」

ブライアンは、考えるように呟いた。



「まずは伯父上に報告して、許可が取れれば、すぐにでも出立したいです」

リリアンヌは、意気込むように言い切った。



「え…?君は、二週間前に目覚めたばかりだ」



「でも、反応があるなら、すぐにでも行きたいです」


キリが、三年もかけて探してくれた精霊の反応だ。



ナナたちのように、どこかに閉じ込められている可能性だってある。


できる限り、早く向かいたい。


体だって、もう元気だ。


許可さえ貰えれば、明日にでも。



「…この話を、私から父上にしてもいいか?」

ブライアンが、静かに尋ねた。



「はい、大丈夫です」



「分かった。必ず伝えよう。君は、まず準備することがあるだろう?」



「…準備?」



「三年前から、君の身体だって成長している」



「…あ」


そうだ。


特注で作ってもらった服や靴は、もう入らない。


というか…目覚めてから、慌てて仕立てたドレスしかない。



「…先走りすぎました」

リリアンヌは、しゅんと眉を下げた。



「すぐには、無理だな?」



「はい…」


以前、特注で仕立ててもらった時は、できあがるまで数か月かかった。


…できる限り、早めに仕立て屋を呼んでもらおう。



「…君は、精霊探しを誰と行こうと考えているんだ?」

再び、ブライアンはそっと尋ねた。



「ええと、キリと…」


…誰だろう。



「…あとは、伯父上が考えてくださっているようです」



「つまり、何も聞いていない?」



「?…はい」



「分かった」

ブライアンが、こくりと頷いた。



「…?」


行きの馬車でも、同じことがあった気がする。



話しているうちに、窓の外にエラドリオール邸が見えてきた。


馬車がゆっくり速度を落とし、門の前で止まった。



「私も、祭りについて行きたかったが…」


ブライアンが腰を浮かせ、扉を開けた。



「これ以上、民たちを驚かせるわけにはいかない」



「…ごめんなさい」


リリアンヌは、差し出された手を取りながら謝った。



「私の分も、楽しんできてくれ」



「はい、行ってきます」


ブライアンに手を振り、キリと一緒にエラドリオール邸の門をくぐった。



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