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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第九章/ザンビア砦の戦い
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激動する戦局②

アランフォース視点



「リリアンヌ殿下から、離れろ」


アランフォースは、黒い塊に向かって大剣を構えた。



黒い塊の後ろに見えるリリアンヌが、上体を起こして座り込んだ。


動けない状態は解けたようだ。



「懲りずに、また来たのか」


黒い塊が、ゆっくりと振り向いた。



「……」


先ほど見た時より、さらに黒い靄が増えている。


もう、顔もほぼ見えない。



これを、見たことがある。


これは――



「大人しく、死ね」



「!」


体が反応し、右に跳んだ。


今いた場所から、ドッと地面がせり出した。


間髪入れず、すぐに地を蹴った。



――ガガガガガガッ…



連続して、地面や壁がアランフォースを襲った。


伏せ、横に転がり、また跳び、すべてを避けた。



「生意気な…」


ヌシカは、すっと指を向けた。


アランフォースの体が、ぎしりと固まった。



「それは、効かない」


白い光が、体を包んだ。


スノウが、ちからを貸してくれている。


簡単に体が動いた。



「また、人族へちからを貸したな」


ヌシカを覆う黒い靄が、ゆらりと揺らめいた。


ゴゴゴゴ…と城塞が揺れ、さらに傾いた。



アランフォースはヌシカに向かって、一息に踏み込んだ。


大剣を振り下ろし――



「私には届かない」


ヌシカの目が、鋭く光った。



「!」


横から迫ってくるものを、咄嗟に大剣で防いだ。



――ゴッ…!



「っ…」


せり出した壁が激しくぶつかり、体が吹き飛んだ。


体勢を低くし、ギャリリッ…と足で踏みとどまった。


見張り塔の端で、ぎりぎり止まり――同時に駆け出した。



――ドン、ドンッ…!



辺りに突き出た地面が、棘のように残った。


アランフォースは棘をタンッと蹴り、さらにヌシカへ近づいた。



――ドガガガガガガッ…!



見張り塔の上を、一気に突き出た棘が襲った。


棘を足場に、駆け上がっていく。



――ドドドドッ…!



駆け登る先に、さらに棘が迫った。


屈み、跳び、避ける。


だが――



「!」


咄嗟に顔を庇った左腕が、棘に鋭く裂かれた。


その隙に、前方が棘で塞がれた。



アランフォースは迷いなく跳び、塞がれた棘を強引に駆け上がった。



「くどいな」


下から睨むヌシカが見えた。



――ブォォォォォォ……



「!」


遠くから聞こえた角笛の音に、アランフォースはぴくりと反応した。



その一瞬の隙をついて、ヌシカが目の前に迫った。



「もう、逃げる場所はないぞ」


まっすぐに、アランフォースへ手を向けた。



――ドンッ…!



その手から、直接棘が突き出た。



「…!」


咄嗟に真上へ跳んだ。



「終わりだ」


ヌシカの指先が、ゆっくりとアランフォースを捉えた。


間に合わない――



――バリバリバリィッ…!



「…あ?」


巨大な雷槍が、ヌシカの体を貫いた。


体がゆらりと、真っ二つになった。



視界の端に、ヌシカに向かって両手を伸ばすリリアンヌが見えた。



「…!」


アランフォースは棘を足場に強く踏み込み、高く跳んだ。


手にありったけの力を込め――



――ドッ…!



大剣が、真っ二つになったヌシカをさらに斬り裂いた。



「…ば、馬鹿な…!」


ゴゴゴゴ…と足元が揺れた。


地面から生えた棘が、ゆっくりと元の形へ戻っていく。



「私が、人族などに…!」


斬り裂かれたヌシカは――



「殺されて、たまるか…っ」


黒い靄となり――



「あああっ…オーリア様…っ!」


門の方へと、流れていった。



「…リリアンヌ殿下!」


アランフォースは着地すると同時に、顔を上げた。



リリアンヌは、いなくなっていた。



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