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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第九章/ザンビア砦の戦い
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混迷の戦場②

レックス視点



「陛下ぁ!精霊三匹は、どこでしょうかな!」


スワハマは状況に構わず、まっすぐレックスにだけ目を向けていた。



「デューゼの森へなど、持っていかせんぞ!」



「…あ?」


なぜ、あいつが知っている。



「お前たち、出番だぞ!」


スワハマが、ぱっと天井を見上げた。



上から、無数の矢が降り注いだ。



――カカカカカカッ…!



レックスたちへ降り注ぐ矢を、アランフォースが大剣で素早く弾いた。



「くっ…」


別の矢が、近くの国王直(フィデリス)属騎士団(グラディウス)の騎士の腕に刺さった。


腕を押さえ、後ろへ退いていく。



「ぎゃっ!」


「がっ…」


さらに多くの矢が兵たちに突き刺さり、次々と倒れていった。



「陛下、もっと下がって」


エドガーが、階段の端までレックスを押し下げた。



「あれは、聖守護騎士団(サークラグラディウス)です」


アランフォースは下がりながら、矢の飛んできた方を睨みつけた。



「あ?なんで奴らがこんなところにいる」



「分かりませんが、上から狙っています。私が行ってきますか」



「待て…アランフォース、先に門を閉めてこい」


レックスは、くいっと落とし格子を指した。



「脱出するのではなかったのですか?」

エドガーが鋭く口を挟んだ。



「上に聖守護騎士団がいるなら、別だ。兵を相手にしている場合じゃねぇ」

レックスは、即座に返した。



「今すぐ閉めてこい。エドガー、一回使え」



「…アラン、操作部屋でいいか」



「いえ。あの格子のところへ、直接送ってください」



「分かった」


エドガーが、右手を差し出した。


アランフォースがその手に触れ、姿を消した。



すぐに、遠く門の上に、ぱっと現れた。



アランフォースは鉄格子に掴まると、体重を掛け、力任せに引き下ろした。


腕が赤く光り――巨大な落とし格子が、ギギギギ…と軋みながら下りていく。



「あっ…おい!下りてくるぞ!」


「止めろ!操作部屋だ!」


気付いた兵たちが、慌ただしく操作部屋に入っていった。


それでも、落とし格子はゆっくりと下り続けた。



――ズウウウウンッ…



地響きと共に、鉄格子が地面に叩きつけられた。


門の下にいた兵たちが、その下敷きになった。



アランフォースはそのまま、すぐに操作部屋へ向かっていった。


落とし格子が再び上がるのを止めにいったのだろう。



「……」


レックスは、素早く一階を見渡した。


まだ、兵は残っている。



「…門は閉まった!残りをさっさと片付けろ!」


騎士たちに向かい、檄を飛ばした。



「…はぁ?なんだ!?」


スワハマが、ようやく後ろに振り返った。



操作部屋から出てきたアランフォースが、スワハマのもとまで一気に跳んだ。


アランフォースは手を伸ばし――



「…残念だったなぁ!」


スワハマが、すっと消えた。



「…!?」


今のは、何だ。



スワハマは、何もちからを持っていないはずだ。


それとも、転移できる者が近くにいるのか。


そのちからで、ここへ現れたのか。



だが…聖守護騎士団は?


大聖堂で、霊拝師(オランス)を人質に閉じこもっていたはずではないのか。



王都で、何かあったのか。



わずかに逡巡している間に、騎士たちがレックスの前に集まってきた。


一階で、動いている兵がいなくなった。



「…上へ行くぞ。聖守護騎士団どもを始末する」



「はっ!」


息つく間もなく、レックスたちは階段を上がっていった。



「陛下。今のちからも、恐らくヌシカのものです」


アランフォースが、後ろからレックスを追いかけた。



「ここは私たちに任せて、早く脱出してください」



「駄目だ。リリアンヌとブライアンを見つけてからだ」



「…っ…私が、行きます!」



「!」


レックスは足を止め、振り返った。



「私が、必ず助け出します!」


アランフォースが、切迫した表情を向けていた。



「……」


こいつは。


俺がここにいることで、離れられずにいるのか。



「…ヌシカは、敵なんだな?」

レックスは、静かに口を開いた。



「間違いなく、敵です」

アランフォースは、すぐに頷いた。



「……」


あまりにも現実離れした話だ。


だが――



レオの様子が変わったように見えたのも、


ザンビア兵の裏切りも、


スワハマや聖守護騎士団がここに現れた理由も。



人智を越えたものが手を貸しているなら、辻褄が合う。



「…なおさら、俺はここを離れない」


余計、逃げるわけにはいかない。



「陛下…!」



「お前は、リリアンヌを探しに行け。城塞の外壁を登っていけるだろ。俺のもとまで連れてこい」



「…っ」


アランフォースは眉を寄せ、苦しげな表情を浮かべた。



「…私は、陛下のもとを離れるわけにはいきません」



「…おい、アランフォース――」



『こちら、リョーマ。陛下、エドガー団長、アランフォース副団長に繋いでいます。そちらの声は届きません』



「…!」


三人は、届いた声にはっと耳を澄ませた。



『上へ向かった国王直属騎士団は、全員無事。六階崩壊。五階より上へ進めず。五階外壁から下り、四階の門上にて応戦中。聖守護騎士団の数は、七十ほど。ザンビア兵は、二百を超えると思われます』


リョーマの後ろからは、戦う音が聞こえている。



『なお、ブライアン殿下、リリアンヌ殿下といまだ合流できず。二手に分かれ、二人を捜索中――「死ねぇ!」…っ、上へ行くには、ここから登るしかありません…以上っ…』


最後は、慌ただしく声が切れた。



「……」


だから、上からの矢が止まったのか。



だが…ザンビア兵の数が、上に二百?


今倒した数と門の向こう側の兵の数を合わせれば、すでに四百はいる。


ここの兵だけではなかったのか…?


それに…聖守護騎士団が、七十。


全員、揃っていない。



「陛下、まずは全員で四階まで向かいましょう」


エドガーが、最初に口を開いた。



「どのみち、そこへ行くしかないようです」



「…そうだな。さっさと行くぞ」


レックスは、再び足を踏み出した。


その後ろから、国王直属騎士団の騎士たちが続いた。



今、数はどうでもいい。


問題は、そこではない。



精霊王の側近が、スワハマどもに手を貸している。


それはもう、信じるほかない。



何のために。


俺たちを――リリアンヌを、はめるためか。



人族同士で、潰し合わせるつもりか。


俺たちのしていたことは、無駄足だったのか。



精霊王――お前も、敵か。



…だが、思い通りになる気はない。


向かってくるなら、叩きのめすまでだ。



この程度で、揺らぐと思うな。



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