↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第九章/ザンビア砦の戦い
283/438

混迷の戦場①

レックス視点



「――いか…陛下!」



「…!」


体を揺さぶられ、眠りから目を覚ました。



「すぐに薬を飲んでください」


その言葉に、考えるより先に体が動いた。


ベルトの内側につけていた薬包みを、すぐ口の中に流し込んだ。


強烈な眠気が、一瞬でなくなった。



「…盛られたか」


レックスは、床から身を起こした。



「ええ。ゲイソンも盛られていたところを見るに、全員の夕食に入っていたのでしょう」


エドガーが手を差し出した。



「今すぐ、砦から抜け出しましょう」



「駄目だ。リリアンヌもブライアンもいる」


レックスは、その手を取らなかった。



「砦内の全員が敵に回った可能性があります。危険です」



「それなら、迎え討つまでだ」



「…本気ですか?」



「当たり前だ。これは、謀反だ。レオをまず見つける」


立ち上がると、すぐに扉へ視線を向けた。


開かれた扉の前で、騎士がひとり、背を向けて構えている。



「ゲイソン。様子は」



「まだ静かですが、下の階で動く気配があります」

ゲイソンは、背を向けたまま答えた。



「……」


寝込みを襲うつもりだったのか。


睡眠薬の拮抗薬があるなど、知りもしなかったのだろう。



「陛下、ウェイバーです」


ゲイソンの言葉に、すぐさま扉まで進んだ。



廊下の先の階段から、ランタンを持ったウェイバーが顔を覗かせていた。


ここに国王直(フィデリス)属騎士団(グラディウス)が大勢いるがどうする、と合図を送っている。



「移動するぞ」


レックスは、すぐに階段へ向かった。



「二階の食堂から、ここ三階へ集めました」


階段に、多くの騎士が待機していた。


五十はいそうだ。



「…それは、寝ているのか」



「ええ。この状態では、薬を飲ますこともできません」


ウェイバーの視線の先には、騎士に抱えられた霊拝師(オランス)がいた。



「どこかの部屋に入れて、二人つけさせておけ」



「はっ…ジョー、ナグ」



「はっ」


目を向けられた騎士が二人、マコを抱えて去っていった。



「…リリアンヌとブライアンは」


レックスは、素早く視線を動かした。


階段は黒一色だ。



「起きていた時のマコ殿の話から、二人が八階へ案内され、部屋で食事をしていたことが分かっています」



「ちっ…そんな離されていたか」



「隊を二つに分け、一隊を上の階へ向かわせています」



「それでいい」


リリアンヌの傍には、キリがいる。


エルフが薬を盛られてまんまと眠るとは、到底思えない。



ブライアンにも薬を持たせている。


あいつなら、自力で対処できただろう。



馬鹿にしているのか。


睡眠薬ごときで、俺たちを落とせるとでも――



――ドガガガガガガガガガッ…!



「…!?」


建物が、ゴゴゴゴゴ…と大きく揺れた。



「陛下!」



「待て…!」


レックスは、エドガーの伸ばす手を鋭く制した。


天井から、瓦礫が剥がれ落ちている。


上が、崩れたか。



「上がどうなっているか、確認に行け!」


レックスが叫ぶと同時に、騎士が二人、階段を駆け上がっていった。



「陛下…!早く脱出を」



「まだだ!」


レックスは、再びエドガーを遮った。


ここから自分だけ転移したところで、意味がない。



「陛下!上が崩壊しています!五階へは、もう上がれません!」


階段を上がっていった騎士が、上から叫んだ。



「……」


あいつらは、無事なのか。


上に向かった、国王直属騎士団は。



狙いは、何だ。



下から、騒がしい音が近づいてきた。


剣を握る兵たちが、階段から一気に駆け上がってきた。



「…!お、起きてる」


「話が違う!」


「なんでだ…!?」


階段で構えている騎士たちを見て、兵たちの足が止まった。



「…おい、どうした」


レックスは騎士の間を抜け、階段の先頭へ出た。



「俺を殺す気だったんじゃねぇのか?」


静かに剣を抜き、戸惑う兵たちを睨みつけた。



「大人しく投降して死罪になるか、斬り捨てられるか。選ばせてやろう」


狙いは分からないが――


剣を向けた者を、許してやる気はない。



「こ、殺してやる…!」


「王さえ殺せば、こっちのもんだ!」


「金のために、死んでもらう!」


兵たちは――斬り捨てられる道を選んだ。


剣を構え、一斉に突っ込んできた。



「向かってくる兵どもは、敵だ!」


レックスは抜いた剣を、まっすぐ階段下へ向けた。



「一人残らず、斬り捨てろ!」



「はっ!!」


国王直属騎士団の騎士たちが、レックスの脇を通り抜けていった。



「がぁっ…!」


「ぐあっ!」


「ぎゃああっ」


ドオオッ…と音を成して、兵たちが一気に押された。


数段しか上にいないレックスに、兵の剣はまったく届かなかった。



人数差はあるが、狭い階段で上がってくる人数は限られている。


このまま、二階まで押し切れる。



「構え!」



「!」


二階の廊下で、弓兵たちが待ち構えていた。



「陛下、私の後ろへ」


エドガーが、素早くレックスの前に進み出た。



「放て!」


何十本もの矢が、騎士たちをめがけて飛んできた。



――キキキキンッ…



エドガーが、剣一本で飛来する矢を弾き返した。


前を進む騎士たちが同じように防ぐ間に、下から駆けてくる兵の数が増えた。



「構え!」


また、弓兵が構えている。



「ちっ…」


鬱陶しい。



――ドォォォッ…!



「うぐっ!」


「ぎゃあぁっ!」


弓兵が、突然吹き飛んだ。



「後ろだ!」


「くそぉ!」


ゴォォッと爆風が巻き起こり、弓兵がさらに吹き飛ばされた。



二階の廊下から現れたアランフォースにより、弓兵の部隊があっさり壊滅した。



「このまま一階まで下りきる!門へ向かえ!」


レックスの言葉に、騎士たちがどんどん階段を押し進んだ。


兵は押し返され、上がってこられない。



「陛下!」


アランフォースが、騎士と兵の間を抜けて駆けてきた。



「ここは危険です!今すぐに脱出してください!」



「お前まで、何だ。たったこれだけの兵で、何が危険だ」



「違う!別のものが、支配している」



「…あ?」


レックスは、階段を下りる足を止めた。



「ヌシカと名乗る者が、この砦にいます」


アランフォースの顔は、真剣そのものだった。



「そいつが、この城塞を崩壊させた」



「…ヌシカ?」


精霊王の側近の名が、なぜここで出てくる。



「がぁっはっはっは…!」


不意に、下から笑い声が湧いた。



「!この声…!」


レックスは、階段を一気に駆け下りた。



一階では騎士たちが階段下で扇形に布陣し、兵たちを次々と倒していた。



入り口の門から、続々と兵が入ってきている。


門の手前では、見覚えのある男が立っていた。



「陛下、お待ちしておりましたぞぉ!」


聖職者の格好をしたその男は、兵たちの間でひどく浮いていた。



「…スワハマ!お前が、なぜここにいる!」


出立する直前まで、王都の屋敷にいたはずだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。