↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第九章/ザンビア砦の戦い
282/438

覚悟の剣戟

リリアンヌ視点



「……」


リリアンヌは、ヌシカが消えた場所を強く睨みつけた。



これで倒せたとは、思えない。


ヌシカは、“分裂のちから”を持っているはずだ。


もしかしたら、分身を作れるものなのかもしれない。


そうだとすると、本体は、一体どこに――



「リリアンヌ」



「…!」


はっと、顔を上げた。



「…今のは、白のちからか?」


ブライアンが隣で、じっと見下ろしていた。



「…説明している暇は、ありません」


もう、隠している場合じゃない。


持っているすべてのちからを、使うべきだ。



階段の下から、多くの足音が駆け上がってきている。


この大きな足音は、絶対に国王直(フィデリス)属騎士団(グラディウス)のものではない。



「……」


ブライアンは何も言わず、階段の方へ体を向けた。



「…ルル。ブライアン様を、手伝ってくれるかな」


リリアンヌは、そっと紫の精霊に囁いた。



ルルはこくんと頷くと、ブライアンのもとまで飛んでいった。


ふわりと、紫の光が溢れた。



「…これは?」


ブライアンが、はっと振り向いた。



「…それで、普段より光のちからが使えるはずです」


ルルは、体力を底上げするちからを持っている。



「…どういうことだ?なぜ、君は知っている?」



「今は、それどころではありません」


リリアンヌの目は、まっすぐ階段の方へ向いていた。


ナナが、ちらりと顔を覗いた。



「…ううん。人族の問題は、人族が解決する」


静かに、腰の剣を抜いた。



「ブライアン様。今度こそ、私も戦います」


もう、逃げない。


もう、目を逸らさない。



「いたぞ…!」


階段から、兵たちが現れた。



「かかれっ!」


先ほどとは比にならないほどの数の兵が、勢いよく駆けてくる。



――ドドドドドッ…!



ブライアンが、すぐに光の連撃を放った。



「うぅっ」


「ぐがっ」


前を駆ける者たちが、吹き飛び倒れた。



「どけっ…!俺が殺してやる」


「俺が英雄になる!」


倒れる者を踏みつけ、次々と兵たちが向かってくる。



――ドドドドドドッ…!



光の攻撃を避けた兵たちが、ブライアンに押し寄せた。



「くっ…!」


ブライアンは剣を両手で握り、迫りくる兵たちを斬っていった。



「狭すぎる!外側から回れ!」


バリンッと窓が割られ、見張り塔に兵が一気に溢れた。



「リリアンヌ…!逃げろ!」


ブライアンの叫ぶ声が、耳を通り抜けた。



「俺が殺す…!」


「殺せば、金が貰える!」


割られた窓から、兵たちが駆けてくる。



「王族を、殺しさえすればっ…」


リリアンヌをめがけて、いくつもの剣が迫った。




『いいか。襲われたら、すぐに攻撃しろ』


『ちからを使うことを、躊躇うな』




…うん。


大丈夫、ギタン。


ちゃんと、分かってる。



――タンッ…!



床を強く蹴り、一気に宙へ跳んだ。



「なっ…!?」


「はぁ!?」


兵たちは、リリアンヌを一斉に目で追った。



「はっ…?」


ブライアンが振り返り、同じように見上げた。


その前には、剣を振り上げた兵士が迫ってきている。



「…!」


リリアンヌは素早く体勢を変え、天井を蹴った。


ブライアンの前へ飛び込み、兵士に向かって剣を振り下ろした。



――ドッ…!



振り下ろした剣が――兵士の首に深々と刺さった。



「…がぁっ」


兵士の目が、大きく見開かれた。



ゆっくりと膝から崩れ落ち、倒れ込んでいく。


剣を引き抜いた瞬間、鮮血が足元に広がった。



ザァァァ…と雨の音だけが、廊下に響いた。



「…ひ、怯むな!」


止まっていた兵たちが、再び動き出した。



「…くそっ!」


ブライアンが左手を伸ばし、辺り一面に光の連撃を放った。



――ドドドドドドドドドドッ…!



一気に、兵たちが窓の外へ吹き飛んでいく。



「どんどん行け!」


「二人を殺せ!」



「…!」


リリアンヌは咄嗟に屈み、襲ってきた剣を避けた。


そのまま大きく剣を薙ぎ、軍服と軍靴の隙間を斬り裂いた。



「いってぇ!…っが!」


屈んだ兵士の肩を蹴り、窓の外へ飛び出した。



降りしきる雨の中で、


二つの光を携えるリリアンヌの体が、ゆらりと揺らめいた。



「…精霊持ちだ!油断するな」


「一気にかかれ!」


見張り塔へ、兵たちが突っ込んだ。



高く跳ね、迫る兵士の首に、剣を上から突き刺した。



「がっ…!」


倒れゆく兵士の体を強く蹴り、また跳ねた。


首を刺された兵士が、他の兵士を巻き込みながら転がっていった。



「…!」


着地した瞬間、剣が突っ込んできた。


体を素早く回転させ、その剣先を避けた。



「あが…っ!」


体を起こすと同時に、下から、兵士の顎を突き刺した。



その後ろから、槍を持った兵士が突っ込んでくる。


振り払われた槍を飛び越え、その勢いのまま剣を思いきり薙いだ。



「っ…」


兵士の首が深く裂け、その場に崩れ落ちた。



「いい加減、死ねぇっ!」


一気に三つの剣が、目の前に迫ってきた。



――ガキィィンッ…!



剣がそれぞれ宙でぶつかり、こすれ合う音が響いた。



「!」


兵たちは、すぐに顔を上に向けた。



リリアンヌは高く上へ跳び、


そのまま、誰もいない見張り塔の端に着地した。



風が舞い、激しい雨が足元を叩いた。



「…はぁっ、はぁっ、はぁ…!」


リリアンヌはびしょ濡れのまま、素早く辺りを見渡した。



目の端に、紫の光を捉えた。


ブライアンが、戦いながらこちらに近づいてきている。



「行け、行けぇ!」


「追い込め!」


「なんとしても仕留めろ!」



「はぁ、はぁっ、は…」


ごしりと目元を拭い、迫りくる兵たちに目を向けた。



とにかく、体を動かせ。



何も、考えるな。


何も、



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。