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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第九章/ザンビア砦の戦い
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動き出した闇①

リリアンヌ視点



「…大丈夫だ。君は、ここにいろ」


前に立つブライアンが振り向き、そっと口を開いた。



「怖ければ、目を瞑れ」



「…!」


リリアンヌは、ぶんぶんと首を振った。


剣の柄を握り、自分も戦うと意思表示した。



「…馬鹿を言うな。そこから、動くなよ」


ブライアンは剣を抜くと、ひとりで扉へ近づいた。



――バンッ…!



「…っ!」


いきなり扉が吹き飛び、びくっと肩が強張った。


そこから、兵たちが雪崩れ込んできた。



「おい、起きてるぞ…!」


「どうする!?」


「…このまま、仕留めろ!」


兵たちは剣を抜き、一斉にブライアンを狙った。



ブライアンは、素早く左手を突き出した。


その手から光が溢れ――



――ドドドドドッ…!



光の連撃が、兵たちの体を貫いた。



「…ぐぁっ!」


「ぎゃあっ」


「がっ…!」


兵たちは吹き飛び、そのまま倒れた。


倒れた体から、じわりと血が広がった。



「…たった、これだけか?」



「な、なん…ど、して…?」


声が震え、言葉にならなかった。



「睡眠薬を盛って、寝ているところを襲撃するつもりだったのだろう」


ブライアンは剣を手にしたまま、廊下へ顔を出した。



「僕たちを捕らえる気だったのか…いや、仕留めろと言っていたから、殺すつもりだったか」



「だ、だから、なんでっ…」



「理由はいくらでもある。僕たちは王族だからな」



「なっ…」


王族だから…狙われる?


どうして…



「とにかく、ここから移動しよう」


ブライアンは素早く剣を収めると、リリアンヌの手をさっと掴んだ。



「ま、待って…どこかに、マコが」



「マコ殿なら、食堂に向かっただろう。他の騎士が傍にいる」



「す、睡眠薬は、料理に入っていた…」


リリアンヌは、はっと顔を上げた。



「みんな、睡眠薬を盛られた…?」


私たちだけではなく――


レックスや国王直属騎士団の人たちも、眠らされてしまったのだろうか。



「まだ分からないが、皆、僕と同じ薬を常備している。察して飲んでいるはずだ」



「お、伯父上が、危ない…!」



「自分のことを、まず心配しろ」

ブライアンは、鋭く言った。



「確実なのは、君と僕が兵に狙われたということだ」



「…ま、また、兵の中に、賊が紛れ込んでいたのでしょうか」



「分からない…だがキリ殿が戻ってこないことを考えると、何か異常が起きているのかもしれない」



「…!」


そうだ。


キリがまだ、戻ってこない。



「この階には、僕たちしかいなかった。とにかく、下へ向かうべきだ」


ブライアンはリリアンヌの手を引き、入り口へ進んでいった。



「…み、みんな、おいで」


精霊たちが、すぐにリリアンヌの周りに集まった。


もう、ナナたちを隠している場合ではない。



「…あ」



「…見なくていい。目を瞑れ」



「…っ」


強く目を瞑り、手を引かれるまま足を進ませた。



床の感触が、変わった。


廊下に出たようだ。


左側から、カチャカチャ…と静かに駆ける音が聞こえる。



「…こっちだ」


ブライアンは、右側に進んでいった。



「もう開けていい」


その言葉に合わせ、すぐに目を開けた。



暗く狭い廊下を、ブライアンは慎重に進んでいく。


最上階なのに、窓がひとつもない。


遠く後ろから、「いないぞ」と言う声が微かに届いた。



廊下の先に、下に続く階段が現れた。



「…行こう」


ブライアンが、階段に足を踏み出した。


その瞬間――



――ドガガガガガガガガガッ…!



足元が、激しく揺れた。



「きゃあ…っ!」


「なっ…!?」


ブライアンの手を離し、咄嗟に耳を塞いだ。



――ゴゴゴゴゴゴ…ッ!



細かい揺れが続き、ゆっくりと床が傾いた。


今歩いてきた廊下が、徐々に坂道になった。



「あっ…!」


傾きに耐えられず、体が滑り落ちた。



「…っ!」


ブライアンはリリアンヌの腕を掴むと、強引に抱き寄せた。



「リリアンヌ、大丈夫か…!」



「なっ、何が起きているのでしょう…!」



「分からないがっ…建物が、崩れる!」



「わっ!」


さらに、建物が大きく傾いた。



「僕の肩にしがみつけ!」



「はい…!」


ブライアンが両手で手すりを掴んでいないと、滑り落ちてしまいそうだ。



――ガララッ…



天井が、崩れている。


ひと際大きな瓦礫が――ブライアンの頭上にめがけて落ちてきた。



「…ブライアン様!」


リリアンヌは、咄嗟にブライアンへ覆いかぶさった。



「なっ…危ない!」



「…っ!」


ぎゅっと目を閉じ、さらに頭を抱え込んだ。



――バチィィィッ…!



「…えっ!?」


リリアンヌは、ぱっと顔を上げた。


桃色の大きな光が、自分たちを覆っている。


この光は――



「…ポポ!」


ポポが、大きな盾を作ってくれている。



揺れがゆっくり治まり、傾きも止まった。



「…そこの階段の脇へ、降りられるか」



「あ…はい」


リリアンヌはブライアンから体を離すと、傾いた階段の側面へ降りた。


この壁を伝えば、下まで進めそうだ。



「すごいな…今のは、精霊のちからか」



「はい、そうです。…護ってくれてありがとう、ポポ」


ポポは、“堅守のちから”を持っている。


守るちからを持つからこそ、睡眠薬にもいち早く気付いたのかもしれない。



「…早く、建物から出たいな」


ブライアンが前に出て、階段の壁を進んでいった。



「…はい」


まったく、何が起きているのか分からない。


地震なのか、それとも、これも襲撃なのか。


でも今はとにかく、崩壊する可能性がある城塞から抜け出すべきだ。



一階分を下りたところで、それ以上、進めなくなった。


その先の階段が、粉々に崩れていた。



「…反対側の階段に回るか」



「そう…ですね」


反対側には…


先ほど駆けてきた兵たちが、いるはずだ。



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