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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第六章/動かす言葉
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刻銘の一声④

リリアンヌ視点



「ならば、私が傍にいよう」


ふいに、声が上がった。



「…えっ?」

リリアンヌは、ぱっと部屋の端へ顔を向けた。



「私は強い。君と二人で誰にも見つからず動くこともできる」

キリはリリアンヌに目を向けたまま、淡々と続けた。



「私がいれば、君はどこへも行ける。何も問題ない」



「…キリ殿、お待ちください」

さっと、ルイージが口を挟んだ。



「今の状況では、リリアンヌ殿下を外に出させるわけにはいきません」



「なぜだ?」



「リリアンヌ殿下は、昨日あんな目に遭ったばかりなのですよ。せめて状況が落ち着くまでは――」



「状況が落ち着くとは何だ?」



「…はぁ?」



「関係者は全員処罰したと、お前が話しただろう」



「……」

ルイージは、ぐっと口を噤んだ。



「おい…勝手なこと言ってんじゃねぇ」

サイラスが、ぎろりとキリに顔を向けた。



「お前が妹の傍にいるだと?なぜ信用すると思う」



「彼女を護ると決めたからだ」



「あぁ…?てめぇがリリィを護れるって保証が、どこにあんだよ」



「何度も言わせるな。私は、強い。お前たちの誰よりもだ」



場が、ぴきっ――と凍った。



「……」

リリアンヌは、こくりと喉を鳴らした。



この場には、国でも指折りの強さを誇る人たちがいる。


そこに――キリは、容赦なく喧嘩を売った。



「なぜ加護を持つ者を閉じ込めようとする?そんなことをするために、精霊は加護を授けたわけではない」

キリは、構わず言葉を続けた。



「彼女の意思を妨げるな。護りたければ、お前たちが強くなって彼女の傍にいればいいだけだ」



「…随分と簡単に言ってくれるな」


国王の目が、すっと細められた。



「勘違いするな、人族」


キリの目に――わずかに、怒りが灯った。



「精霊の加護は国のものではない。加護の持ち主のものだ。お前たちの、誰も彼女を止める権利はない」



「……」


会議室に、重い沈黙が流れた。



「……」

リリアンヌは息をひそめるように、そっと腰を下ろした。




「リリアンヌ」



「はい…!」


びくりと姿勢を正した。



「お前のやりたいことは、何だ」

レックスは静かに尋ねた。



「…お、オーリア様に、協力したいです」

リリアンヌは、ゆっくりと答えた。



「そのために地下で精霊を見つけて、デューゼの森までお返しに行きたい」



「…異形の存在(ゼノプーパ)の討伐は、嫌か」



「…いいえっ!」


即座に、強く首を振った。



「私のちからが役に立つのなら、討伐には必ず参加したいです…!」


それだけは、絶対に。



「……」

レックスが口を閉じた。




「リリアンヌ」



「えっ…はい!」


今度は、部屋の端へ顔を向けた。



「君は、私の申し出を受けるか」

キリは、じっと見つめたまま尋ねた。



「君が望まないなら、それまでだ」



「……」


すぐにでも、快諾したい。


キリと一緒にいられるなんて。



「…私は、申し出を受けたいです」

リリアンヌは、ちらりと国王と父に視線を向けた。



だけど――どれだけ意地を張っても、自分はまだ子供だ。


決定権はまだ、自分にはない。



「…ロデオ」


ふいに、レックスが弟を呼んだ。



「なんだ」



「お前は、娘の希望をどう思う」



「…私に意見を求めるのか?」



「お前の娘のことだろう」



「……」

ロデオは訝しげな目をレックスから離すと、ゆっくりと立ち上がった。



「…キリ殿」



「……」


キリは何も言わず、ロデオに顔を向けた。



「…お前は、絶対に娘を裏切らないと誓うか?」



「絶対に裏切らない」



「なぜ、言い切れる」



「エルフは嘘をつかない」



「父上…!まさか、こいつを信用する気じゃないでしょうね?」

サイラスが、噛みつくように割って入った。



「まさか、本当に嘘をつかないとでも思っているのですか!?」



「黙れ、サイラス」

ロデオはぎろりと息子を睨むと、再び顔を上げた。



「…キリ殿、そうではない。貴殿の言葉で聞きたい」



「どういう意味だ?」



「娘を見定めていたと言ったな。貴殿にとって、リリアンヌは信用に足る人物だったのか?だから護ろうとしてくれるのか?」



「そうだ。数日見ていただけでも分かる。彼女は、必ず人のために動いている」

キリは、即座に頷いた。



「彼女は、加護を持つ者としてふさわしい。精霊が味方するなら、私も絶対に彼女を裏切らない」



「…っ…」


涙が、一瞬で溢れた。



加護を持つ者としてふさわしいと――


初めて言ってもらえた。



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