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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第六章/動かす言葉
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巡り始める思考①

リリアンヌ視点



「――だめっ…!」


はっと目が覚め、飛び起きた。



「…はぁ、はぁっ…」


息苦しい。


額から、汗が滴り落ちている。



「…?」


リリアンヌは汗を拭うと、きょろりと辺りを見渡した。



ここは、どこだろう。


寝間着も知らないものだ。



豪華なベッドに、広い室内。


エラドリオール邸ではない。



無事に助かった…はずだ。


父の顔を見て、安心して眠ったことは覚えている。



「失礼します」



「!」


コンコン、とノックが鳴らされた。



「おはようございます、リリアンヌ殿下」



「あっ…バルバラ」


入って来た人物を見て、そっと安堵の溜息を漏らした。



バルバラは静かに部屋を横切ると、順にカーテンを開けていった。



「今日は、とても良い天気ですよ」



「…ここは、王城だったのね」


陽の眩しさに、思わず目を細めた。



「ええ…昨夜、ロデオ大公殿下がこちらまでお運びになりました」



「…お父様が」



「お着替えはすべて私がいたしましたので、ご安心ください」



「……」


ということは、あのぼろぼろの姿も見られたのだろう。



「失礼します」


扉から、さらに二人の女性が入ってきた。


他の使用人たちと、服装が少し違う。



「リリアンヌ殿下。これから王城にいらした時は、彼女たちが身の回りの世話をさせていただきます」



「…え?」

リリアンヌは、ぼんやりとした目をバルバラへ向けた。



「余計なお世話かと思いましたが…やはり、侍女は必要かと存じます。私が適当な者を見繕いました」



「ごめんなさい…」


私が、意地を張って侍女を連れてこなかったから。


結局、手間を増やしてしまった。



「……」

バルバラは口を噤み、じっとリリアンヌを見つめた。



「…あの」



「殿下が謝られるようなことは、何もありませんよ」



「…はい。ありがとう、バルバラ」



「後のことは、侍女たちに任せております。どうぞ、何でも気兼ねなくお申し付けくださいませ」


バルバラは丁寧に一礼すると、部屋から出ていった。



「リリアンヌ殿下」


すぐに、二人の侍女がベッドの脇に並んだ。



「本日から身の回りの手伝いをさせていただく、フローラと申します」



「レマンと申します。どうぞよろしくお願いいたします」



「フローラ、レマン。よろしくお願いします」

リリアンヌは、その場で小さくお辞儀した。



「リリアンヌ殿下、起きられますか?それとも、もう少し休まれますか?」



「いいえ、起きます。…ありがとう」


レマンの手を借り、ベッドからゆっくりと下りた。



「…!」

リリアンヌは、はっと足元に視線を向けた。



右足が、すっかり治っている。


傷跡すら残っていない。



「こちらの客間には、簡易的なものですが浴室があります。まずは入浴されますか?」



「…!使ってもいいの?」



「ええ、もちろんです」

フローラがすぐに頷いた。



「スノウ、おいで」



「ホ~」


枕元にいたスノウが、肩まで飛んできた。



「精霊様も入られるのですか?」



「入るというか…ええと、浴室に入れても大丈夫かな?」



「それは、もちろんです…」


レマンは目を瞬かせながらも、「こちらへ」と先に立った。



扉の先には、十分な広さの脱衣場があった。


侍女たちは支度を終えると、脱衣場で足を止めた。


リリアンヌはひとり浴室へ入り、湯の張る浴槽に深く沈み込んだ。



「…はぁ」


温かくて、気持ちいい。


やっぱり、お風呂は最高だ。



「…スノウ、おいで」


浴槽から手を伸ばすと、スノウがすぐにやって来た。



「昨日は、頑張ってくれてありがとう」


昨日送れなかった分、たっぷりと白のちからを送った。



「ホ~!」

スノウは嬉しそうに鳴くと、ぱたぱたと浴室を飛び回った。



「……」

リリアンヌは頬杖をつき、ぼうっとスノウを目で追った。



昨日、一気にいろいろなことが起こった。



突然攫われて、


夢の中で精霊王と話して、


そして――キリと出会った。



風の里エルフ族、キリ――


“物語”の仲間のひとり。



“デューゼの森の悪夢”により、


風の里は異形の存在(ゼノプーパ)に襲われ、ほとんどのエルフが亡くなってしまう。


生き残った数人のエルフを連れて、“キリ”は王都へ来ていた。



だけど、まだデューゼの森の悪夢は起こっていない。


もちろん風の里も滅んでいないはずだ。


どうして、物語よりずっと早く王都へやって来たのだろう。



キリはもう、王城へ来ているのだろうか。


父たちと、すでに昨日の出来事について話しているのだろうか。



自分が攫われたことは、どこまで知られているのだろう。


支度が終わったら、まず父と話をするのだろうか。


国王にも…報告をしなければいけないのだろうか。



チャンは…どうなったのだろう。


死んでしまった、あの御者は――



「…っ」


ぎゅっと目を閉じ、強く頭を振った。



「リリアンヌ殿下、何かお手伝いしますか?」



「…!大丈夫、もう出るから…っ」


顔を覗かせた侍女に慌てて答え、浴槽から立ち上がった。



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