姿を現した者たち②
スワハマ視点
スワハマは玉座の間から出ると、
脇目も振らず、廊下を足早に進んでいった。
早く、馬車の中へ。
とにかく、誰かと会う前に――
王城の入り口まで戻ってくると、飛び込むように馬車へ乗り込んだ。
「…ご主人様、お疲れ様でした」
後から乗り込んできた従者が、すぐに扉を閉めた。
「くっ…」
スワハマは下を向き、苦しそうに体を震わせた。
「くくくっ――がはははっ…!」
耐えていた笑いが、一気に溢れた。
「ご主人様…見張られているのですよ」
「構わん…儂は、ただ笑っているだけだ」
王の駒が、馬車の中の会話まで聞いているかは知らぬが。
余計な話はしていない。
「ふははっ…!はあ…笑いが止まらん」
先ほどまで、笑いを堪えるのに必死だった。
死人が出たと聞いた後に笑っているのは、さすがに不謹慎だろう。
チャンの馬鹿が――とうとう、しでかした。
ルイージの奴…
この儂に、ちからを使ったな。
あいつのちからのことなど、とっくに知っている。
だが、おかげで真っ白になることができた。
奴らはまさか、ちからに抗う方法があるなど知りもしないだろう。
先代王が、肝心なことを何も息子に伝えず死んだおかげだ。
儂は、推薦状を書いただけだ。
罰はせいぜい謹慎くらいだろう。
痛くも痒くもない。
あの様子だと、ただ守衛隊兵が死んだだけではあるまい。
チャンが、本当にリリアンヌを攫ったのだろう。
とんでもない阿呆だ。
救いようのない大馬鹿者だが、おかげでいいものが見られた。
あの、レックスのしかめ顔――
儂が首謀者だと、信じて疑っていなかったのだろう。
正解だ。
だが、まだまだ甘い。
ちからを過信して、こちらを深く探ろうともしない。
それでは、このスワハマに勝つことはできまい。
「ぐくくっ…」
笑いが止まらない。
チャンの馬鹿のおかげで、レックスを動揺させることができた。
これでリリアンヌが傷物にでもなれば、さらに大騒ぎになる。
レックスとロデオがより仲違いすれば、なおいい。
まとめて王座から引きずり落としてやる。
ブライアンが王になれば、儂が再び宰相だ。
ルイージの小物に、その役は務まらない。
リリアンヌの加護のちからがあれば、タッセントなど簡単に潰せるだろうに。
なぜ、レックスもルイージもそのことに気付かない。
まあ…これくらいでは、まだ足りない。
せいぜい、王座を揺らしただけだ。
次の手は――
武力か。
いや…国王直属騎士団がいる限り、
どれだけ兵を掻き集めても武力行使では勝てまい。
焦るな。
焦れば、襤褸が出る。
必ず、揺らした王座を倒す方法はある。
これは――反撃の狼煙だ。
「くくっ…がははははっ…!」
スワハマの笑いは、いつまでも馬車の中に響き続けた。




