表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第五章/見えない繋がり
203/222

姿を現した者たち①

レックス視点



「これは、陛下。急な呼び出しで驚きましたぞ。一体、どうされたというのです」


スワハマは、なぜ呼ばれたのか分からない、という顔で辺りを見渡した。



「安心しろ。この場には、俺とルイージとエドガーしかいない」

レックスは足を組み、玉座からスワハマを睨み下ろした。



「それで、何だというのです」



「今朝方、守衛隊兵の死体がいくつも見つかった。殺しだ」



「!?それは一大事ではないか!」

スワハマは、大仰に体を揺らした。



「それならば、早く会議を――」



「そんなことする必要はない。もう、犯人は分かっている」

レックスは鋭く遮った。



「はぁ…捕らえているのなら、結構ですが。一体、どこのどいつで?」



「お前が推薦して入隊した奴らだ」



「…!」

スワハマは、はっと目を見開いた。



「儂が推薦したものだと…?そんな、まさか…」



「何か、心当たりがあるのか」



「…いえ!いいえ!一年前、ある者に守衛隊への推薦状を頼まれましてな…いや、そればかりは」



「ちっ…」


時間の無駄だ。



「ルイージ、やれ」



「…御意に」



「ルイージ宰相、い、一体、儂に何をするつもりだ?」



「安心してください。…痛いことなど、何もありません」

ルイージはゆっくり近づくと、そっとスワハマの背中に触れた。



「“大教主スワハマ・フラディン。何の意図があり、守衛隊兵を入隊させた?”」


ルイージの手先が――琥珀色に光った。



「チャン・ムムシカに頼まれて推薦状を書いただけだ…!儂には、何の意図もない!」

間髪入れず、スワハマが口を開いた。



「…!」

レックスは、ぴくりと眉を動かした。



「あいつは、知人の働き口を見つけてやりたいから推薦状を書いてくれないかと儂に頼んだ。必死だったから、協力することにした」



「……」


チャン・ムムシカ。


リリアンヌに異様に執着していた、変態文官――



あいつか。



「“その知人がどんな者かも知らずに、推薦状を書いたのか?”」

ルイージはさらに質問を重ねた。



「そんなことは、知らぬ。儂に推薦を求める者は、これまでにも多くいた。困っている者を助けてやるのが聖職者の仕事だろう!?」



「“本当に、チャンの企みについて何も知らなかったのだな?”」



「何も知らない!本当だ…陛下!」

スワハマは、ぱっと顔を上げた。



「もしチャンが何か関わっているなら、気付かなかった儂も悪い。犯人は捕らえたのか?チャンはどこだ!?」



「……」

レックスは、露骨に顔をしかめた。



ルイージの“語らせのちから”を使えば、嘘をつくことなどできない。


…当てが外れたか。



「陛下、儂に何か手伝えることは――」



「結果として、お前は無闇に推薦状を書いた」

レックスは重い口を開いた。



「儂はっ…部下のためを思い」



「お前には、追って罰を与える」



「…それは、甘んじて受けましょうぞ」



「話は、終わりだ。大聖堂へ帰れ」



「…御意に」


スワハマは、その場で深々と頭を下げた。


やがて顔を上げると、足早に玉座の間の入り口へ向かっていった。



「…俺は、確かにちからを使ったぞ」


スワハマがいなくなると同時に、素早くルイージが口を開いた。



「…分かっている。それより、チャンだ」

レックスは扉を見つめたまま答えた。



「エドガー。リョーマに今の話をロデオへ伝えさせろ」



「はっ」


エドガーは、すぐさま扉の方へ向かっていった。



「ルイージ。お前は、チャンの足取りを追え。あいつの執務室を隈なく調べてこい」



「そうだな。文官塔と…スワハマが大聖堂に匿っている可能性はないか?」



「それはない」

レックスは即答した。



スワハマには、王の影(ルプスウンブラ)をつけている。


チャンと接触している報告は受けていない。



「なあ、レックス…」

ルイージはモノクルを押し上げ、険しい表情を向けた。



「チャンが首謀者なら、話は変わってくるぞ」



「……」



「…調査に、信用できる文官を何人か使う。とにかく、行ってくる」


返事を待たず、ルイージは足早に玉座の間から出ていった。



「…糞が」

レックスは、苛立たしげに呟いた。



あの変態が犯人なら、間違いなく狙いはリリアンヌ本人だ。


文官なら、王族を誘拐すればどうなるかくらい知っている。



命を懸けてまで誘拐し――“なに”かをする気だ。



「…ルプス」



「はっ」


レックスの前に、一瞬で執事の格好をした男が現れた。



「話は聞いていたな。お前たちもチャンの行方を捜せ」



「本当に…先ほどのスワハマの言葉を信じるので?」



「…あれは関わってねぇ」


嘘はついていない。


チャンが関わっていることも一気に判明した。



だが…


何か、聞き方を間違えたか。



「…殺された王の影(ルプスウンブラ)の死因が分かりました」

ルプスが、静かに口を開いた。



「背中から心臓に向かい、剣を一刺し。その刺し傷は、素人のように下手なものでした」



「素人に()られたということか?」

レックスはわずかに眉を寄せた。



「ええ。あり得ませんが、そういうことになります」



「…ちからを使われたか」



「はい。私もそう考えています」

ルプスが素早く頷いた。



「実行犯の中に、相手を拘束するようなちからを持った者がいます。騎士たちには、くれぐれも単独で動くなとお伝えください」



「…分かった」


――だが。


拘束するようなちからを持つ者を、一介の文官が飼っていただと…?



あり得ない。


スワハマの他に、首謀者がいるのか――?



「…言ったそばから、単独で動いている者がいるようですね」



「あ?」



「素晴らしい…王の影に欲しいくらいだ」


ルプスは、じっと入り口の方を見つめていた。



「陛下、我々がチャンを捜索するのは、もう少し待った方が良さそうです」



「なんでだ」



「これから来る者の話を、私も聞きたい」



「――伯父上っ!」


勢いよく扉が開かれた。



「サイラス殿下、お待ちください」



「何を待てと言うんだ!伯父上、何をのんびり座っているのです!」


サイラスとエドガーが言い合いながら、玉座の前まで進んできた。



「くそっ…離せ!」


二人の間には、引きずられ、もがく守衛隊兵がいた。



もう、王の影は目の前から姿を消していた。



「俺は何もしていないっ!」



「うるせぇ、黙れ」



「がっ…!」


サイラスは蓑虫状態に縛った兵を、玉座の階段下まで蹴とばした。



「伯父上。それは、父上に嘘の情報を伝えた守衛隊兵です」



「!」



「さっさと尋問してください」



「…エドガー。扉の前にリョーマはいるな?」



「ええ。…呼び戻すのですね」



「今すぐにルイージを呼び戻せ」



「はっ」


エドガーが再び入り口へ向かっていった。



「…伯父上。俺が、こいつを捕らえました」


サイラスはその間、まっすぐにレックスを見つめていた。



「約束を守ってくれますね」


父親譲りの凶暴な目つきは、殺意で煮えたぎっていた。



「当たり前だ。尋問が終わったら、好きにしろ」


国王の瞳は――それと正反対に、冷酷な光を帯びていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ