動揺する男たち③
レックス視点
「第二城壁の北門でも、死体が出た…」
ルイージが、騎士の報告に絶望の声を上げた。
「はい。死体は同じく、すべて守衛隊兵でした。現在ロデオ総長の指示により、国王直属騎士団が城下町を捜索しています」
報告に来た騎士は、静かに言葉を続けた。
「…それでいい。八塔勤務だった奴らの素性は、まだ分からないか」
レックスは無意識のうちに、指で机を叩いた。
「そちらは、守衛隊騎士が調べています」
「…リョーマを執務室前に置いておけ。フーリン、お前は捜索へ加われ」
「御意に」
フーリンが執務室から出ていった。
「…俺の考えが甘かった」
ルイージが、ぎりっと拳を握った。
「リリアンヌ殿下を城に出入りさせるべきではなかった。俺がエラドリオール邸へ行くべきだった」
「落ち着け、馬鹿。いまさらそんな話をしても仕方ねぇだろ」
「だが…!もしリリアンヌ殿下の身に何かあったら…っ!」
「だから総出で探してんだろうが」
レックスは苛立たしげに答えると、椅子に深く沈み込んだ。
国王直属騎士団から、空になった馬車と御者の死体を発見したと報せがあった。
その後すぐ、第二城壁の北門でも死体が上がったと追加の報告が入った。
王の影は、潜り込ませている奴らすべてを稼働させている。
だが、新たな報告はまだない。
まだ、情報が足りない。
国王直属騎士団と同等の強さを誇る、王の影を殺せる奴か。
誰の飼い犬だ。
そんな奴を雇える者など、一握りしかいない。
まだ、黒幕が見えない。
不意に――勢いよく執務室の扉が開いた。
「伯父上!妹が攫われたとは、どういうことです!」
「…ちっ」
面倒な問題児が来た。
「…捜索中だ」
「そんなことは分かっています!当たり前でしょう!」
サイラスは部屋を突っ切ると、レックスの机を強く右手で叩きつけた。
「伯父上がリリィを登城なんてさせるから、こんなことになったのです!」
「…そんなことは、リリアンヌが見つかった後にいくらでも聞いてやる」
レックスは、ぎろりとサイラスを睨みつけた。
「お前も守衛隊の端くれとして、さっさと犯人捜しを手伝いに行け」
「言われなくても、行きますとも。――伯父上にこれを報告しましたらね!」
今度は左手で、ばんっと机を叩きつけた。
その手の下には、いくつもの紙が置いてあった。
「八塔勤務だった者たちの調査簿です。こいつらを見つけたら…俺はすぐにでも粛正しますので」
「駄目だ。まずは、尋問だ」
レックスは即座に首を振った。
「その後、好きにしていい。…お前が捕まえられたらな」
「…約束ですよ」
サイラスは父親そっくりの形相で睨みつけると、さっさと扉へ向かっていった。
「…あれだから、騎士になれねぇんだよ」
実力は十分だが、一度怒りの感情が入ると冷静になれない。
妹への執着は、父親より質が悪い。
「…おい、レックス」
「あ?」
「共通項が…分かったぞ」
いつの間にかルイージが、サイラスの置いていった調査簿に目を通していた。
「…もう分かったのか」
たった数秒で見抜いたのか。
「全員…スワハマが推薦した人間だ」
ルイージが言い切ると同時に――
レックスは、素早く立ち上がった。
「玉座の間にスワハマを呼び出せ。尋問の時間だ」
「御意に」
ルイージは素早く扉へ向かった。
やっと、尻尾を捕まえた。
尋問の機会を、自ら与えた。
ルイージのちからを使えば、隠すことは不可能だ。
すべて、吐かせてやる。
レックスは、ひとり笑みを浮かべた。




