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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第五章/見えない繋がり
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動揺する男たち②

ロデオ視点



我が家の紋章が入った、空の馬車を見つけた瞬間――


絶望が体中に広がった。



御者が、殺されている。



馬は連れ去られたのか、綱だけが千切れて地面に落ちている。


先端が、御者の血で真っ赤に染まっていた。



「…いつ、見つけた」

ロデオは、絞り出すように尋ねた。



「ロデオ総長がいらっしゃる、ほんの数分前です。空の馬車と御者の死体を発見し、すぐに笛を鳴らしました」


国王直属騎士団の若騎士が、静かに答えた。



「辺りに、誰もいなかったのか」



「ええ。巡回しているはずの守衛隊兵すら、いませんでした」



「…くそっ!」


誰が、こんなことを。


リリアンヌを、どこにやった。



大事な娘を、どこの馬鹿が攫った。



八つ裂きにするだけでは、許さない。


この手で、必ず自分が――




突如――背中から、寒いほどの殺気を感じた。




「…!」


咄嗟に振り返り、剣の柄を握った。



そこには、馬車の屋根で屈み込む騎士しかいなかった。



「…アランフォース副団長」


隣で同じように構えた若騎士が、そっと剣の柄から手を離した。



「…ロデオ総長。ここにも血の跡があります」

アランフォースは屋根に視線を落としたまま、静かに口を開いた。



「なんだと…!?」


すぐに馬車へ駆け寄り、一気に登った。


屋根の上には、血痕が飛び散っていた。



「この血は、恐らくリリアンヌ殿下のものです。小さな血の足跡があります。こう…足を斬られた」

アランフォースは自分の片足を立て、手刀で腱を斬る真似をした。



「リリィの足が――斬られただと…?」


怒りで、血管が切れそうだ。



「足を斬られたことで、ここから転げ落ちた…あそこですね」


アランフォースは一切視線を上げないまま、馬車の屋根から飛び降りていった。



「ここまで、血の塊が数滴続いています。途中で血痕に気付き…ここで応急処置をした」


地面の血の跡を追いながら、まっすぐに北を指さした。



「この方角だと、向かったのは第二城壁北門でしょう。ロデオ総長、行きましょう」



「……」

ロデオは屋根の上から、じっとアランフォースを見据えた。



こいつは、優秀だ。


憎いくらい、いつでも的確な判断ができる。


今も、思いきり殴り飛ばしたいくらい冷静だ。



だが…先ほどの凶暴な殺気は、こいつのものだ。



「早く行きましょう」


無表情に見えるが、その瞳は微かに揺れている。



この男は週に一度、リリアンヌの護衛をしている。


精霊を見つけた時に傍にいたのも、こいつだ。



こいつにも――感情があったのか。



「ロデオ総長、早く」



「…待て」


おかげで、冷静になれた。



ロデオは馬車の屋根から降りると、若騎士の方へまっすぐ近づいた。



「町の三つの門を、今すぐ閉鎖しろ。鐘を三回だ」



「はっ」



「入都もさせるな。守衛隊…いや、国王直属騎士団全員で町を上から下へ扇状に捜索しろ。大きな荷を持つ者、馬を引く者がいたら、片端から荷物の確認をさせろ」


リリアンヌの拉致が確定した以上、あとは時間との勝負だ。


兄の指示を待っている暇はない。



「御意に」


若騎士は、すぐに王城の方へ駆けていった。



「…よし、行くぞ」


ロデオは、無言のアランフォースと共に北門へ足を向けた。



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