序章の序章Ⅱ(セスランディア王国物語冒頭より)
――聖セスラ暦881年
セスランディア王国の北端に位置する“デューゼの森”から、
突如、瘴気が溢れ出た。
瘴気は空へと昇り、真っ黒な雲となり、国土の北半分を覆い尽くした。
そこから異形の存在が次々に生まれ、各地を襲った。
世界最強と謳われるセスランディア王国軍が討伐に向かうも、
異形の存在は、尽きることなく増え続けた。
討伐戦はやがて防衛戦となり、デューゼの森に近い村や町から順に滅んでいった。
その大群は、とうとう国の中心――王都レイセントにまで迫り、
初代セスランディア王の時代に造られた、強固な城壁をも破った。
このままでは、セスランディアは滅びる。
誰もが敗北を悟り、抗うことを諦めた。
その時――ひとりの少女が立ち上がった。
その傍らには、絶滅したはずの精霊がいた。
最高位霊拝師、マドカだった。
精霊の加護を持つ彼女の特別なちからは絶大で、
強烈な白い光を放つと、異形の存在の大群を消し去った。
マドカの奮闘により、王都レイセントの壊滅は免れた。
こうして、後に“デューゼの森の悪夢”と呼ばれた大災害は終わりを告げた。
しかし、あまりにも多くの者が亡くなった。
王都より北側は、瘴気が色濃く残る“死の大地”となり、誰も住むことができなくなった。
さらに、ちからを使いすぎたマドカは、大きな代償を払った。
彼女に加護を授けていた精霊は消滅し、
マドカは、長い眠りにつくことになった。
七年後――
最高位霊拝師マドカの目覚めにより、この物語は始まる。
――【セスランディア王国物語】冒頭より




