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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第五章/見えない繋がり
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襲撃③

ロデオ視点



「…現場は、八塔と言ったな」


ロデオは去っていく馬車から目を離すと、兵士へ向き直った。



「ついて来い。向かいながら詳細を聞かせろ」


言いながら、馬車とは反対方向へ足を向けた。



「はっ!」

兵士は短く答えると、進み出したロデオの後ろから続いた。



「ナイジェルは現場にいるのか」



「いいえ、ナイジェル隊長はまだです。今、町の方から急ぎ向かっているはずです」



「陛下への報告は」



「発見と同時に済んでいます」



「いつ見つけた」



「三十分ほど前です。当番の交代で八塔へ入った者が、変死している兵を見つけました」



「……」


舌打ちしたくなるのを、ぐっと堪えた。



第二城壁の見張り塔で、死人が出た。


変死――殺しの可能性もあるのか。



現場の八塔は、エラドリオール邸とは対極の南西側だ。


辺りには騎士が多く住んでいるというのに、一体何をしている。


まあ…屋敷の近くで起きたわけではないだけ、まだましだが。



本当に、勘弁してくれ。


娘を巻き込まないでくれ。



八塔ならば、リリアンヌが死体を見ることもない。


すぐ箝口令も敷くから何も知ることはないだろう。


だがそれでも、今は特に刺激もしたくない。



ただでさえ、ここ最近のリリアンヌはおかしい。


昨年の精霊祭が終わった辺りからだ。



侍女からは、真剣に乗馬や護身術に取り組んでいると聞いている。


昨年、今年の誕生日には、ランタンや羅針盤が欲しいと言い出した。


ステファンから、特注の服を作ったと事後報告を受けた。


まるで、どこか遠くへ行く準備でもしているようだ。



今朝も、随分と眠そうにしていた。


夜の九時には就寝したと聞いていたはずなのにだ。



異形の存在(ゼノプーパ)の討伐用の服だなど、ふざけている。


もう、討伐に行かせる気はない。



あの子が行くくらいなら、相打ちになってでも自分が斬り倒してやる。


頼むから、もう娘をそっとしておいてくれ。



そう思っているのだが――


リリアンヌ本人が、やる気だ。



王城も大聖堂にも、最近は嬉々として向かっている。


屋敷ではまた図書室へ通うようになった。


厨房に顔を出しては、アヴェリーンのための献立まで考えている。



…難しいな。


自分にはそれが心配で仕方ないのだが、


あの子が生き生きしてくると同時に、妻まで元気になってきた。


アヴェリーンは、子供たちが元気でいることが一番嬉しいのだ。



まだ、たった十歳だ。


そこらの令嬢は、毎日家で刺繍でもし、母親と世間話に花を咲かせているというのに。



なぜ、リリアンヌだけがこうなってしまったのか。


そんなの、分かりきっている。



精霊の加護を貰ったからだ。



そんなもの…不要だ。


加護を貰って二年経つが、娘が何か得をしたことなどあっただろうか。



それなら愛玩用として、ただの鳥を飼った方が遥かにいい。


そう思って、リリアンヌにもそのまま伝えた。




『…ごめんなさい』




「……」


耐えるような顔をさせたくなくて、加護を外せないかと言った。


だが、今なら分かる。



あの涙は、自分の言葉に対してだ。


あれほど大切にしている精霊を、追い出せと言った言葉に傷ついていた。



耐えさせているのは…兄ではなく、自分の方なのか。



リリアンヌは、もしかして――


自分から、逃げようとしているのか。




「ご苦労様です!」


兵士の声に、はっと意識を戻した。



「塔の中には、陛下、エドガー団長、アランフォース副団長がいらっしゃいます」


扉の前に立つ兵士が、最敬礼を向けて言った。



「…そうか。お前も、案内ご苦労。任務に戻れ」



「はっ!」


ここまで案内してきた兵士の返事を背に受け、八塔の扉を開けた。



「!…陛下」

ロデオは、すぐに足を止めた。



「早かったな」


入ったところに、兄とエドガーが立っていた。



「…兄上、現場は」


扉を閉めながら、素早く辺りを見渡した。



「二階だ。アランフォースがいる」

レックスは、くいっと顎で階段を指した。



「…分かった」


ロデオは二人の脇を抜け、螺旋階段を上がっていった。



二階は、当番の休憩室のはずだ。


そんなところで変死など、一体何が…



休憩室の扉をくぐった瞬間――



「…は?」


思わず、絶句した。



床は、血の海だ。


守衛隊兵が、何人も死んでいる。



「…なんだ、これは」


全員、首を深く斬られている。



変死ではない。


明らかに――殺しだ。



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