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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第四章/それぞれの光
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この国の禁忌⑤

リリアンヌ視点



レックスは組んでいた足を解き、ぎしっと身を乗り出した。



「まだ、霊拝師(オランス)以外にちからを試す気にはなれないか」



「…協力を求めている方が、いらっしゃるのでしょうか」

リリアンヌは、そっと尋ねた。



「いないが、お前のそのちからがあれば、変えられることは山ほどある」



「でも…まだ――」



「もう、半年近く経った。まだ使い方が分からないとは言わせねぇ」



「兄上…!いい加減にしてくれ」

ロデオが、さっと割って入った。



「リリィは、十分協力している…!昨日も大聖堂で力を貸してきたばかりだ!」



「なあ、何が違う」

レックスは、じっとリリアンヌに目を向けた。



「加護のちからの加減が分からないと言いながら、霊拝師(オランス)には協力する。俺には、使い方が分からないから協力したくないと言う」



「……」



異形の存在(ゼノプーパ)を押さえ込んだちからの話も、ルイージにしないままだ」



「レックス…!」

ルイージが、鋭く声を飛ばした。



「咄嗟に使ったものだから、まだ何なのか分からないと伝えただろう…!」



「お前はそうやって、分からないと言えば済むと思っている」


レックスは、まだリリアンヌから目を離さなかった。



「……」

リリアンヌは、ぎゅっと口を結んだ。



「何が不安なんだ」



「…え」



「加護のちからを使いすぎることが不安なら、大聖堂でも使わなければいい」



「で、ですから」



「違うな。お前は、それだけが不安なわけじゃねぇ」



「……」


どうして…分かるのだろう。



「お前はたった一回の討伐で、加護のちからが本物であることを示した」

レックスは、返事を待たず言葉を続けた。



「…それは」


違う――


それは、加護のちからではない。



「お前は、俺に異形の存在と精霊は違うものだと証明してみせた」



「……」


それも――



「リリアンヌ。お前は、何を心配している」



「…っ」


そんなの、決まっている。



「…もう少し、待っていただけますか」


気付けば、言葉が口を衝いていた。



「あ?」



「協力は、します。ですが、少し時間をください」



「……」

レックスは人差し指を膝に当て、とん、とんと叩いた。



「……」

リリアンヌは見つめ返したまま、膝の上で拳を握った。



何を心配しているかなんて――


“デューゼの森の悪夢”が起こるかもしれないことに、決まっている。



だけど、その話は絶対にできない。


すべてを伝えたところで、一蹴されるだけだ。



あなたは死にますなんて、


少なくとも、この場にいる三人は命を落とします――だなんて。



そんな話を、誰が信じてくれると言うのか。




「…いいだろう」

レックスは、膝を叩く指を止めた。



「その代わり、違う形で協力してもらう」



「…違う形?」

リリアンヌは、小さく首を傾げた。



「来月行われる精霊祭で、また大正門の上に立て」



「えっ」



「これ以上、何をさせる気だ!」

すかさずロデオが口を挟んだ。



「これから説明するんだよ」

レックスが煩わしそうに眉を寄せた。



「大正門で、ランタンを上げろ」



「…え?」


たった、それだけ?



「それは、兄上の仕事だろう」



「精霊祭は、精霊と死者のためのものだ。俺より、こいつの方が適任だ」

レックスはロデオに答えながら、リリアンヌを指さした。



「ええと…ランタンを上げて、どうするのですか?」


ランタンが死者の魂代わりということは、聞いているけれど。



「そうだな、ランタンを上げて精霊を飛び回らせでもしたら、劇的だが」



「精霊は、道具ではありません」

むっと、言い返した。


不敬と言われようが、そこだけは譲れない。



「だから、お前を使わせろ」

レックスは気にせず続けた。



「精霊の加護を持つ者として、民の前に出て顔を売れ」



「…?それで何か意味があるのですか?」



「大有りだ。国が盛り上がる」



「そ、そんな大きな話ですか?」



「精霊祭は、他領からも大勢来る。加護を持つ者が実在することを知らしめろ」



「兄上!リリィを何だと思ってるんだ…!」

ロデオはリリアンヌを庇うように、ぐいっと身を乗り出した。



「さっきから、うるせぇな。だから、こいつを使わせろと言ってんじゃねぇか」



「大聖堂の祈りも出させるうえに、大正門にも立たせるだと?兄上並みに働かせる気か!」



「あ?祭り当日に、こいつを大聖堂に行かせる気はねぇよ」



「そうなのですか?」


思わず、聞き返した。



「スワハマに恩を売る必要はない。お前は、民にだけ目を向けろ」

レックスは、平然と答えた。



「……」


国王が何を考えているのか、分からない。


いや…ある意味、分かりやすいのかもしれない。


城内の狭い世界だけを見るなと、前も言っていた。



「まあ、難しく考えるな。当日は、俺と一緒に大正門の上だ。分かったな」



「…はい」



「用は、それだけだ」

レックスが、ゆっくりと立ち上がった。



「兄上。当日は、私もついて行くからな」



「お前はその時間、城下町だろ」



「前回も、この子はたったひとりで大正門へ立った」

ロデオは、不満そうに眉を寄せた。



「それがどれほど心細いことか、兄上には分からないだろう!」



「ちっ…親の方が、よほど子供じゃねぇか」

レックスは顔をしかめながら、ちらりとリリアンヌを見下ろした。



「当日は、アランフォースを護衛で一日貸してやる。それでいいだろ」



「…!」


不意に出た名に、ぴくりと肩が揺れた。



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