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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第四章/それぞれの光
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ひとすじの光①

リリアンヌ視点



「お嬢様ぁ~!そろそろ灯りを消しますよぉ?」



「ん…もう少し…」

リリアンヌは答えながら、カリカリとペンを走らせた。



「明日も早いのですから、夜更かしは禁物ですよ」


再び、後ろからニアの声が飛んできた。



「夜更かしって…まだ、十時だもの」



「お嬢様が眠らないと、私も休めません」



「!それは、駄目」


その言葉に、すぐに羽ペンを置いた。



「…うん、全部書けたかな」


本を持ち上げ、さっと目を通した。


今日の出来事は、思いつく限り書けたはずだ。



スノウを見つけてから、日記をつけるようになった。


こうやって残しておけば、後で何か思い出す手掛かりになるかもしれない。


ただ、毎日書くことが多すぎて、一か月でもう一冊目が終わってしまいそうだ。



「ニア、お待たせしてごめんなさい」

リリアンヌは日記帳を引き出しの中へ入れると、ベッドへ駆け込んだ。



「ランタンの灯り、頼んでいいかな」



「はい、もちろんですよ」


ふっと、灯りが消えた。



「それではお嬢様、お休みなさい」


扉が閉められ、さらに部屋の中が薄暗くなった。


枕元にいるスノウだけが、ほんのり淡く光った。



「…スノウ、お待たせ。おいで」



「ホ~」


リリアンヌはスノウを引き寄せると、白い光を浮かばせた。



日課になったことが、もうひとつ。


スノウに毎日、白のちからを送っている。


元気な状態で送ることに、意味があるかは分からない。


けれどスノウは、いつでも嬉しそうに白のちからを受け取る。



「ホ~…!」

スノウが、ばさりと羽を広げて揺らした。



「…ふふっ」

リリアンヌは寝そべり、愛おしそうに見つめた。


今のは、ありがとうの羽ばたきだ。



前より、スノウが何を考えているのか分かるようになった。


感情は特によく分かるし、何かを求めている時も察せるようになった。


だから――気が付いた。



スノウは、ずっと訴え続けている。


もっと加護のちからを使ってくれ、と。



「…だって」


だって、怖くて仕方ない。



試しに使ってみて、加減を間違えてしまったら?


それで“物語”と同じように、スノウが消えてしまったら?



そんなの…絶対に耐えられない。


もう、スノウと離れることなんて考えられない。



「『精霊の加護を授かった者は国に尽くし、有事の際は必ず参加すべし』――か」


とんでもない法律があったものだ。



まるで、精霊は国のものだと言っているようだ。


そんな法を、誰も疑問に思わなかったのだろうか。



「…可哀想」

リリアンヌは手を伸ばし、うとうとする精霊を優しく撫でた。



初代セスランディア王が亡くなってから、精霊が滅びたとされるその時まで。


四百年もの間、精霊狩りが行われ続けてきた。



ずっと人々に傷つけられて、追われて。


それでも、精霊たちは加護を授けてくれたというのに――



人間によって、消えていってしまった。



なんて残酷で、自分勝手。


精霊は、人間のためにいるわけではない。




『お前の肩にいるのは――異形の存在(あれ)と、同じだ』




「……」


あの時は、勢いのままに国王の言葉を否定したけれど…


異形の存在(ゼノプーパ)の正体が何なのかは、“物語”でははっきりと描かれていない。



三体だけ、正体の分かっている異形の存在が出てくる。


そのうちの二体が、精霊王オーリアと、側近ヌシカだ。



二年後――精霊王は、瘴気に飲み込まれて異形の存在になってしまう。


“デューゼの森の悪夢”は、そこから始まった。




デューゼの森で――今、精霊王は何を思っているのだろうか。




もう、取り返しのつかないくらい深く人間を憎んでいるのだろうか。


精霊を虐げてきた人間を――滅ぼすべきだと、思っているのだろうか。



「ホ~…」


スノウが、眠そうに一鳴きした。



「…ごめん。寝ようか」

リリアンヌはスノウから手を離し、そっと布団に潜り込んだ。



せめて…私と、スノウだけは。


ここだけでも、精霊と人間が共生できれば。



祈り、



願い――



目を閉じた。



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