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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第四章/それぞれの光
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待ち受ける洗礼③

リリアンヌ視点



向かった先は、本館にあるものより小さな会議室だった。


四角い形にテーブルが配置され、二十人ほどは座れそうだ。



一番奥までレックスが進み、どかりと腰掛けた。


その後ろに、エドガーとアランフォースが静かに立った。



スワハマは、レックスから見て右側の列に、


ルイージは、リリアンヌと並び左側の列に座った。


チャンは、スワハマの横で立ったままだ。


ウェイバーとゲイソンは、会議室に入ってこなかった。



「…それで、チャン。分かることがあるから言ったんだろうな」


重たい空気の中、レックスが口を開いた。



「ええ、もちろんです」

チャンは、真面目な顔で頷いた。



「リリアンヌ殿下の加護がどんなちからなのか、思い当たるものがございます」



「言ってみろ」



「恐らく、能力増幅のちから」



「…!」

リリアンヌは、ぴくりと反応した。



「お前の言う能力増幅のちからとは、何だ」

レックスが質問を重ねた。



特別なちからを持つ者(アニマソムニア)のちからを、限界以上に引き出すのです。ご自身だけでなく、他者も含めて」



「……」


そう…だろうか。


私もそう思ったけれど、試した時は、何も反応しなかった。



「過去に、該当した者がいたのか」



「六百年以上前の話です。“鋼の騎士ディーキン”という者が、そのちからを持っていました」


国王の質問に、チャンはすらすらと答えた。



「ディーキンは、攻撃の類のちからを持つ者に協力し、当時のタッセント国を打ち負かしたと記載がありました」



「“特別なちからを持つ者”にしか、使えないのか」



「そこまで記載はありませんでしたが、恐らくそうでしょう」



「……」

レックスは頬杖をついたまま、黙り込んだ。



「能力増幅のちからは、もう試しています」

ルイージが、静かに口を挟んだ。



「類似したちから――能力向上、体力の増幅、そういったものすべて試しましたが、該当しませんでした」



「ひとつのちからに特化した能力増幅のちから、という可能性もあります」

チャンはルイージに答えながら、真面目な顔をリリアンヌに向けた。



「リリアンヌ殿下の加護のちからは、白のちからにだけ反応するのではないでしょうか」



「…あ」


思わず、声を漏らした。



自分が咄嗟についた嘘は、本当かもしれない。



“マドカ”は、加護によって白のちからが底上げされた。


さらに、そのちからをスノウが増幅させた――



だから、異形の存在の大群を消し去ることができた。


そう考えると、しっくりくる気がする。



「…それだと、異形の存在(ゼノプーパ)のちからを封じた辻褄が合わない」

黙っていたレックスが、口を開いた。



「……」

リリアンヌは、そっと目を伏せた。



辻褄は――合う。


あの時私は、白のちからしか使っていなかったのだから。


絶対に、それを言うことはできないけれど。



「精霊の加護のちからに関しては残っている文献も少なく、明らかになっていないことも多くあります」

チャンは、淡々と言葉を続けた。



「精霊が、二つ以上のちからを持っている可能性もあります。また、別のちからなのかもしれません」



「……」


そうすると今度は、シリル先生の話と辻褄が合わなくなってしまう。


鑑定は、共有の類のちからひとつだとされたのだから。




「リリアンヌ」



「…はい」


ゆっくりと顔を上げた。



「お前は、ちからの使い方を知っていた」

レックスは、鋭い目をまっすぐにリリアンヌへ向けた。



「お前が知っていることを言え」



「…あの時は、とにかく必死でした」


用意していた言葉を、ぽつりと口にした。



「スノウ…精霊が、使い方を教えてくれたような気がしたのです」



「精霊の考えていることが分かると言ったな」



「…はい」


それを言った相手は――ルイージだったはずだ。



「それなのに、“気がした”か。はっきりと分からないのか」



「はい。分かりません」


今度は、きっぱりと答えた。


スノウからは、どんなちからか教えてもらったことはない。



「……」

レックスは、探るようにリリアンヌを見据えた。



「……」


絶対に目を逸らさない。


もう、震えたりしない。




「能力増幅か…それなら、試すか」

ふいとレックスが視線を逸らした。



「!ならば、ぜひ霊拝師(オランス)たちに――」



「先に騎士で試す。“特別なちからを持つ者”が多くいる」

レックスがすかさずスワハマの言葉を遮った。



「はあ…?今の話を聞いていなかったのですかな。リリアンヌ殿下のちからは、白のちからにしか反応しないと言っていただろう!」



「可能性の話だろう。騎士で違うようなら、次は専門職に就く者で試す」



「なんと勝手な…」

スワハマは、呆れたように首を振った。



「アイラに対してちからが反応したことは、はっきりしている!なぜそれを後回しする必要などあるのか」



「加護のちからを頼るな。霊拝師は、今までと変わらず働けばいいだろう」



「もう、こんな大々的に公表した!」


スワハマの叩くテーブルが、小さく揺れた。



「せっかくなら我が霊拝師と協力して、その名をもっと轟かせばよろしかろう!」



「あ…?名を轟かせたいのは、お前だろ」

レックスは、ぎろりと鋭い目で睨みつけた。



「ふん…騎士で試して、どうするという!戦争のひとつでもするというのなら、大賛成だが」



「スワハマ大教主、落ち着いてください。趣旨がずれている」

さっと、ルイージが間に入った。




「そんなことをしたら、精霊は消えてしまいます」


小さな声が、ぽとりと落ちた。




「……」

レックスは、ゆっくり視線を移した。



「加護のちからを使いすぎると、精霊は、消えてしまいます」


リリアンヌは、まっすぐにレックスを見返した。


その瞳は――怒りで、揺れていた。



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