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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第四章/それぞれの光
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待ち受ける洗礼①

リリアンヌ視点



なんとか――自分の番が、終わった。



壇上から下りると、今度は、入れ違いにアランフォースが町民の前に立った。


その後に続いたアイラも、式に従い流れるように冠を授与された。



二人とも、とても絵になる。


慣れた礼に、美しい所作。


慌ただしく終えた私とは、まるで正反対だ。



せめて、二人の後だったら――


けれど、それはそれで、自分の貧相さがより目立ってしまいそうだ。



拍手の鳴り止まない中、国王が退場した。


騎士や従者を伴い、大正門の階段を下りていく。


その後にアランフォースが続き、


白の軍服の騎士に挟まれたアイラも去っていった。



「我々も行きましょう」



「はい」


ルイージと並び、螺旋階段を下りた。



「このまま大広間で式の続きが行われるのですが…残念ですが、あなたは不参加です」



「はい、分かりました」

リリアンヌは、素直に頷いた。


この間のように、功労者のための祝宴がまた行われるのだろう。




「…ああ、そうだ」


階段を下りたところで、ルイージが立ち止まった。



「失礼します」


両手を伸ばし、リリアンヌの頭から斜めに掛かっている冠を外した。



後ろに控えていた従者の持つ台座に置くと、こそりと耳打ちした。


従者は小さく頷くと、馬車を通り越して足早に去っていった。



「あの冠は、褒賞金と共にエラドリオール邸へ送り届けておきます」



「ほっ、褒賞金…!?」


思わず、声が裏返った。



「ええ。功労者には、必ず送られます」



「…で、でも、私は王族です」



「関係ありません。国王以外は、全員が対象です」



「……」

リリアンヌはぎゅっと口を結び、目を伏せた。



「…なぜあなたは、いつまでも自信のない表情をしているのでしょう」

ルイージは、小さく溜息を漏らした。



「犠牲者をひとりも出さず、異形の存在(ゼノプーパ)を討伐したのですよ。

それがどれほどの偉業か、陛下の話を聞いていれば分かるでしょう」



「……」


そんなことを、言われても。


まるで、スノウの手柄を自分のものにしてしまった気分だ。



「…このままお帰りいただきたいところですが」

ルイージはモノクルの奥から、じっとリリアンヌを見つめた。



「あなたには、聞きたいことが山ほどあります。もう少し、お付き合いいただきますよ」



「…はい」


怒って…いるのだろうか。



…当たり前だろう。


加護のちからが何なのか分からないと言っていたのに、


三週間もかけて、一緒に探してもらっていたのに。



討伐で、そのちからを知っているかのように振る舞ったのだから。



「ただ…王城の正面からは入らない方が良さそうですね」


ルイージはそう言うと、馬車の前まで進んでいった。



「北館へ直接向かいましょう。…どうぞ」



「…ありがとうございます」

リリアンヌは差し出された手を取り、馬車へと乗り込んだ。



「ええと…北館へ入っても、いいのですか?」


北館は、文官が大勢いる。


文官に会うのは避けろと言っていたはずだ。



「…今日は特別です。行事のある日は、文官たちは本館の方にも出入りしていますから」



「北館の…会議室へ行くのですか?」



「いいえ、違います。北館にある、私の執務室へ来てもらいます」

ルイージは、護衛たちが乗り込むのを横目に答えた。



二人の護衛が、リリアンヌの隣と正面に腰掛けた。


それと同時に、馬車がゆっくりと動き出した。




「体調は…大丈夫なのですか」



「…え?」



「討伐中、あなたは何度も倒れかけたと聞きました。無理をしたのではないですか?」

ルイージが、険しい表情のまま尋ねた。



「…たくさん寝たので、とても元気です」

リリアンヌは、ゆっくりと答えた。



「ご心配をおかけして、ごめんなさい」


一体ルイージは、誰から聞いたのだろう。


倒れかけたと言っても、足に力が入らなくなっただけなのに。



「シリル先生の言葉を、覚えていますか?」



「えっ…はい」


どうして突然、鑑定士の名が出てくるのだろう。



「ちからは、想像よりずっと使うことができない」



「!」



「まず、ご自身のちからの限界をしっかりと把握してください。そう言われましたね?」



「…はい」


その言葉は、覚えていた。



「私も、言ったはずです。ちからは使えば使うほど体力を消耗しますから、絶対に無理だけはしないようにと」



「……」


それも、覚えている。



「倒れかけたということは、限界を超えているのです。…胸の辺りに、何か感じませんでしたか?」



「いいえ…何も感じませんでした」


正確には、必死すぎて、分からなかった。



「…また違うのか?いや、倒れかけるということは…」

ルイージは下を向くと、ぶつぶつ小さく呟いた。



「……」


その隙に、リリアンヌはちらりと護衛たちに目を向けた。



騎士たちの前で、注意されてしまった。



二人とも軽く目を伏せ、じっとしている。


初めて護衛してくれる人たちだ。


フーリンたちより、ずっと年上に見える。



討伐の時にも、この二人の姿を見かけた。


確かひとりは、ウェイバーと呼ばれていなかっただろうか。



見つめていた騎士が目を上げ――ぱちっと視線が合った。



「え」


そのまま、ウェイバーが腰を上げた。



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