褒章授与式①
リリアンヌ視点
「褒章授与式、ですか…?」
リリアンヌは、きょとんと目を瞬いた。
「ええ、そうです。申し訳ございませんが、このまま私と、大正門の方へ向かっていただけますか」
ルイージは、淡々と答えた。
「えっ、大正門?玉座の間ではないのですか?」
「授与式は、第二城壁の大正門の上で、民の見守る中で行われます」
「ええと…褒章授与式とは、功績を残した方が表彰されるものですよね?」
「ええ、その通りです」
「私は…見学をすればいいのですか?」
「何を…おっしゃっているのでしょうか」
ルイージは、きゅっと眉を寄せた。
「あなたが、一番の功労者です」
「……」
何を、言っているのだろうか。
何がなんだか、分からない。
討伐を終え、アランフォースとロックに乗ったところまでは覚えている。
その後――気付いたら、エラドリオール邸で朝を迎えていた。
アランフォースに、別れの挨拶もできなかった。
そう思っていたところで、いきなり褒章授与式の話だなんて。
「あなたが討伐へ同行すると決めた時は、どうしようかと思いましたが」
ルイージは言いながら、モノクルを押し上げた。
「とにかく…討伐、お疲れ様でした。あなたのおかげで、犠牲者も出なかったと聞いています」
「私は、何も…」
リリアンヌは困ったように眉を下げた。
「お願いですから、ここ以外でそんな発言をしないでくださいね」
「でも、討伐したのはアランフォース副団長ですし、白のちからを使ったのは、アイラ様です」
「そこに加護のちからで助力したのは、あなたでしょう」
「…助力」
「もっと、堂々となさってください。確かな功績を収められたのですから」
「あの…ルイージ宰相。私のことは、どう伝わっているのでしょうか…?」
ふと、気になっていることを口にした。
「加護を授かったことは、まだ町の人たちは知らなかったはずです」
討伐前は、精霊を隠せと言われていたのだから。
「昨日…討伐から帰ってくると同時に、あなたの存在は王都中に公表されました」
ルイージが静かに答えた。
「う…」
思わず、声が漏れた。
「精霊の加護を授かり、異形の存在を討伐し、傷つく兵士を救ったと伝えられました」
「でっ、ですから」
「お二人ももちろん、表彰されます。今回の功労者は、リリアンヌ殿下、アランフォース副団長、アイラ殿のお三方です」
「そ、その二人と、並ぶのですか…?」
「あなたはもっと、胸を張ってください」
ルイージは、呆れるように溜息をついた。
「あの異形の存在を、討伐されたのですよ。しかも、犠牲者を出さずに」
「……」
だって、すごいのはスノウだ。
それから、異形の存在の“心”を一撃で貫いたアランフォースだ。
アイラは、隠れ蓑にしてしまった。
…怒っているだろうか。
「そろそろ、お時間です。行きましょう」
ルイージがゆっくりと立ち上がった。
「大正門まで、私と馬車で向かいます」
「…あの、お父様はもう、王都にいないのでしょうか?」
「ええ。先ほど、予定通り遠征のため王都を発ちました」
「…そうですか」
朝、一緒に登城できたけれど。
またしばらく、父と会うことはできない。
「あ…服装は、このままでいいのでしょうか」
はっと気付き、尋ねた。
登城用のドレスを着てはいるけれど、着飾ってはいない。
「まったく問題ありません。むしろ、その白いドレスが式用にぴったりです」
ルイージは扉の前まで進むと、くるりと振り向いた。
「さあ、行きますよ」
「…はい」
リリアンヌは、ようやく立ち上がった。
どうして式用にぴったりなのかは、分からないけれど、
問題がないのなら、着替える必要もなさそうだ。




