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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第三章/王城の日々
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初めての討伐へ②

リリアンヌ視点



「なんだと…!?ついこの間、出たばかりだ」


ブライアンの表情が、一瞬で険しくなった。



「王領内…!?場所は!」

ルイージが、鋭く尋ねた。



「出没場所は、ダコレアの森付近!」

飛び込んできた兵士が、素早く答えた。



「ダコレアの森か…王都からは離れているが…」



「至急、会議室へご移動願います!」



「分かった…ブライアン殿下、リリアンヌ殿下」

ルイージは、さっと顔を二人に向けた。



「申し訳ありませんが、私はこれで――」



「あ…いえっ…」

兵士が、小さく首を振った。



「リリアンヌ殿下も、会議室へお越しください」



「…えっ?」



「は…?」


リリアンヌとブライアンは、同時に声を上げた。



「それは、父上の指示か?」



「…ええ、そのように伺っております」

兵士が頷いて答えた。




ブライアンの父の指示――


つまり、国王の命令だ。




「…い、行きます」

リリアンヌは、ゆっくりと立ち上がった。



「…僕も行く」



「ブライアン殿下…!あなたは、行くべきでは――」



「父上は、僕がいようがいまいが、気にもしない。それなら、行っても構わないはずです」

ブライアンは、鋭くルイージの言葉を遮った。



「…そんなことはありません」



「気休めは要りません。今この瞬間も、父は僕のことを思い出していないでしょう」



「……」



「…いずれにせよ、会議にはフォセ隊長が出席しているはずです。

それなら僕は、フォセ隊長の従騎士として参加しなくてはいけない」



「…とにかく、早く行きましょう。遅れれば遅れるだけ、目立ちます」


ルイージはそれだけ言うと、まっすぐに扉の方へ向かっていった。



「…あ、あの、ルイージ宰相」

リリアンヌは、小走りでルイージの横に並んだ。



異形の存在(ゼノプーパ)が何なのか、ですね」

ルイージが、視線も向けないまま口を開いた。



「…はい。教えてください」


聞くなら、今のうちにすべて聞いておきたい。



「簡単に言うと…異形の存在は、世界のどこかに突然現れては、多くの被害を出す天災のひとつです」



「…はい」


過去に教師から聞いたことと、同じ説明だ。



「異形の存在が何なのかは、まだ明らかになっていません。見た目は、黒い巨人とだけ言っておきましょう」



「正体は明らかになっていないのですね…?」

リリアンヌは、確認するように尋ねた。



「…先日、瘴気が発生したことにより、精霊のちからが弱まったという話を殿下へさせていただきましたね?」



「はい。瘴気も、なぜ発生するのか明らかになっていないと聞きました」



「異形の存在も、瘴気が出現した頃から現れるようになりました。黒く見えるのは、瘴気をまとっているためと言われています」



「……」


そこは、“物語”と一致している。



「分かっているのは、異形の存在が人智を越えたちからを使い、無差別に周囲を攻撃するということです」



「そう…ですね」


それも、同じだ。




「…そうですね?」



「あっ…!ごめんなさい、ただの言い間違えです」



「…異形の存在は、現れれば甚大な被害を出しますが、出現頻度は数年に一度ほどで、戦争の方が遥かに多くの被害を出してきました」


ルイージはちらりとリリアンヌへ落とした視線を、再び正面に向けた。



「ただ…それは、今までの話ですが」



「…今では、どうなのですか?」



「ここ数年は…異様です。毎年、一体以上は現れている。しかも、つい先月現れたばかりなのに…」


前を向くルイージの顔つきが、険しくなった。



「…前も、王領の近くだったのですか?」


確か父は、東の領と言っていなかったか。




「…どうせこれから行く会議で、あなたは、今話をした内容を聞くことになります」



「…え、はい」

リリアンヌは、目を瞬きながら頷いた。



「普通の令嬢は…異形の存在など、知らないのですよ」

ルイージが、気遣うような目を向けて言った。



「でも…異形の存在は、王都にも現れる可能性があるのですよね?」


それなのに、どうして隠すようなことをするのだろうか。



「王都に現れても…必ず、王国軍が討伐します」



「…お父様が、討伐に向かっているのですか?」



「いいえ、違います。陛下と、国王直(フィデリス)属騎士団(グラディウス)の騎士たちが、その役です」



「えっ…陛下…?」



「父上は、異形の存在が現れるたび、必ず自ら現場に向かわれる」


後ろから続いていたブライアンが、ルイージの言葉を継いだ。



「国王直属騎士団は、異形の存在を討伐するための部隊のようなものだ」



「えっ…!」


リリアンヌは振り返り、ブライアンのさらに奥にいる二人の騎士へ目を向けた。


フーリンとムロバンは、小さく頷いてみせた。



「……」


“弱体化”もされていない異形の存在を討伐するなんて…


“物語”では、まず倒すことは無理だった。




…物語?


違う。


今は、現実の話だ。



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