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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第三章/王城の日々
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初めての討伐へ①

リリアンヌ視点



「相手のちからを真似るようなものでもなさそうですね…」


ルイージはテーブルに広げた紙に、かりかりと素早く文字を記した。



「あとは、何が考えられるだろうか…」


ブライアンは別の紙を拾い上げ、素早く目を通した。



「ルイージ宰相。共有の類とは、必ず人を相手にして何かを分け合うのでしょうか」



「シリル先生がくれた資料の中では、そういうものしか書かれていませんね」



「共有という言葉にとらわれず、他の系統も試してみた方がいいのかもしれません」



「物と共有するようなちからも、あり得ますか」



「僕は出会ったことはありませんが、あり得ないとは言えませんから」



「……」


リリアンヌはぎゅっと口を結び、静かに二人のやり取りを聞いていた。



「…リリアンヌ、大丈夫か?疲れただろう」

ブライアンは、ぱっと隣へ顔を向けた。



「…えっ!いいえ…!私はただ、念じているだけです」



「だから、それが一番大変だ」



「…ごめんなさい」


ずっと喉に引っかかっていた言葉が、ぽつりと落ちた。



「何の謝罪だ?」



「ブライアン様に一週間も協力してもらって、何も見つけられませんでした」



「ここの資料に記してあるものは、すべて該当しないということが判明しただろう?」



「こんなに付き合っていただいたのに…」


どうしても、スノウのちからを見つけることができなかった。



「リリアンヌ殿下…一年以内に、あなたのちからが見つかればいい方だとお話したでしょう」

ルイージは苦笑しながら、資料から顔を上げた。



「ブライアン殿下の協力は本日までですが、明日からはまた、私と二人で試していきますよ」



「それに、僕も数か月に何度かは、こうして城に戻ってくる」

ブライアンが、優しく言い添えた。



「次回戻ってきた時も、手伝うと約束しよう」



「…ありがとうございます」

リリアンヌは、申し訳なさそうに眉を下げた。



「それでは休憩も兼ねて、三人で思いつく限り、可能性のあるちからを挙げていきますか」

ルイージが切り替えるように言った。



「できれば、特別なちからを持つ者(アニマソムニア)と共有するちからを優先して挙げてほしいです」

ブライアンが素早く返した。



「ええ…ブライアン殿下がいらっしゃる間に試したいですからね」



「あの…」

リリアンヌは、おずおずと口を開いた。



「能力向上に近いちからで、何か思いつくものはありますか…?」



「…ずっと、能力向上を気にされていますね」

ルイージは、静かにモノクルを押し上げた。



「何か思い当たることがあるのですか?」



「思い当たるわけではないのですが…能力向上のちからを試した時、スノウが少しだけ反応した気がしたのです」


昨晩考えていた言葉を、ゆっくりと口にした。



「だから…もしかしたら、それに近いちからの何かかなと…ごめんなさい、ただの予想です」


本当に、ただの予想に過ぎない。



能力向上のちからを試しても、スノウは特に反応していなかった。


だからそれが、近いのか、見当違いなのかも分からない。



「それを、思い当たると言うと思うのだが」

ブライアンが、ふっと苦笑を浮かべた。



「能力向上に近いちからか…体力向上や、加護のちからを上乗せするようなものはどうだ?」



「どちらも先週試してみましたが、違ったようです」



「ちからの性質を変えるようなものは、どうでしょうか」

ルイージが思案するように口を開いた。



「たとえば、ブライアン殿下のちからを、まったく別の攻撃の類のちからに変えるものはどうでしょう」



「それは…あり得るかもしれません」


私も、少し考えていたことだ。


ただ、どう念じればいいかは分からない。



「もし該当するなら、室内だと危険かもしれないな」



「え?どうしてですか?」

リリアンヌは、きょとんとブライアンに顔を向けた。



「光のちからが爆ぜる類のものに変わった場合は、この客間を吹き飛ばす可能性もありますから」

ルイージが代わりに答えた。



「お二人とも、移動しましょうか。訓練場は…きっと、騎士たちが使っているな」



「とりあえず、庭園で試してみてはどうでしょう。今日は、茶会の予定もなかったはずです」



「なるほど。あそこなら、十分試せる広さもありますね。そうしましょう」


ルイージとブライアンが、同時に腰を浮かせた。




「――失礼します」



「!」


唐突に、扉がノックされた。



「緊急事態につき、入室をお許しください」


入ってきたのは、今日の護衛のフーリンだった。



「どうした」

ブライアンがすぐに尋ねた。



「近衛隊兵が、急ぎこちらへ向かってきています。何か伝令を持ってきたようです」


フーリンは扉を押さえたまま、廊下の様子を窺っていた。



「…え?」



「伝令…ルイージ宰相にでしょうか」



「まだ分かりませんが…我々二人とも、向かう準備をしておいた方が良さそうですね」


呆然とするリリアンヌを置いて、ブライアンとルイージが素早く言葉を交わした。




「失礼します!ルイージ宰相!」


フーリンの脇から、近衛隊の兵士が扉の中へ飛び込んできた。



「王領内に、異形の存在(ゼノプーパ)が現れました…!急ぎ、三階の会議室へ!」



「…!」


異形の存在――


今、確かにそう言った。



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