表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第三章/王城の日々
123/223

大国の王太子①

リリアンヌ視点



「えっ…今日は、午後から?」

リリアンヌは、きょとんと目を瞬いた。



「ええ…先ほど、ルイージ宰相の従者の方がそうお伝えに参りました」

バルバラが、困ったように答えた。



「どうしましょうか。早いですが、先に昼食にいたしますか?」



「でも…まだ、お腹はすいていないかな」


さすがに、登城してすぐに昼食という気分ではない。



「…そうしたら、先に図書室へ行ってきてもいい?」



「もちろんです。ルイージ宰相は十二時頃にお越しになるとのことでしたので、その前には戻ってきていただけますでしょうか」



「じゃあ、十一時過ぎには戻ってきます」


リリアンヌはバルバラに答えると、扉の方へ振り返った。


すでに室内に入ってきていた護衛たちのもとへ、まっすぐに向かった。



「おはようございます、シャル、ムロバン。今日もありがとう」



「おはようございます、リリアンヌ殿下」



「…おはようございます」


シャルとムロバンが、それぞれ返した。



「今の話、聞こえていたかな?今日はルイージ宰相が午後にいらっしゃるから、先に図書室へ行こうと思うのだけれど。いいかな」



「いいも何も、俺たちのことは気にしなくていいですって」



「そうだったね…ごめんなさい、シャル」


リリアンヌはすぐに謝り、扉の前で静かに待った。



「……」



「…?」


扉が、いつまでも開かれない。


リリアンヌは首を傾げ、把手に手を伸ばすムロバンを見上げた。



「…先日は、申し訳ありませんでした」

ムロバンが眉を寄せ、小さな声で謝った。



「…?先日?」



「…大変失礼なことを、申しました」



「失礼なこと…?」

リリアンヌは、さらに首を傾げた。



「我々のことを、壁のように思ってくれと」



「ん…?それは、私が仕事中にたくさん話しかけてしまったからでしょう?」



「……」

ムロバンが、ぐっと口を噤んだ。



「ぶはっ…!」

シャルが、堪えきれず吹き出した。



「リリアンヌ殿下、こいつは、怒っているわけではないことを伝えたいんですよ」



「…へ?」



「殿下があの時から話しかけなくなったから、こいつ、気にしてたんです」



「お前っ…」



「…ずっと気にしてくれていたの?」



「…本当に申し訳ありませんでした」

ムロバンはリリアンヌに向かい、さっと頭を下げた。



「…あは…っ!こんな後になって…!」


思わず、声を出して笑った。



別に、怒られたとは思っていなかったけれど。


ただ確かに、ムロバンに言われてから、仕事中の騎士に極力話しかけないよう気を付けてはいた。


まさか、ずっと気にしてくれていたとは。


しかも、もう二週間前のことだ。



「うわ…笑っているところ、初めて見ました」



「…シャル、失礼だぞ」



「ふふっ…ごめんなさい。お行儀が悪かったね」

リリアンヌは手で口を押さえ、笑みを隠した。



「ムロバン、気にしないで。むしろ、私がおかしい時は言ってください」



「…それはできませんが」



「いいえ。二人の方が、王城についてよく知っているもの。いろいろと教えてくれると助かるな」



「…教えられるようなこともありませんが」


ムロバンは眉を寄せたまま、静かに扉を開けた。



「この時間は多くの方が廊下を行き来していますので、重々お気を付けください」



「…!」


それはきっと、使用人や巡回している近衛隊たちのことではない。



「ありがとう。気を付けます」


リリアンヌは気を引き締めて、扉から廊下へ進んでいった。




登城するようになってから、もう二週間以上が経った。


協力者が見つからないのか、毎日、ルイージと二人きりでちからを試している。


それも午前だけで、その後は図書室で本を読み、父と共に馬車で帰宅する。



ただ、それだけの日々。


驚くほど、穏やかな毎日だ。



ちからが何なのか分かったら、きっと今のようにはいかない。


国王は、容赦なく自分を使うのだろう。



スノウのちからは、本当に何なのか分からない。


こればかりは、スノウに尋ねても答えてはくれない。


というより、多分、伝える手立てがない。



可能性があるのは、特別なちからを持つ者(アニマソムニア)を手助けするためのものだろうか。


もしそうなら、これ以上、ルイージと二人で試しても見つからない気がする。



もしかしたら…スノウのちからは、白のちからにだけ反応するのだろうか。


だとしたら、たとえ協力者が来てくれても答えは見つからない。




「…あ」


いつもと違う景色が目に入り、リリアンヌは歩く足を緩めた。


普段誰もいない北館の廊下に、今は大勢の人が歩いていた。



誰もが、膝丈まである上衣を羽織っている。


あの人たちはきっと、文官だ。


玉座の間で、スワハマの後ろにも何人かあの格好をした人たちが立っていた。



ムロバンの言う通り、往来の多い時間帯なのだろう。


けれど、図書室へ続く渡り廊下へは誰も入ってはいかない。



「……」


リリアンヌは極力目立たないように通路の端を歩き、さっと渡り廊下の方へ曲がった。



「…おい、今の見たか?」


「どうして、こんなところに…」


「知らないのか?今、毎日登城しているんだぞ」


「…報告しておくか」


後ろから囁くような声は聞こえたけれど、


追ってくる者はいなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ