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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第三章/王城の日々
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加護のちから⑤

リリアンヌ視点



「どなたか公にされている方で、特別なちからを持つ者(アニマソムニア)の協力を得たいところですね…」


ルイージは、何事もなかったかのように話を戻した。



「何人かいるにはいますが…正直、あなたのちからを下手に知られたくない」



「ええと…共有の類のちからだからでしょうか?」



「それもありますが、誰に利用されるか…おっと、失礼」



「…いいえ。ちからが武器になることは、十分理解しました」


白のちからと同じだ。


ちから自体は悪くないのに、悪用しようと思えば、いくらでもできてしまう。



なんだか、悲しかった。



「口が堅く、余計なことを言わず、協力してくれそうな攻撃か強化の類の“特別なちからを持つ者”か…」

ルイージは目を伏せ、ぶつぶつと独り言を唱えた。



「そんな都合の良い奴…いるか?」




「…アランフォース副団長」


ぽつりと、言葉が落ちた。




「…確かに、該当しますが」

ルイージが、ふ…と小さく微笑んだ。



「ですが、あなたの御父上が許さないでしょうね」



「…あ」



「こちらの事情で申し訳ないのですが…騎士からも文官からも、協力を仰ぎたくない」



「そ、そうしたら…とても難しそうですね」

リリアンヌは下を向き、赤くなった顔を隠した。



「ご迷惑をおかけして、ごめんなさい」



「リリアンヌ殿下…共有の類のちからを持つ方は、過去、王族の中でも数えるほどしかいません。

それほど貴重なちからをあなたはお持ちなのです。どうか、迷惑とは思わないでください」



「でも…持っているのは、スノウです」


このちからを授けてくれたのは、スノウだ。



「…ええ。今のは、私の言い方が悪かった。精霊の加護によって授かった、大切なちからですね」



「…!」

リリアンヌは、はっと顔を上げた。



「精霊の加護のちからについて共に探れるなど、本当に光栄な話です」

ルイージは姿勢を正し、まっすぐリリアンヌに顔を向けた。



「リリアンヌ殿下。大変遅くなりましたが…加護を授かったこと、王に代わり、お祝い申し上げます」



「…え…?」


一体いきなり、どうしたというのだろうか。


しかも、王に代わり?


国王は、加護を授かったことをめでたいと思ってくれているのだろうか。




「…とある方に、叱られましてね」

ルイージは目を伏せ、静かにモノクルを押し上げた。



「玉座の間では、あなたを問いただすようなことをして申し訳ありませんでした」



「…いいえ。ルイージ宰相は、助けてくれました」

リリアンヌはゆっくり首を振った。



「…助けてはいません。こうして、毎日登城していらっしゃいますから」



「でも、スノウのちからが何なのか、私も知りたいです」



「…ええ。とりあえず今日は、二人でできるものから試しますか」

そう言うと、ルイージはゆっくりと立ち上がった。



「…?」


どこかへ移動するのだろうか。



「共有の類のちからを試すには、触れるのが一番確実です。不用意には触れませんので、ご安心ください」


首を傾げるリリアンヌの隣に、ルイージが浅く腰掛けた。



「では…さっそくですが、視覚共有から試してみましょう。

リリアンヌ殿下、私に見せたいものを心で念じてみてください」



「ルイージ宰相に、見せたいもの?」



「なんでもいいです。そうですね…あのカップはどうでしょうか」



「あ…分かりました」


なんとなく、どうすればいいかは分かった。



「念じながら、私に触れてください」



「はい」

リリアンヌは視線をカップへ向けたまま、ルイージの手にそっと触れた。



――カップを、ルイージ宰相に見せたい。



何も起きない。



「…視覚共有ではなさそうですね」


少し間を置いて、ルイージが静かに口を開いた。



「聴覚の共有…は、二人では無理ですから、次は読心のちからでも試しますか」



「相手の考えていることを、読むちからですね」



「ええ。私の考えていることを知りたいと念じながら触れてください」



「分かりました」


ルイージの手に触れ、今度は目を閉じて念じた。



何も、感じなかった。



「これも違うみたいですね。痛覚共有のちから…は、あなたに怪我をさせるわけにもいかないし…模倣のちからも協力者が必要だな…それなら、転移のちからをやってみましょう」



「!」

リリアンヌは、ぴくりと小さく反応した。


転移のちからを持つ人を、ひとり知っていた。



「これは、念じたところへ人や物を送るちからです。もしこのちからだった場合、念じ間違えれば、大変なことになります」



「そうですね。町の外に出てしまうかもしれない」



「そこまでの距離は移動できないとは思いますが…」

ルイージが、ふっと苦笑を浮かべた。



「…いや、分かりませんね。加護のちからでしたら、それも可能かもしれません」



「では、移動先はその窓の前と念じてみます」



「ええ、それが良さそうですね。お願いします」



「…触れます」


窓の前をじっと見つめながら、ルイージの手に触れた。



スノウのちからは、これではない。


違うとは思いつつも、心の中で移動したいと念じた。



何も起こらなかった。



「これも違いますね。次は何を試してみましょうか…」

ルイージは、リリアンヌが手を離すと、すぐに資料へ手を伸ばした。



「あの…ルイージ宰相」



「何でしょうか」



「私のちからは、必ずこの資料のどれかに該当するのでしょうか?」



「いいえ。ない可能性の方が高いでしょうね。継いだちからではなく、加護のちからですから」

ルイージは資料に目を落としながら、さらりと答えた。



「えっ」



「そうなったら、あとは、思いつく限りのちからを今のように試していくことになります」



「そ、それって、かなり大変なのでは…」



「まあ、一年以内に見つかればいい方でしょう」



「……」



「あまり根詰める必要はありませんよ。迫っている時間があるわけではありません」



「……」


迫っている時間は――ある。



正直に、可能性がありそうなちからを伝えた方がいいだろうか。


けれどもしかしたら、スノウが持っているちからは“物語”と違うかもしれない。


…そんなこと、きっと、ないだろうけれど。



「次は、記憶共有のちからを試してみましょう」



「…はい」


結局、ぐるぐる考えてばかりで、ルイージには何も言えなかった。



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