表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/44

序章Ⅲ(ちからの発現)④

リリアンヌ視点



「お嬢様、お待たせしましたぁ~」



「ニア、ありがとう」



「あれ、全然召し上がっていないじゃないですか」



「あ…ごめんなさい。ジャムを待っていたの」



「お嬢様も、子供らしいところがあるのですね」

ニアは「どうぞ」と言って、ジャムが載った皿をテーブルに置いた。




「ありがとう」



「お嬢様、膝に敷く白布はどうされたのです?」



「え?…なかったよ」



「あれまぁ、それは失礼しました」

ニアは、すぐに棚から新しい白布を取り出した。


「どうぞ、お嬢様」




「ありがとう。…ねぇニア、今日はお父様、帰ってくるのかな?」



「へ?今は、遠征中ではないですからね。遅くはなるでしょうが、戻られますよ」



「お父様は、毎日登城していらっしゃるの?」



「ええ、そうです。毎日馬車で城壁を越えられて、王城でお仕事をされています」



「城壁って、王城を囲む第一城壁のことだよね?」



「そうです、そうです。その第一城壁を囲む第二城壁の内側に、ここエラドリオール邸もあるのですよ」



「さらにその外側に第三城壁があって、城下町を護っているのね?」



「もう、そこまで習われていらっしゃるのですか。お嬢様のおっしゃる通りです」

ニアが感心したように頷いた。



「第二城壁の内側には、他にどんな建物があるの?」

リリアンヌは、それとなく質問を続けた。




「そうですねぇ…ここから二十分ほど歩いたところに、王城で働かれる方の屋敷がたくさんあります」



「ええと…ここは、第二城壁の北側に位置するのだっけ?」



「正確には、北東です。北側にはお偉方の屋敷が多くて、大通りを挟んだ南側には、騎士様や兵士が暮らす建物があります」



「西側には?」



「西側には大正門があって、大正門の先は城下町です。東側には第一城壁がありますが…あ、大切な建物を忘れていました」

ニアが、はたと思い出すように言った。



「南東の方角には、セスランディア大聖堂があります」




「…!」


ようやく、聞きたかった名前が出てきた。



「セスランディア大聖堂は、霊拝師(オランス)が生活するところなのでしょう?」



「う~ん…少し違いますねぇ」

ニアは首を捻りながら答えた。


「霊拝師様がいらっしゃるのは間違いありませんが、町にある聖院のような役割もあるはずです」




「聖院って、なあに?」



「お祈りして、教えを聞くところです」



「へぇ…」


すぐに、前世で見た宗教施設を思い浮かべた。




「聖院は、治療院と併設されていますからね。町の人たちにとっては、大切な拠り所です」



「…治療院?」

リリアンヌは不思議そうに首を傾げた。




「はい、治療院。町の人が、病気や怪我をした時に行く場所です」



「…?でも、病気や怪我は、霊拝師が治すのでしょう?」


つい先ほど、そうステファンから聞いたばかりだ。




「お嬢様ぁ~、霊拝師様は、国でたった数十人しかいらっしゃいません」

ニアが、おかしそうに笑って答えた。


「町の人たち全員の病気や怪我まで診て回れませんよぉ。それに、霊拝師様の施術料はとても高いですからね」



「お金を取るの…!?」

リリアンヌは、ぎょっと目を丸くした。




「もちろんです。薬だってお金がかかりますから」



「薬も、霊拝師が作っているの?」



「霊拝師様も作っていらっしゃいますねぇ。霊拝師様の作った薬が、一番よく効きます」



「そうなのね…」



「お嬢様、そう言った話は、私よりもご主人様の方が、もっと知っていらっしゃいますよ」



「…あ、うん。今度、聞いてみるね」

リリアンヌは曖昧に答えて、パンに手を伸ばした。



この国の仕組みについて、まだ知らないことだらけだ。



そもそも、霊拝師の役割が分からない。


セスランディア大聖堂で生活して、各地を巡って、病気や怪我を治すということは分かったけれど。

施術料が高いということは、治してもらえるのは一部の人だけなのだろうか。



セスランディア大聖堂…

きっと、宗教の施設のはずだ。



この間、マルコ先生がちらりと宗教の話をしていた。


この世界を創造したと言われている、精霊王オーリア。

その名は、“物語”にも出てくる。



というより――精霊王オーリアは、最後の敵だった。


“デューゼの森の悪夢”は、森にいるオーリアが瘴気に飲み込まれることで起こった。


デューゼの森は…本当にあるのだろうか。



…もっと、いろいろ知りたい。

だから、まだ白のちからを持っていることは内緒にしよう。



せめて…あと、五年。

“デューゼの森の悪夢”が起こるかもしれない日を過ぎたら、父に伝えよう。



…情報が、もっと欲しい。

そのためには、やっぱりエラドリオール邸にいるだけでは駄目だ。




――城下町に、行こう。



跳躍のちからが使えるのならば、


こっそり町へ出られる方法が、ひとつだけあるから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ