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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第三章/王城の日々
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加護のちから③

リリアンヌ視点



「失礼します」



「…はい」


シリルの両手が、リリアンヌの右手に触れた。



白のちからだと分かったら、


どうにかして、この二人を説得して――



リリアンヌとシリルの指先が、ふわりと青く光った。



「…!」


体の中が、むず痒い。


これが、ちからを送られている証――



シリルが、静かに手を離した。


青い光が、ふっと消えた。



鑑定は、あまりにもあっけなく終わってしまった。


あっという間に…隠していたちからを知られてしまった。



「……」


シリルは立ち上がると、ゆっくりとルイージの隣まで戻った。


考え込むように首を傾げ、腰を下ろすまで口を開かなかった。



「シリル先生、何が見えたのですか?」



「…ああ、失礼しました」


ルイージの呼びかけに、シリルがはっと顔を上げた。



「結論から言いますと、

リリアンヌ殿下が持っていらっしゃるちからは、共有の類のちからです」



「えっ…?」

リリアンヌは、きょとんと目を瞬いた。



「ちからを共有し、分け与えることができるものです。

私が持っている鑑定のちからと、同じ系統のものですね」

シリルがすぐに言い添えた。



「共有の類のものですか…」

ルイージが、ふむ…と小さく唸った。



「それだとやはり、試していくしかないですか」



「ええ、そうですね。しかも今回は継いだちからではないですから、過去の王族の特別なちからを持つ者(アニマソムニア)から絞ることもできません」



「あ、あの…」

リリアンヌは、おずおずと手を上げた。



「共有の類のちから、ひとつですか…?」


白のちからでも、


跳躍のちからが当てはまる強化の類でもなく――



共有の類のちから…?



「ひとつでも、共有の類のちからは大変珍しいことですよ」

シリルは、穏やかに答えた。



「あ…はい」


シリルが嘘を言っているようには、まったく思えない。


どういうことだろう…。



「シリル先生、先ほどは何を悩まれていたのです?」

ルイージが、静かに問いかけた。



「ああ、大変失礼いたしました。色の判別に、少し戸惑いまして…」



「…色の判別?」


思わず、口を挟んだ。



「それぞれの特別なちからには、必ず決まった光の色があります。

鑑定した際に見える光の色から、属するちからの系統を判別することができるのです」

シリルは、リリアンヌへ顔を向けながら答えた。



「簡単に言いますと、攻撃の類には緑や黄緑、強化の類には赤や桃色、操る類は黄色や橙、そして共有の類には、青や紫の光が現れます」



「…それではシリル先生は今、私の中に青か紫の光が見えたのですか?」



「いいえ。白でした」

シリルが、さらりと答えた。



「…!?」



「白なら、白のちからではないのですか?」


リリアンヌより先に、ルイージが口を開いた。



「いいえ。白のちからの白い光とは、別物です。白の使い手は、今まで何人も鑑定してきましたから分かります」



「なぜ共有の類のちからだと言いきれるのでしょうか?」



「リリアンヌ殿下に見えた白は、青みがかっていたからです」

シリルは言いながら、ちらりとリリアンヌの肩に視線を向けた。



「そちらの精霊様と、まったく同じ光の色です」



「…!」

リリアンヌは、はっと肩に視線を落とした。



「ホ~」

スノウがのんびりと鳴いた。



そうか――


スノウが、何かしてくれたんだ。


だから、ひとつのちからしか見えなかった。



「…確かに、スノウの光は青みがかっていますね」


撫でたい気持ちを堪えながら、シリルの方へ顔を向けた。



「共有の類のちからも何人か鑑定したことがありますが、リリアンヌ殿下と同じ色の方は今まで見たことがありません。ですから、試していくしかありません」



「…どうやって試すのでしょうか?」


国王もルイージもシリルも皆、試すという言葉を使っている。


どうやって、ちからを試して見つけ出すというのだろうか。



「ひとつずつ、念じて試していくのです。ちからは、強く念じることで使えるようになりますから」

シリルは淡々と答えた。



「…はい」


念じる――


心の中で願う、とは言わないようだ。



「…ここに、過去三百年分の特別なちからを持つ者(アニマソムニア)に関する情報があります」

シリルが言いながら、鞄の中から分厚い紙の資料を取り出した。



「その中で共有の類のちからは…ここですね」

資料から数枚を抜き取り、テーブルの上に置いた。



「…これしかないのですか?」



「残念ながら、共有の類と操る類のちからは文献に残さず、隠匿されることが多いのです」



「あ…ごめんなさい」


資料の少なさに、思わず口に出してしまった。



「それでも、ここには百近いちからが載っています。ですが、絶対に違うものもいくつか…」

シリルはペンを取り出すと、テーブルに置いた資料に横線を入れた。


どうやら、鑑定のちからではないようだ。



「あと…これと、これも違いますね…」



「リリアンヌ殿下」



「はい」


名を呼ばれ、シリルの作業から視線を上げた。



「まず、大切なことをお伝えします。

これから私と一緒に試していくことになりますが、ひとりの時には、決して試さないでください」

ルイージが、モノクルを押し上げながら言った。



「ちからの種類によっては、あなた自身に危険が及ぶものもあります。必ず、誰かと一緒の時だけにしてください」



「分かりました」


それは、跳躍のちからを初めて使った時に身を持って知っている。



「それから、ちからは使えば使うほど、体力を消耗します。絶対、無理だけはしないように」



「…はい」


それも…もう十分理解している。



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