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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第三章/王城の日々
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加護のちから②

リリアンヌ視点



リリアンヌは、ゆっくりとソファに腰掛けた。



「ありがとう」


使用人に礼を言い、淹れたての紅茶を口に運んだ。


いつもお茶会で出る紅茶より、甘くて美味しかった。



昨日は、客間ですでにルイージが待っていたのに、今日はまだ来ていない。


忙しいのだろうか。



…忙しいに決まっている。


宰相とは、国王の仕事を支える立場ではなかっただろうか。


まだ若そうだけれど、いつから宰相を務めているのだろう。



この国のことについて、まだ知らないことばかりだ。


詳しく知っているのは、精霊や異形の存在(ゼノプーパ)のこと、あとは“仲間”たちのことくらい。



そうはいっても、ブライアンとアランフォース以外、今何をしているかは分からない。


彼らと会えるとしたら、“デューゼの森の悪夢”の後だ。



デューゼの森の悪夢まで…あと、二年と少し。


そのためにもっと白のちからを鍛えたいけれど、


霊拝師(オランス)の道を選ばなかった以上、それは無理だ。



「……」

リリアンヌは、そっと目を伏せた。



ふと浮かんだギタンやシルヴィアたちのことを、振り払った。


懐かしがる権利なんてない。


迷惑しかかけなかったのだから。



白のちからを鍛えられないなら、スノウに貰ったちからを鍛えたい。


これはもう、自分のちからとして使えるのだろうか。


それとも、私が使えば、スノウの体力も消耗するのだろうか。



確かに、鑑定士に見てもらいたい。


スノウのちからが何なのか、知りたい。



“仲間”の中に、将来、国のお抱えになる鑑定士がいる。


ただ、それは今から十年後の話だ。



彼はまだ、生まれ故郷にいるのだろうか。


まだ生きている家族たちと、一緒に暮らしているのだろうか――



「申し訳ありません、お待たせしました」


ルイージが、さっと扉から入ってきた。



「…!」

リリアンヌは、急いでソファから立ち上がった。


入ってきたのは、ルイージひとりではなかった。



「あなたの御父上に捕まっておりまして…遅くなりました」


ルイージがソファまで進む間に、使用人と騎士が静かに部屋から出ていった。



「リリアンヌ殿下、こちら、鑑定士のシリル先生です」



「!」



「お初にお目にかかります、シリル・ビセットと申します。どうぞ、シリルとお呼びください」


ルイージに紹介された白髪混じりの男性が、丁寧にお辞儀した。


手に、すごく重そうな鞄を持っている。



「…リリアンヌと申します。シリル先生、本日はご足労いただき、ありがとうございます」



「お噂通りの、聡明なお嬢様で…お会いできて、大変光栄です」



「ありがとうございます。こちらこそ、鑑定士の先生にお会いできるなんて大変光栄です」


貴族流の挨拶を返しながら、必死で頭を働かせた。



確かに昨日、父が鑑定してもらうかと言っていたけれど。


でもまさか、もう見てもらうなんて。



心の準備が、できていない。



「本来は、十歳頃を目安に鑑定士の方に見てもらうという話を昨日しましたね?」


ルイージが、シリルと並んでソファに腰を下ろした。



「…はい」


二人の正面に、リリアンヌは浅く腰掛けた。



「少し早いですが、見てもらいましょう。確実に、加護のちからはお持ちですから」



「…はい」



「詳細を見ることは、できません。持っているちからの系統を調べてもらいます」



「そう…なのですね」



「本来はご家族立ち合いのもと調べるのですが、ロデオ総長に許可を貰いましたので、私が同席させていただきます」



「…分かりました」



「リリアンヌ殿下、ご安心ください」

シリルが、そっと会話に加わった。



「少し触れさせていただきますが、痛みを伴うことなどはありませんよ」



「…はい。大丈夫です」

リリアンヌは、表情を強張らせたまま頷いた。



どうしよう…


鑑定すれば、三つのちからを持っていることが分かるはずだ。


そのうちひとつが白のちからであると分かったら、もう言い逃れはできない。



判明したら、すぐにでも大聖堂へ入ることになるのだろうか。



「ではさっそくですが、鑑定させていただきますね」


シリルが立ち上がり、リリアンヌの前でゆっくりと膝をついた。



「どうぞ、楽になさってください」



「…は、はい」


駄目だ。


何も言い訳が思いつかない。



もう――逃げられない。



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