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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第三章/王城の日々
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加護のちから①

リリアンヌ視点



翌日も同じように、父は客間まで送り届けてくれた。



「今日も終わったら、図書室に行くのか?」



「はい、行きたいです。お父様を図書室でお待ちしてもいいでしょうか?」



「構わない。その代わり、他のところには行くなよ?」



「はい。お約束します」



「じゃあ、また後でな」


ロデオは娘の額にキスをすると、すぐに扉から出ていった。



「おはようございます」


リリアンヌは室内へ振り返り、すでに控えていた使用人たちへ挨拶した。



「おはようございます、リリアンヌ殿下」


「おはようございます」


使用人たちは、深々とお辞儀して返した。



「リリアンヌ殿下、おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」


一番奥にいたバルバラが、まっすぐに近づいてきた。



「あの、バルバラ…昨日は、ごめんなさい」

リリアンヌは扉の前に立ったまま、申し訳なさそうに切り出した。



「昨日のことでしょうか…?」



「すぐここへ戻ると言ったのに、読書に集中してしまって…」



「ああ…何も問題ございませんよ」

バルバラは小さく微笑むと、ソファに手のひらを向けた。



「ルイージ宰相がお越しになるまで、どうぞ、お座りになってお待ちください」



「ええ、そうします」



「――失礼します」



「!」


力強いノックの音に、リリアンヌは扉へ顔を向けた。



扉が開き、黒い軍服の騎士が二人、客間へ入ってきた。



「…あれ?」



「え?」


首を傾げたリリアンヌに、騎士も合わせて首を傾げた。



「あ…ごめんなさい。今日もてっきり、フーリンとリックが来るものだと思って」


思わず、反応してしまった。



「えっ、あいつら名乗ったんですか?」


首を傾げた騎士が、わずかに目を丸くした。



「おい、シャル…!仕事中だぞ」


もうひとりの騎士が、さっと諫めた。



「私から、二人の名前を聞いたの。お仕事中に、ごめんなさい」

リリアンヌはすぐに謝った。



「…いえ、失礼しました」



「あの…お名前を聞いてもいいですか?」



「…ムロバンと申します」


黒髪の真面目そうな騎士が、小さく一礼した。



「俺は、シャルと言います」



「シャル、ムロバン。今日は、よろしくお願いします」


二人とも、フーリンたちと同じくらい若い。


けれど同じように、体は逞しい。



「いつも、そんなふうに挨拶してるんですか?」

シャルが、じっと目を向けて尋ねた。



「いつもといっても…昨日からだから、昨日が初めてかな」



「はあ…律儀ですねぇ」



「そうかな?」


シャルは、他の三人よりもずっと気さくだ。


思わず、自分まで同じように返してしまった。



「…申し訳ございません。こいつはまだ騎士になったばかりで、人一倍礼儀がなっていないんです」

ムロバンが、きつくシャルを睨みつけた。



「何言ってんだ。お前だって同期だろ」

シャルが、むっと返した。



「二人は、いつ騎士になったの?」



「一年ほど前です」

ムロバンが、すぐにリリアンヌへ答えた。



「その前は、従騎士?」



「はい。俺ら二人とも、ロペット領の隊長のもとで修行していたんです」

シャルが頷いて答えた。



「へぇ…!それで、騎士になる時に王都へ来たの?」


ロペット領がどこにあるかは、分からないけれど。



「王都に来たというか、戻ってきました」

再びシャルが答えた。



「あ…そっか。訓練生として、学院の寮にいたのね?」


従騎士の前はそうだと、兄が言っていた。



「ええ、その通りです」



「騎士になって、すぐに国王直(フィデリス)属騎士団(グラディウス)に選ばれるなんて…二人とも、すごい」

リリアンヌは、きらきらと目を輝かせた。



「まあ…運が良かったというのもありますね」

シャルが小さく肩をすくめた。



「運が良かった?」



「ちょうど、隊に欠員が多く出て――」



「シャル…!いい加減にしろ」



「わっ」


鋭い声に、リリアンヌはびくりと肩を震わせた。



「…失礼しました」

ムロバンが、さっと頭を下げた。



「いいえ…!こちらこそ、お仕事中に邪魔してごめんなさい」



「どうか、我々のことは壁だと思ってください。気を遣っていただかなくて、結構です」



「…ごめんなさい。喋りかけないよう、気を付けます」


壁だなんて思えないけれど、申し訳ないことをしてしまった。



「二人とも、いろいろ教えてくれて、ありがとう」


リリアンヌはシャルとムロバンに礼を言うと、ソファの方へ進んだ。


使用人が、茶を淹れる準備をして待っていた。



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