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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第三章/王城の日々
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登城のはじまり③

リリアンヌ視点



「先ほど、過去に加護を授かった者の子孫の中から、同じ特別なちからを持つ者(アニマソムニア)が生まれるという話をしましたね」

ルイージは、すぐに口を開いた。



「はい」



「“特別なちからを持つ者”は、どの系統であっても大変珍しく、貴重です。

しかもその者の子孫からは、同じちからを持った者が生まれる可能性がある。

そうなるとどうなるか、分かりますか?」



「えっ…ええと…政略結婚?」


ぱっと頭に思いついた言葉を、口にした。



「少し飛躍しすぎですが、まあ、そうです」

ルイージが、苦笑しながら頷いた。



「より強いちからを求め、優秀な“特別なちからを持つ者”を一族に招き入れる。

結婚とはいかなくても、良い地位を与え、手元に置いておく。

そういうことが繰り返されてきました」



「一族とは、各国の王族のことですか?」



「いいえ、違います。国内の貴族たちの話です。もちろん、各国の王族も同様でしょうが」



「それでは…いつか“特別なちからを持つ者”は、王族や貴族の中でしか生まれなくなってしまいます」

リリアンヌは、わずかに眉を寄せた。



「ええ、その通りです。今いる“特別なちからを持つ者”のほとんどが貴族出身か、特別な職務に就く者だけです」

ルイージは、事もなげに頷いた。



「中には、何代も現れず、突然農民の家に生まれてくるなんて場合もありますから、一概に貴族だけとは言いきれませんが」



「そうですよね…霊拝師(オランス)様の中には、平民出身の方もいらっしゃると聞きました」


貴族も平民も関係なく、白の使い手はセスランディア大聖堂へ入ると家令から聞いた。


ということは、平民出身の霊拝師がいるはずだ。



「ああ…白の使い手だけは、別です」



「へっ…?」

リリアンヌは、ぱっと顔を上げた。



「白の使い手だけは、血縁に関係なくどの家からでも生まれる可能性があるのです」

ルイージは静かに付け加えた。



「…なぜ白の使い手だけ、そういうことになるのでしょうか?」



「それは明らかになっていません。ですが、白のちからが特別であることには変わりありません」



「…白のちからが、特別」


また、同じ言葉だ。



「特別なちからについては、このくらいでしょうか。リリアンヌ殿下、何か質問はありますか?」



「…質問ですか?」

リリアンヌは、ちらりとルイージへ目を向けた。



「何でも、いいのですか?」



「ええ。どうぞ」



「……」


聞きたいことはたくさんあるけれど、どこに触れてはいけないか分からない。



「答えられないことがありましたら、正直に答えられないと言いますから」



「…分かりました」

リリアンヌは、さっと姿勢を正した。


そこまで言ってくれるなら、まずは――



「特別なちからを持つ者について、国で把握していないのでしょうか?」



「?どういう意味でしょうか」



「先ほどルイージ宰相は、操る類や共有の類のちからを持つ人たちは、隠していることが多いとおっしゃいました」



「ええ、そう言いましたね」



「隠されていたら、いつ使われるか分かりません。せめて、誰がどういうちからを持っているか国は把握しなくていいのでしょうか」



「把握できないというのが、正直なところです。国民全員を調べられるほど、鑑定士の数は足りていない」

ルイージは、あっさりと返した。



「それなら、知らないうちにちからを使われてしまうこともあるのではないですか?

例えば…気付かないうちに、語らせのちからを使われていたとか」


それが、一番怖い。


知らないうちに触れられ、勝手に“物語”の内容を喋ってしまったら。



「原則、相手の許可なく人に対してちからを使用するのは禁じられています。

特に、操る類のちからを使ったことが判明した場合は重罪となります」



「…重罪?」



「攻撃の類のちからを、人に対して故意に使えば暴行罪ですが、操る類のちからを勝手に使えば、最悪死刑になります」



「しっ、死刑っ…!?」


思わず、声が裏返った。



「特に王族の方へ使えば、大逆罪、冒涜罪として即死刑ですね」

ルイージは穏やかな表情のまま、淡々と答えた。



「ですから少なくとも、あなたにちからを使うような愚か者はいないでしょう」



「…はぇ」


ほっとしたような、逆にその重さが怖いような。



「特別なちからを使うと、使用した本人と、そのちからを受けた対象の一部が光ります」

ルイージは構わず言葉を続けた。



「…必ず?どんなちからもですか?」


跳躍のちからを使う時、体のどこか光っているのだろうか。



「一部例外もありますが、人に対して使うちからは必ずと言っていいでしょう」



「それなら、操る類のちからを使われたら気付くことができるのですね」



「ええ。使われた本人が気付かなくても、周囲が必ず異変に気付きます」



「えっ…本人が気付かない場合もあるのですか?」

リリアンヌは、小さく肩を上げた。



「記憶の一部を抜き去ってしまう、“忘却のちから”なんてものもあります」

ルイージが、とんと自分の頭を指さした。



「ちからを使われて記憶を抜き取られた場合、本人は一生気付けません」



「……」


そんな恐ろしいちからまであるなんて。


そういうことを、早く教えてほしかった。



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