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風の精(スプライト)  作者: 花一匁
二章 風と仲間
30/42

風 ⅩⅩⅨ

ⅩⅩⅨ 夜闇の学院





夜、普通なら出入り禁止とされている学院校舎内で見張りとして立っている教員にクエスト書を見せる。


「じゃあ頼んだぞ。他のチームもいるがケンカするなよ」


注意を受けて中に入る。

レイヴィス学院は昼間と違い、暗闇の中だとどこかの廃墟とまではいかないが、お化け屋敷を感じさせるものがあった。

この広い校舎を一つずつ巡っていかなければならないとなると骨が折れそうだ。

そんなことを誰もが思っていると、タリアが一つ提案する。


「レイ君、ここは二手に分かれない? 幸い他のチームもいることだから捜索範囲は広い方がいいと思う」


「そうだね、何かあってもレイとヴィヴィオさんなら連絡は取れるから」


「「「え?」」」


その言葉にレイ以外の人がミオの顔を見る。名前を出されたニールでさえも驚いている。

その顔を見てミオは説明していないレイを睨む。


「何で説明してないの?」


「タイミングがなかった」


「ヴィヴィオさんには教えるべきじゃない?」


「タイミングがなかった」


「……まぁいいか」


「……よくない」


珍しくニールからのツッコミが入った。

ミオはレイを見て説明するように促す。


「ニール、保健室でのやりとりは覚えてるか?」


「……忘れられない」


「そりゃそうか」


どちらとも気にした様子がない。そのことにはさすがのミオも驚く。


「……体、壊れそうだった」


あの時のことを思い出したのか、ビクビクと震えている。


「……でも、ありがとう」


「ん。気にすることじゃない。こっちもそれなりの収穫はあった」


「?」


首を傾げるニールにそのことは説明せずに、みんなに話す。


「あの時ニールと血を分けた。そのことにより、ニールの中にはレイ・ラ・アストレスの力が、俺の中にはニールセン・ヴィヴィオの力が入ったから、離れてもお互いに連絡を取ることができる」


「あれ? それって禁忌の一つだよね」


「危険だからな。下手をすればお互いの魔力によって体をむしばみ、崩壊する恐れがある」


あの時レイは賭に出たのだ。ギリギリまでやり、ダメだったら見捨てるつもりでいた。

もし少しでも遅れていたら手遅れだった。

あれは辛かったが、でもニールに対する違和感が一つ消えた。


「じゃあ、ニールさんとレイは分けた方がいいですね」


「そうね。この二チームを中心にした方がいいわね」


「じゃあ私はレイとかな?」


「ちょ、ちょっと待ってください!」


ミオが言い出すとフィレが激しく反応する。いきなり声を大きくして全員が注目する。


「えっと、あの……ですから、ですね……」


言葉が出てこず、しどろもどろになる。

それを見ていたタリアがため息を吐きつつフォローする。


「とりあえず、フェリシモさんはこっち。前衛が纏まってるとバランスが悪いの」


ミオはその説明に納得したのか、ニールの方にいく。

それを見てフィレは人知れずホッとするが、まだ終わってない。


「ミオが行くならタリアがこっちか? 属性的な問題で」


「ううん。私はニールちゃんたちの方に入る。フィレちゃんはレイ君とね」


フィレの肩に手を置いて誰にも気づかないように囁く。


「頑張りなさい。フェリシモさんに先越されないように、ね」


「はい。ありがとうございます」


これでチーム分けは決まった。後はどこから捜すかだ。


「俺とフィレは上を捜す。タリアたちは下を頼む」


「わかった。何かあったら連絡よろしくね」


「ん。行くぞ」


レイは近くの階段からフィレを連れて上へとあがる。それを見届けて、タリアたちも下の階から捜索を開始する。



side レイ&フィレ


階段を上がっていると不意に後ろから制服を摘ままれる。

その手の先を見るとフィレがきょろきょろと周りを見ながら不安そうな顔をしていた。


「怖いなら三人の方がよかっただろ」


「こ、怖くないです」


「じゃあ、その手は?」


「こ、これは、その……そう! はぐれないためです! こんな暗いとはぐれたら大変ですから!」


「なるほど、一理あるな」


(レイが単純ではじめて助かりました)


他の人から見たらただの強がりで言い訳でしかないが、納得したレイを見てホッとした。


「ん、これなら離れない」


「レ、レイ! 何を!?」


「何かあったときでも対処しやすい」


いきなり手をつながれてフィレは焦りを隠せずにいる。

レイはそんなことに気づくことなく屋上まで来た。


「あの、レイ? さすがにここにはいない気が……」


「違う」


なぜここに来たかが気になるが、レイの真剣の表情に何も言えなくなる。

そのまま屋上に出る。やはり、屋上には何もないし、誰もいない。

周りを見ながらフィレの手を放して屋上の手すりまで行き、それを乗り越える。


「ちょっと、レイ!」


「大丈夫」


「あの……」


取り残された気がするフィレは慌てて同じように手すりを乗り越える。


「何で来た?」


「うぅ……勢いで……」


震えているフィレにため息を吐きながら下を見る。当然そこから見えはしないが、レイは胸ポケットから眠っているウィーを引っ張り出す。


『ウィー、起きろ』


『ふぁい……出番、ですか~?』


目をくしゅくしゅとこすりながら細目でレイを見る。見るからに眠そうなことに緊張感が抜けそうになる。


『ウィー、形態移行シェイプ・シフトVer.2』


『お任せを……ふぁ……』


眠そうにしながらも自分の姿を風の渦に変えて、レイの背中から翼が生える。

隣に立つフィレを抱きかかえて宙に飛ぶ。


「ひゃあぁぁっ!」


「うるさい。静かにしろ」


「……は、はいぃ……」


姿勢を整えて一番上の階で止まる。

目を瞑っているフィレに窓を見るように言う。


「良く目を凝らせ。何かいたら合図だ」


今見えるのはこのクエストを受けた生徒だけだ。全員ちゃんと制服を着用しているところを見ると別に制服で来たことに間違いはなかったようだ。


「レイ、あの人たちと話がしたいです」


先ほどまで怖がっていたフィレもスイッチを切り替えたのか、先ほどの慌てようはすでにどこにもなくなっていた。


「ん」


レイが窓に近づくとそれに気づいた生徒たちがどよめきと共に窓を開けはなった。


「何やってんだよ。幽霊に見つかるだろ」


男子生徒が声を潜めて叱りつけてくる。

それを気にした風もなく、レイは床に倒れている生徒の姿をとらえる。

フィレも気づいたようで顔をしかめ、生徒に問いかける。


「そちらは被害者ですか?」


「え? あ、ああ。ここに倒れてたのを見つけたんだ」


「外傷はありますか?」


「いや、何も。息もある。魔力の枯渇だと思う」


「わかりました。レイ、これはおそらく幽霊の仕業かと」


「ん? まあ、似たような感じだからな。可能性は高いか」


「あなた達は現場を目撃してないのですね?」


「来たときにはこうなってた。俺たちは下からあがってきたんだ」


「別の階段、でしょうか」


フィレが悩んでいるとレイが男子生徒に話しかける。


「どっちから来た?」


「奥のだよ。向こうから真っ直ぐ歩いてきたんだ」


指さす先は暗い廊下。ということはここの階段を使った可能性がもっとも高い。


「行くぞ」


「はい」


生徒たちにはそこを動かないように指示する。

そして、この階にはいないと踏んで、一つ下に降りる。

窓から中を覗こうとすると――。


パリン!


窓ガラスを突き破って何かがレイとフィレに向かって撃たれた。



side タリア&ニール&ミオ


下から捜そうと一つ一つ教室を調べて行く。

地道にそんなことをしているとタリアがふいにミオに聞く。


「フェリシモさん、貴女は――」


「ミオ、でいいですよ。というより、そっちでお願いします」


教室の中を覗き、異常がないことを確認してカギを閉めながら応える。


「わかったわ。ミオちゃん、貴女はレイ君とどういう関係なの?」


「……気になる」


「二人して……。私はレイの相棒、かな~」


「……相棒」


「まあ、お互いに離れたくても離れることができないから、そんなに間違ってないと思う」


つい最近に久し振りにあってミオはそれを再び実感した。

レイと一緒にいる限りはこの運命から逃れることもで来はしない。


「ミオちゃんはレイ君の記憶について知ってるの?」


「ええ、知ってますけど? 会長こそ何で……」


「ちょっと色々あってね、その時に彼から聞いたの」


珍しいと思った。

レイが自分からそんなことを話すとは思ってなかった。


「どこまで?」


「記憶の欠如ってところまで。深くは聞かなかったわよ」


「そう、なんだ……」


レイが話したということはタリアと過去に出会った可能性が高い。そして、レイはその記憶を所持していない。

タリアをチラッと見る。

彼女もまた、ミオと同じ関係になり得る。レイの――。


「ミオちゃんはレイ君と付き合ってる、とかじゃないのよね?」


「え?」


二階の階段を上りながら考え込んでいたところに、思いもしなかった質問がきてミオは止まる。


「……恋人?」


「そ、そんなわけないよ! 確かに一度、こ、告白したことはあるけど……」


「したの!?」


「うん。でも、あれはふられた、のかな?」


曖昧な言い方にタリアとニールは首を傾げて、どういうことなのかを聞く。


「えっと、タイミングが悪かったというか……間が悪かったというか……時期が悪かったというか……」


「それ全部意味同じじゃない?」


「うっ……。レイは、たぶんそういう関係は嫌いなんだと思う」


「……何で?」


「それは――」


パリン!


応えようとしたら何かが割れた音が静かな校舎に鳴り響く。

止まっていた足を動かして近くの二階の窓を開ける。

空から二人の影が落ちてくる。さらにそれを追うように新しく影が落ちる。


「……レイとフィレ?」


「急ごう!」


三人は急いで来た道を引き返す。

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