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風の精(スプライト)  作者: 花一匁
二章 風と仲間
29/42

風 ⅩⅩⅧ

遅くなりました

すみません

ⅩⅩⅧ 新チーム“風”





「平和だねー」


「ん」


アルバートとの戦いから一週間レイとミオは中を取り戻しつつあった。

今日はミオを正式にチーム“風”に迎え入れるために教員室に向かっている。

アルバートが学院を追放になったことは生徒間では大きな問題となり、それによってチームの入れ替えが急増。教員も仕事に追われてしまいミオは仮としてチーム“風”となっていた。

しかし、そのほとぼりもようやく落ち着き始めてきた。

因みに、アルバートとの戦いの翌日にはナターシャの呼び出しで向かうと思いっきり叱られた。


『学院での私闘を禁じてはいないが、学院の施設を破壊することは許さない』


だそうだ。スラム街であっても学院の施設であることには変わりはない、と一時間近くミオとともに説教をくらった。


「でもこれでやっとクエストを受けることができるね」


「クエスト?」


ミオは首を傾げているのをみて、驚いた表情をする。


「クエスト知らないの?」


「ん。初めて聞いた」


「しょうがないなぁ。教えてあげる」


嬉しそうにしながら分かりやすく教える。


「クエストは『依頼』の一種なの。『依頼』は役所に頼みごとを持ち込む、ていうのは知ってるよね?」


「ん」


「その『依頼』が学院に来たらクエストになるの」


「学院から出るのは禁止だろ」


「そうだよ。学院が『依頼』を貰い受けるときは必ず期限が一週間以内のものって決まってるの」


「どうやって学院から出るんだ? それに期限以内に出来なければ?」


「質問は一つずつだよ。学院の制服には星の紋章があるよね。それが赤く光っている間だけ学院から出れるの」


自分の制服に視線を落とす。

なるほど。確かに胸には六芒星の紋章が描かれている。つまりこれが〈レイヴィス学院〉の校章ということか。


「で、期限以内、つまり校章が光っている間にクエスト完遂出来なかったら学院に強制転移しちゃうの」


逃げることはできないってことだ。ここに入ったからには覚悟を決めた人も多いとは言え、逃げたい奴もいるはずだ。例えどんなに優秀でも卒業資格がなければここを出ることなんてできない。


「本当に監獄だな」


「だね」


そんな事を話していると教員室前にやってきた。

ミオが扉に手をかけようとするのを制し、レイが自分で開ける。

扉を開けるといきなり魔力の塊がレイを襲う。

再び扉を閉めて、ドン、という音の後に開ける。


「いい加減やめたらどうだ。暴力教員」


「手がすべった。つまりは事故だな」


「ガキの言い訳だな。いい年して」


「私はまだ二五だ!」


もう恒例となってきているこのやり取りを止めようとする教員はいない。自分に被害が出ることを恐れているのだ。

しかし、ミオは初めて見るやり取りに慌てていた。


「ああ、あの! 二人とも落ち着いて、ね?」


割って入って止める。

相手を警戒しながらもゆっくりと互いに練っていた魔力を解く。


「で、今日は何のようだ」


「アイン教員に用事が」


「ああ、先輩なら」


「お待たせ~」


突然後ろから声をかけられて振り向くとアインが立っていた。相変わらずサイズの合わない服を着ている。


「じゃあ手続きしちゃお~」


ぶらぶらと袖を振りながら自分のデスクから紙を一枚取り出す。


「はい。これにフェリシモちゃんの名前書いて~」


ミオは手慣れたようにチーム用紙に自分の名前を書き込む。

それを見ているとアインが不意に言った。


「そう言えばフェリシモちゃんはこれで何度目だっけ?」


「何がです?」


「チームの移動だよ~。もう何回もしてるよね~」


「ええ、まあ……」


「今度は長続きしそう?」


その問いにミオは一度レイを見てからアインに笑顔で言う。


「はい。長続きしそうです」


「ならよかった~。私も安心だよ~」


ミオに続いてレイも承認のサインを書き、アインに渡す。

これでミオは正式にチーム“風”のメンバーとなった。後はフィレたちに報告するだけだ。


「メンバーも集まったことだし、さっそくクエスト受ける~?」


「どうする?」


「ん? 俺か?」


「だってレイがリーダーでしょ?」


「とりあえず相談する」


それだけ言って教員室から出る。ミオもお辞儀をしてから慌てて後に続く。


『レイ様、嬉しそう』


ミオと歩いているとウィーが唐突にそんなことを言ってきた。

誰にも言われてないから普通だと思っていたがウィーから見ると隠せていないらしい。

もしかしたらミオにも気づかれてるかもと思いながら横目で見ると、何が楽しいのかニコニコしながら隣を歩いている。見る限りでは気づかれてない。


「なあミオ」


「なに?」


「何か嬉しそうだな」


「そ、そうかな? 普通にしてるつもりだけど」


とっさに顔を引き締めるがわざとらしさがあり、笑ってしまいそうになる。

ミオも自分が無理してるのを理解しているようですぐにまた嬉しそうにする。


「ほら見て。あそこでイチャコラしてる二人がいるわよ」


「本当ですね。あそこだけ別次元のような感じです」


「……甘ったるい」


向かいから顔を寄せ合いながらひそひそと話しているタリアたちを見つけた。ひそひそと言っても充分に聞こえてくる声で、さらに指をさしながらなので隠す気はないらしい。


「ん。待たせた」


「会話聞こえてて普通に話ができるのはおそらくレイ君だけよね」


「何が?」


「わからないならいいの」


「それより、ちゃんと移動は認められたのですか?」


「バッチリだよ! では改めて、本日からチーム“風”で一緒になるミオ・フェリシモです。よろしくお願いします」


たたずまいを直し、みんなと一歩距離を置いてからお辞儀する。


「今まで色んなチームを転々としてきたけど、私はこのチームで頑張りたいのでよろしくお願いします!」


「……硬い」


「もっとリラックスして大丈夫ですよ」


「そうそう。それに嫌だったらはっきり言うタイプだからね」


「一応、みんなの紹介をしておく」


レイはフィレの肩に手を置く。


「彼女はフィレ・ミューヘズ。ポジションは後衛。そしてチーム“風”の流れだ」


続いてニール。


「獣人のニールセン・ヴィヴィオ。ポジションは後衛、時々前衛。そしてチーム“風”のエースだ」


最後にタリア。


「生徒会のタリア・シュリア。ポジションは中衛。そしてチーム“風”の頭だ」


「レイは?」


「俺は前衛。ミオにも前衛を努めてほしい」


「うん。わかった」


前二(三)、中一、後二(一)が出来た。

因みに、このポジションを考えたのはレイではなく、タリアが考えたのだ。今まではポジションは一応あったが、前衛がレイだけではということで獣化できるニールを前衛に入れていたのだ。

しかし、この度ミオが入ったことで前衛が二人になり、バランスは取れた。


「あとは実戦かな」


「ん、そう言えばクエストがどうとかって……」


「レイ君、それは伝わらない」


「えっと、アイン教員がクエストを受けたら? って言ってたよ」


説明不十分のレイをフォローする。

言いたいことがわかり、なるほどと頷きながら相談する。


「そう言えば、レイ君とフィレちゃんはまだクエスト受けたことなかったっけ?」


「ん」


「はい」


「ニールちゃんは一回だけあったよね?」


「……………(こくり)」


ミオとタリアは言わずもがなたくさん受けているからそれなりに実績はある。


「とりあえず受けてみよっか。訓練ばかりじゃ意味もないから」


タリアの提案に全員が頷く。


「では、さっそく手続きに行きましょう」


レイとミオは来た道を引き返す。


「戻ってきたな。ここに」


「うん。意外と早かったね」


「あの、別にシリアスな雰囲気を出さなくても……」


「……時間の無駄」


フィレとニールからの指摘を受け流しつつ教員室の扉を開ける。

今度は魔法が飛んでくることはなく、そのまま開け放ち、アインのデスクに向かう。


「おかえり~。みんな来たってことは、クエスト受けるってことかな~?」


「ん。そうです」


「今あるクエストはこれだよ~」


引き出しを開けてクエスト受領書を渡してきた。


「今受けることができるのはその三つだけだよ~」


「他は?」


「別のチームが終わらないと受けられないのがここのルール~。他にもあったけどみんなのレベルにあわせて選んだよ~」


じゃあこの中から選ぶしかないということか。

アインも生徒のことを考えてのことみたいだからわがままは言えない。


内容は『二日以内に鉱山からアメジストの鉱石を採ってくる』

二つ目は『森の奥にある洋館で人が出入りしているらしいので調べてほしい』

三つ目は『学院内で真夜中になると幽霊が出るので正体をつきとめてほしい』

この三つだ。


「これ二つ期限ないね」


「一つは学院内だから自由にしてるの~。もう一つは一週間いっぱい使って調べてきて~」


「学院内の幽霊って気にならない?」


「私も気になります」


「……鉱山」


レイとミオが何も意見出さないのでそちらを見ると、二人は難しそうな表情でじっと三枚のクエスト用紙を見ている。


「レイ、この洋館って……」


「早計な考えは身を滅ぼす。これは他のチームの情報が必要かもしれない」


「どうしたの?」


「何でもない。……アイン教員、学院内の幽霊って被害出てるのですか?」


「まだ数人だけどね~。これ以上の被害拡大を押さえてほしいんだ~」


「あの、失礼ですが、そういうのは教員の仕事では?」


フィレの疑問に皆が頷く。被害が出ているのなら余計教員が何とかすべきはずだ。


「そのことは、生徒会長からどうぞ~」


みんながタリアの方を見る。

いきなり振られたことに驚きながら、タリアは自分の頭の中の資料を引っ張り出す。


「えっと、その幽霊っていうのがモンスターとかだったら教員が動くんだけど……何でもそういう類じゃないみたいだから生徒に試しにやらせてみようってことになったの。これは生徒会でも決まったことなの」


「……被害あり」


「被害が拡大すれば教員も動くんだけど……」


タリアはそこで区切り、少し声を潜めて続ける。


「被害出た人は、どうやら魔力の枯渇みたいなの。外傷とかがないからまだ教員は動かない」


「私たちも忙しいからね~。なるべく生徒のみんなに頑張って~って感じだよ~」


「これ受けるか?」


「レイがやるなら私頑張るよ!」


「わ、私も負けません!」


「何の勝負よ……。私も賛成。この件は早めに解決したいしね」


「…………賛成」


全員がこのクエストを受けることを了承した。

ニールが若干戸惑いがちに見えるが、賛成と言っているので気にしない。

クエスト受領書にサインをしてアインに渡す。


「じゃ~頑張ってね~」


垂れる袖を振り回しながらの応援にレイたちは本日の夜に学院内に入ることを決めた。

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