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風の精(スプライト)  作者: 花一匁
一章 風と学院
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風 ⅩⅩⅦ

ⅩⅩⅦ 敗北の行方





「アルバート・ハイド。お前を〈レイヴィス魔法教養養成学院〉からの追放を言い渡す。言うなれば退学だ」


「…………はい」


学院長室にいるのはナターシャ・ファブリス。そして、〈黄の派閥〉アルバート・ハイドの二人だけ。


「わかったら行け。もう生徒でもない貴様がこの学院に居ていい理由はない」


ガチャ、とノックも無しにいつものようにぶかぶかな服を着たアインがボストンバックを両手に持ってやってきた。


「これ、ハイド君の荷物ね~。勝手に積めちゃったから~」


渡された荷物をアルバートは左手で受け取る。

それからナターシャに一礼して学院長室を去る。それを袖――正確には手――を振って見送ったアインはナターシャに向き直る。

だが先に口を開いたのはナターシャだった。


「連絡は?」


「完璧♪ でもいいの?」


「何がだ」


「何にも情報聞き出さなかったでしょ? 少しくらい情報持っていてもおかしくはないよ」


「はん! あんな下っ端の持つ情報なぞたかがしれている」


「ナーちゃんが言うならいいけどね」


「アイン、そのナーちゃんはどうにかならないか?」


「じゃあ、なっちゃんがいい? それともナナちゃんとか?」


まともなものが何一つない。

何も言わないのをみて、アインはいつも通りに呼ぶことを決めつつ、ナターシャに聞いた。


「他の生徒は?」


「その時の記憶がないようだったから帰した。レイの名前を出しても首を傾げるだけだったな」


「またアストレス君? いい加減生徒から苦情が来ちゃうよ?」


「構わん。放っておけ。そろそろだな」


窓側まで移動して外を見る。アインもそれに倣い、外の方を見る。

そこには丁度学院から出て行くアルバートの姿があった。


「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな! 追放だと? くくくっ〈月光の魔女〉と言ってもただの馬鹿だ。追放したこと何れ後悔させてやる!」


「アル!」


門まで来たところで後ろから声がかかる。いつも聞いている声だ。


「アル、学院を追放って本当なの? ねぇ、どうしてあんな事したの?」


いつも凛々しくしているクレアは今では寂しそうな表情をしている。


「……ウザいんだよ」


「え?」


「お前みたいに人の顔色伺ってる奴がだよ! 同情のつもりか?」


「違うの。私はただアルが――」


「俺は生徒会にさえ入れば良かったんだ。アンタに近づいたのもそうさ。全ては情報を手に入れるためだ」


嗤いながらクレアを見ると彼女は涙を流していた。果たしてその涙は悲しみからか、悔しさからか。でもアルバートはそんな事気にした風もなくそれだけ言って去っていく。

それをクレアが見送ると後ろから声がかかる。


「あんな事言う必要あったのか?」


「反省してるのかを見たかっただけですわ。ま、してないほうが楽だったわね」


先ほどの涙はどこへやら、クレアは声の主に応える。


「女は恐ろしいな。演技がうまい」


「誉め言葉として受け取っておきますわ。でも、残念ね。何かしらボロを出すと思いましたのに。アランは何か知っていて?」


「さあな。味方ではない者に易々と情報は与えない」


「大変ね。派閥って」


「無所属は気楽でいいが、知らない内に入っていることもあるぞ」


「無問題。私が捧げる人は一人だから」


扇を広げ、口元を隠しながらクスクスと笑う。アランも同様に笑いながら、出て行ったアルバートに聞こえないとわかっていながらも哀れみの言葉を送る。


「アルバート・ハイド。お前は不幸な奴だ」


クレアもそれに同意して二人は学院へと戻る。



学院を出たアルバートは危機に瀕していた。

目の前には白衣を着た人物と黒衣を着た人物の二人。


「な、何でお前らが……」


「おい、間違いないか?」


「彼はアルバート・ハイドで間違いない」


「捕らえろ」


「ひっ。うわああぁぁぁっ!」


荷物を投げ捨てて走り出す。少しでも速く遠くに逃げるために。

しかし、それはあまりにも無駄だった。走っている最中に突然転けてしまった。何事かと思いながら自分の足をみると左足が消えていた。


「殺すなよ。風魔法を使用した大事な実験体サンプルだ」


恐怖で顔を歪めながらアルバートは二人と共に消えていく。そこにはアルバートが捨てた荷物さえもなくなっていた。



学院からその様子を見ていたナターシャとアインは事が終わると窓から離れる。


「相変わらずだね。魔研の人たちは」


「誰から教わったのかは知らないが、風魔法を使うからああなる」


「ナーちゃんはアストレス君しか許せないんだよね? ちょっと過保護すぎ」


「過保護に限度はない」


「否定しないんだね」


「うるさい!」


これ以上逆鱗に触れないようにアインは学院長室を出て行った。

ナターシャは息を吐きながら生徒名簿を取り出し、アルバート・ハイドの名前に線を引いて消す。


「十二星座と生徒会が空いたか。さて、どうするか……」


天井を見上げながら思考する。

生徒会に関しては生徒に任せればいいが、十二星座はそうもいかない。早く決めないと十二星座候補生がうるさい。

アルバート・ハイドが追放になったことも学院でしばらく噂となるだろう。


「問題は山積みだな」


考えるのが面倒なのでナターシャは少しだけ眠ることにした。

レイが入ってきたためここから先、問題が増えることになると覚悟しながらナターシャは眠りにつく。

一章 完


次回第二章 あらすじ

あの出来事の後レイはミオをチームに引き入れた。

しかし、それから少し経ってからタリアはチーム“風”を抜けることに。

タリアが戻らないまま学院行事のチームトーナメントが始まる。


タリアが不在の中、レイ率いる“風”と派閥が接触する。


大まかなものです。

若干の変更はありますが悪しからずご了承ください。

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