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風の精(スプライト)  作者: 花一匁
一章 風と学院
16/42

風 ⅩⅤ

ⅩⅤ 休日





レイは学院校舎の前で私服姿で誰かを待っていた

今日は学院の方は休みなので出かける約束をしているのである


「ごめん。待った、かな?」


「ん?どうだろう?」


『一分と少し待ってます』


「一分くらい」


「じゃあ、レイ君も今来たんだ」


レイが待っていたのはタリア・シュリアである。彼女の方も私服だった


「ん。これからどこ行くんだ?外には出れないだろ」


「大丈夫。学院からは許可もらってるから。はい」


タリアから渡されたのはブレスレット。学院の紋章である星が描かれていることから学院の備品らしい


「外出するときに付けてないと外には出れないの。そして、外にいる限りこれを外す事はできない」


「無理に外そうとしたら?」


「強制的に学院に戻される」


「これを付けたまま学院から逃げたら?」


「一応24時間以内に戻らなかったら強制的に学院へと戻される。それに、学院の外っていっても、結局は学院の敷地内だもん。逃げられないよ」


矛盾しているように聞こえるが、つまり、レイヴィス学院は生徒たちに何もない状態でただ授業を受けさせ、寮に戻って寝かせる。それだけではストレスが溜まり、生徒のメンタルにも支障がでると判断して学院から離れたところに娯楽施設を設けることにしたのだ

娯楽施設は飲食店やショッピングを楽しめるほか、簡易版のゲームセンターもある。これらがあることにより、生徒たちのメンタルは保たれている。しかし、そこに長く居着いてしまうものがでないように学院からブレスレットを渡される


「あ、でも卒業出来なかった人たちは外に出るときは枷を必要としないんだって」


「どういうことだ?」


「つまり、学院に見捨てられたってこと。卒業したいと必死にプラムで学ぶ人いるけどね」


レイヴィス学院は生徒に何が起ころうが全ては自己責任。学院側も無視というわけにも行かないが、命に関わることが起きても殆ど自己責任だと学院に入るときに知らされている


「あ、だから近づいちゃ行けない場所もあるから気を付けてね。まあ、普通にしてれば問題ないからね」


「ん。じゃあ行くか」


「うん」


ブレスレットを付けた二人は学院から離れた娯楽施設に向かう

向かっている最中にふと疑問に思ったことがあり、タリアに尋ねる


「金銭はどうするんだ?学院から支給はされないだろ?」


「学院に入るときの書類読んでない?学院側がクエストを提示してくれるから、それをこなして、生徒たちの生活費とするの」


「自分で稼げってことか」


「そういうこと」


学院に入ったばかりの生徒は一週間分の生活費を学院側から提供される。つまり、一週間以内にチームを作り、クエストをこなさなければ生活できないということだ




「思ってたよりデカいな」


「うん。私も初めて来たときはそう思った」


学院から徒歩十分圏内の場所にある娯楽施設は学院よりかは小さいが、それでも一回りくらいしか変わらない

二人が元々こっちに来たのは十二星座についてのことである。タリアが言うには他にも話したいことがあるということで昨日ではなく、休みの今日ということにしようと決めたのだ


「それで、どっか喫茶店にでも入るか?」


「うーん、まだ早いから少し歩こう」


「ん」


レイはタリアの歩調に合わせて歩く。いつも歩く速さより遅く感じるが、たまにはこのくらいもいいか、と思いながら二人とも無言で歩いていると


「レイ君は理事長と知り合いなの?」


急にナターシャとの関係を聞いてくるのは予想外だったが、できる限りの情報提供は約束事でもあるので話せるとこだけ話す


「ナターシャは俺の師匠だ。戦い方もナターシャに教わった」


「え?師匠?」


「ん」


「あの〈月光の魔女〉が……?」


「しばらく離れてる間にそんな二つ名持ったのか」


「知らなかったの?」


「随分一緒にいなかった」


「それでも〈月光の魔女〉の名前を聞いたことがない、っていう人はいないと思うよ」


『レイ様はそういうことに興味ないですからねー』


『悪いか?』


『いいえ』


ウィーはクスクスと笑いながら否定するのをレイは不満気な顔で見る

そのやりとりを見ることしかできないタリアは少し羨ましそうな顔で見る


「ねえレイ君」


「ん?」


「どこかの喫茶店に入っていい?」


「ん。なるべく静かなところ」


「わかった」


レイは頷きながら条件を提案。二年しか学院に通っていないが、どこの店が一番静かかは大体分かっているので頷く


「ここでいい?」


タリアが紹介してくれた店はこぢんまりとしていて、静かそうな店だった

レイはこれくらいならば別にいいか、と判断して了承した

店に入って店員に席まで案内された二人は対面するように座る


「ご注文が決まられましたらお呼びください」


「俺はコーヒー」


「あ、私も同じもので」


礼をして店員は下がろうとするが、レイとタリアはメニューに目を向けずに店員に注文する

かしこまりました。と言って店員は今度こそ下がる


「なあ、ここにいる人も出ることは出来ないのか?」


「え?あ、ううん。ここにいる人は噂では情報屋を主としている人たちだから」


「情報屋?」


「ええ。ここにいるのはフリーの情報屋。国の利益ためには絶対に動かない人たちを採用してるのよ」


「詳しいな嬢ちゃん」


話を聞いていたのか、体格のいいスキンヘッドの男が頼んだコーヒーを手に会話には入ってきた

その男の顔に見覚えのあるレイは少し驚きながら名前を呼ぶ


「エディル?」


「オッス!もう少し驚いてくれて欲しいがな」


「タリアから話を聞いたときにいずれ会うかもと思ったからな」


「タリアっつうと……タリア・シュリアか?」


「はい」


「嬢ちゃんがあの〈最弱の十二星座スターズ〉か……」


「最弱?」


「……………」


エディルの言葉に疑問を持つ。タリアは顔を伏せて黙り込んでしまった。エディルは自分の頭をパチパチと叩きながら説明した


「獅子座という十二星座スターズとして最強の名前を持っていながら、その能力は十二星座の中でも一番低い」


「……なさい」


「ん?」


「ごめんなさい!」


小さくて聞き取れず首を傾げたら、今度は聞き取れる声量で謝ってきた

しかし、レイは何に対して謝られているのかが分からず見ていることしかできない


「私、弱いのに……それで……!」


「なあ、それより十二星座のこと教えてくれないと分からないんだが」


「うん…ちゃんと話す」


エディルは気を遣ってくれたのか、タリアが謝った際にすぐ奥へと戻っていった


「十二星座は学年関係なく、学院長に認められた人がその称号を持つことを許されてるの」


(ナターシャが認める、か……)


レイは少し思うところがあるが、それを口にせず話を聞く


「十二星座になる条件は、ただ強くなることじゃない。必ず一癖、二癖のある力を持つ人たちが選ばれる」


「単純な力じゃ無理ってことか?」


「ええ。だから、十二星座より強い人も学院にはいるの。でも、だからといって十二星座は負けていいわけじゃない。生徒の上になる十二星座は負けることを許されない」


「負けると、どうなる?」


「その星座を降ろされる。それだけでも、辛いのに更には枷も付けられるの」


「枷?」


「魔法の使用制限。私たち魔法師にとっては辛いもの」


生徒の上に立つべき存在の十二星座。そして、隠れた力を持つ十二星座ではない生徒


「タリアは、どうなんだ?」


「そのこと、だけど……」


話を戻すとタリアは言いづらそうに下を向き、カップの取っ手をコンコンとつつく


「もしかして、力を隠してるのか?」


「……………」


話し出さないのでレイの方から聞くが、尚も黙りを続ける

ため息を吐きながら他の方に目をやると、エディルや他の店員が客に対応しながら、時折こちらに視線を向ける

それでタリアが黙り込んでしまった理由が分かり、別の話題に持ち込む


「それで、十二星座は他に何があるんだ?」


「えっと…十二星座同士でチームは作っちゃいけない。だったかな?」


まだ戸惑いがあるようで、慎重に言葉を選びながら話す


「生徒会長は必ず十二星座の誰かがやること。これも制約の一つ」


「じゃあ,残り三つの奴らも」


「うん。星座だよ。どんな能力かは私もあまり分からないけどね」


十二星座の能力を見ることなど、早々ない。決闘を挑まれることもあるが、能力を行使せずに勝つ事が殆どで能力は噂程度にしか出回らない


「たまに決闘を申し込まずにいきなり魔法を撃ってくる生徒もいるから、私たちは気が抜けないの」


『レイ様もいずれなるかもですね』


『それは困る。面倒だ』


かなり真剣に返すレイにウィーはクスクス笑いながら胸ポケットへと入り込んだ

ため息を吐きながらこちらを見ていたタリアに次の質問を投げかける


「それで、もう一つの用事は?」


「え?」


「私的で用事があるんだろ?」


「あ、うん。えっと、随分昔の話しなんだけど――」


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