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風の精(スプライト)  作者: 花一匁
一章 風と学院
15/42

風 ⅩⅣ

ⅩⅣ チームの顧問





「……意味不明」


「ん。つまり、フィレとタリアはチームに入ることになった」


「……相談無し?」


「独断で決めたことはすまないと思ってる。だが、不可思議な魔法と、七竜を手放すのは惜しい」


「……反対しない。でも相談必要」


「ん。それは悪かった」


「……………」


先ほどから授業を受けずに空き教室でずっとこのやりとりを続けている

この場にはレイとニールしかおらず、フィレは教室で授業を受けており、タリアは生徒会の仕事が終わり次第合流するということになっている


「……会長は理解。ミューヘズは理解不能」


「あいつの力は見ただろ?」


「……………」


ニールは別に反対しているわけではない。レイが相談しないで勝手に話しを進めているのがイヤなだけである。同じチームならば少しは相談してくれてもいいと思う


「……反対したら?」


「その場合は説得するつもりだった。あの力は魅せられた」


あの魔法陣とは異なる陣がレイの好奇心をかき立てた


「だから何としてもこちらに引き入れたい」


フィレがチームに入る。とは先ほど言ったがまだ本人から了解を得てはいない。しかし、向こうはこちらの要求を必ずのまなければならない

いくらちゃんと決まってなくてもちゃんとした相談もなくこんな事を言うのはレイ自身も悪いとは思っているが、他がフィレを引き入れる前にこちら側に入れたいと思っている


「こんにちは」


ニールと話していたら横から二人に挨拶をしてくる


「……会長」


「タリア来たのか」


「呼んだのはレイ君でしょ。生徒会の仕事も一段落ついたから顔を出しに来たわ」


「それで、タリアは入ってくれるのか?」


「前のチームを説得するのは大変だったけどね。何とかなったわ」


「……会長、頼もしい」


「あら、嬉しいこと言うのね。ありがとう♪」


ニールに笑顔で言うと、レイの方に顔を向けて真剣な表情で聞く


「レイ君、七竜について教えてもらえるかしら?」


「君がどこまで同種のことを知っているのか、私も気になるな」


昨夜学院の屋上でタリアの守護獣ガーディアン――カナミアを見た途端にただの竜ではなく、もう見かけることのないと思っていた七竜だった

カナミアは自分が七竜であることはタリアには言ってなかったようで彼女も七竜について興味があるようだ

ニールは早く聞きたいのか、目を輝かせながら制服の裾をクイクイと引っ張る


「わかったから落ち着け。……七竜は300年以上生きることのできる最長寿と言われているほどの竜だ」


300年、人が生きることは絶対に不可能だな~と思いながらニールは話を聞き続けた


「最初は長寿の長いことから古代竜と呼ばれていたんだが、古代竜の持つ魔力と使う人間の使える属性、つまり七属性使うことから七竜と名付けられたんだ」


「……書物では、『古代竜』、『七竜』ない」


レイは机の上に座っているカナミアに手を伸ばす

カナミアの両端に生えている翼をクイクイと遊び始める


「そうだな。『災厄の暴竜』なら聞いたことあるか?」


「……聞くだけ」


「まあ、七竜に関してのことは本当に少ないからな」


「カナミアと同種の竜はまだいるのかしら?」


「知らん。俺も今までは絶滅したものだと思ってたからな」


レイは翼を今度は突っついたりし始める。カナミアは特に反応を見せずにいたが、レイの言葉に反応した


「君は同種の絶滅理由を知っているのか?」


「一応。七竜は燃え盛る火、清浄なる水、大地の土、稲妻の雷、絶対零度の氷、照らす光、覆う闇。これが二匹いれば国の半分を破壊できる」


「た、たった二匹で……」


「……………」


レイの言葉にタリアは驚いていた。それほどまでの力を持つカナミアを使役しているのだから当たり前といえば当たり前だ

対してニールは早く続きが聞きたいのか、尻尾を振りながら制服の裾をクイクイと引っ張る


「人間はその力がいつ自分たちに向けられるかを恐れて討伐しようと言う話をだした」


「だが、たかが人間ごときに後れをとる先祖ではないだろう?」


「それが、すべての国が集結してのことだ。戦争中の国も勿論あったが、第三国からの仲介により休戦協定が結ばれ、はじめて世界が一眼となったそうだ」


「そんな歴史は今まで習わなかったわよ?」


「それに関しての理由はわからない。……七竜は数が少ないことから、連絡が取れるように群れでの生活が多かったらしい。人間は七竜の群れに強襲、討伐に成功。しかし、それでも国の痛手は安くはなく、すべての国が傾き、崩れていった」


「人間という者は愚かだな」


「全くだ。でも、いまだに七竜の生き残りがいたとは思わなかった」


カナミアの呟きにレイは頷いた

タリアは少し疑問に思ったことがあり、レイに尋ねる


「ねえレイ君。貴方、なぜ書物もないのにそれほどまでに詳しいの?」


「ん?」


「……同意。説明もとむ」


「なぜって言われても知らない。もう覚えてない」


「本当に?」


「ん。それが聞いたものなのか、調べたことなのか、それも覚えてない」


「……なぜ?」


「そりゃ、記憶がないから、というより記憶の欠如といった方がいいか」


レイは何でもないように言うが、それを聞いてしまった二人と一匹は驚きの顔でレイを見る


「ん?」


「レイ君、それって記憶喪失?」


「違う。記憶の欠如。知識としては失われないけど、思い出と言われるものは所々しか覚えてない。一応、不意に思い出すことはあるらしい」


自身のことなのに他人事な物言いに空気は一気に重くなる


「お待たせしました。話しとは何でしょう?……あの、何かありましたか?」


そこにいつの間にか授業が終わったフィレが到着した

その場の空気に首を傾げるが、レイが何でもない、と言うとフィレは頷きタリアの隣に腰掛ける


「それで、お話というのは?」


「ん。フィレ・ミューヘズ。君をチームに引き入れる」


「何で決定事項みたいに言うんですか?」


「決定事項だからだ」


もう決まっているかのような言い方にフィレは困ったような顔を浮かべる

別に拒否する理由はないのだが、それでも他のところから誘われているので、そう簡単に了承はできない


「昨日の契約を覚えているか?」


「え?あ、はい……」


顔を赤らめてレイから少し視線を逸らす


「その時、俺はお前の命に従ったが対価は払われてない」


「つまり、その対価がチームの引き入れ、ですか」


「ん」


「……………わかりました。入ります」

(それに、アストレスさんがいるなら)


色々と葛藤はあるが、少しでも知っている人がいれば心強かったりする


「あの、アストレスさん」


「ん?」


「入るのはいいのですが、お前ではなく、フィレと名前で呼んでいただけませんか」


「ん。フィレも俺のことは好きに呼んでくれて構わない」


「はい。わかりました」


「……………」


「……………」


「えっと、そ、それじゃあ、次は顧問のところへ行きましょうか。レイ君アテはあるの?」


「ない」


再びの沈黙にニールはレイの隣で何かするでもなく大人しく座っている。フィレは今までいなかったのでとりあえずは流れに任せようということでタリアの隣でことの成り行きを見守っている。その沈黙に耐えられなくなったタリアはあわてた様子でレイに提案する



「じゃあ目を付けている教員は?」


「……………」


「レイ君?」


「あ、一人いるな。アイン教員が」


「……アイン先公?」


「でもアイン教員の実力は未知数よ?」


ニールとタリアはアイン教員が戦ったところを見たことがないのか、どこか不安そうな顔をしている


「見た目で決めつけるのは三流だ。アイン教員は学院でも上の方だろう」


「そんな勝手に決めつけるのもダメじゃないかな?」


「いや、アイン教員でいこう」


「……なぜ?」


「なんとなく」


『レイ様、まさかあの人の耳が気になってるだけではないですよね?』


「失礼だな。そんなことはない」


「「「?」」」


ウィーの疑問に即否定する。普通に喋っていたのでタリアたちはいきなりのレイの言葉に首を傾げる


「どうしました?」


「何でもない。とりあえず行くぞ」


『レイ様、怪しい』


『ウルサい』


教室を出る際にウィーが言ってくるのを黙らせる

タリアたちはレイの行動を不思議に思いながら教員室へ向かう後をついて行く

教員室の扉をノックしてから扉を開けると、初日と同じく魔力を具現化した魔力塊が飛んできた

レイは扉を閉めて、魔力塊の攻撃をやり過ごした


「チッ」


「なにか用ですか?暴力教員」


「ほぉ、敬語を覚えたが口の悪さは直らないようだな」


「アンタに敬語を使うだけでもマシだと思いますが?」


「訂正しよう。目上にアンタとは、これは矯正きょうせいが必要だな」


「誰かにこの性格を直されたくはないから抵抗させてもらう」


扉を開けて犯人だと思われるミーシャに突っかかるとミーシャは鼻で笑いながら言い返し、最後には開き直った

レイに関してはもう敬語を使う気はなくなっている

にらみ合いながらレイとミーシャはお互いに魔力を溜め始める。ミーシャは堂々と手をレイに突き出し魔力を込める

一触即発の空気の中、フィレとニールが二人の間に割り込んだ


「先生、止めてください!」


「………レイ」


「「チッ」」


二人が割り込んだことでレイとミーシャは同時に舌打ちしながら魔力を消した

タリアは頭に手を置きながらバレないようにため息を吐いていた


「それで、その不愉快極まりない面を下げて何のようだ?」


「元々アンタには何の用事もねえよ。こっちはアイン教員を探しにきただけだ」


再び一触即発な雰囲気になりそうなとき、タリアはレイの襟首を掴んで後ろに引っ張る


「レイ君だと話が進まないから私が話す」


「……異議なし」

「賛成です」


止めに入ってくれた二人もどこか疲れたような顔をしてタリアに任せる


「ミーシャ教師」


「なんだ」


「アイン教師にチームの顧問を頼みたいのですが、今おられますか?」


「ああ、アイン先輩なら自分の机にいるはずだ」


小さいからだろうか、入り口近くからでは確認できないので教員室の奥へと向かう。その際ニールはレイの隣を歩いてミーシャと目を合わせないようにする

アインは先ほどの騒ぎを聞いていたのか、すでにこちらに体を向けて、服の袖を揺らしている。おそらくは手を振っているのだろう


「アイン教師」


「シュリアちゃんどうしたの?」


「アイン教師にチームの顧問をしていただきたいのです」


「いいよ~」


特に考える素振りも見せずに了承してくれた


「メンバーは……また色々と濃いね~」


「せめて個性豊かと言ってください」


「……メンバーはアストレス君、ヴィヴィオちゃん、ミューヘズちゃん、シュリアちゃんでいいのかな?」


「あの、アイン教員せめて何か言ってください」


「四人だけど問題あるか?」


「レイも気にしてください!」


レイとアインはフィレの突っ込みを見事にスルーして話しを進める


「でもいいの?十二星座スターズのシュリアちゃんがアストレス君たちと同じチームで」


「はい。というより、私が頼んだのです」


「十二星座ってなんだ?」


「それに関しては後でいい?先に手続き済ませたいから」


「ん」


「原則五、六人だけど。まあ、いいかな~。このメンバーについて行ける子はほとんどいなさそうだもんね~」


そこに関してはアインが何とかしてくれるみたいなので人数は問題なさそうである


「チームリーダーは誰がやるの?」


「……レイ」


「ヤダ」


「私もレイを推薦します」


「拒否」


「レイ君かなー?」


「却下」


三人の言葉にすべて否定で返すレイにカナミアが言う


「レイよ。知っての通り、タリアは生徒会長、そして生徒会総会長を務めている。他にも女子寮の副寮長も務めているのだ。そこにチームリーダーを加えたらタリアは倒れてしまう」


「ニールとフィレは?」


「ふむ。彼女たちは人を引っ張ることは苦手そうだ。だが、君は人を引っ張っていくことが出来るだろう」


「俺も苦手だ」


「それに、君は誰かの指図は受けんのだろう?」


「ん」


「ならば、尚更君がやりたまえ。さすれば、誰からの指図を受けることもない」


そこまで言われてしまったら頷くしかなくなってしまった。納得は出来なかったが仕方なく渋々やることになる

チームリーダー欄にレイの名前とタリアたちの名前を書くと後はスムーズに進み、残りはチーム名を決めるだけになった


「チーム名はどうする~?」


「“風”なんてどう?」


「いいですね!チーム“風”!」


「………悪くない」


「ん」


タリアのチーム名に誰も反対意見はなく、寧ろ肯定すらしているのでチーム名は“風”となった

アインも特に何も言わずチーム名のところに風と書いて、引き出しから印鑑を取り出し、右下の欄に押す


「顧問をよろしくお願いします、アイン教員」


「………お願いします」

「よろしくお願いします」

「アイン教師、お願いします」


「こちらこそ。明日から行きたいけどナターシャ学院長に最後の承認を取らなくちゃいけないから~……休みを挟んでからだね~」


今日から早速と行きたかったがまだ理事長に書類を提出していないのでチームとしては完全には認められてはいないので休みを挟んでからということになる

今日はもう解散という形になり、各々寮の方へと帰って行った

教員室に残ったアインはチーム欄の名前のところを見て一人つぶやく


「それにしてもすごいチームだねぇ~。風魔法の使い手に、学院トップクラスの魔力量、不思議な術の魔法使いに、最強の十二星座で生徒会総会長」


思わず笑みをこぼしたアインはそれには気づいてはおらず、独り言をいう


「タリアちゃんは二年間だけなのは残念だけど、この二年は面白くなりそう」


アインはイスから立ち上がり、この書類を届けるために教員室を出て理事長室兼学院長室、そしてナターシャの私室でもある部屋へと向かう


理事長室兼学院長室にはナターシャ・ファブリスが一人で職務を行っている。学院の教員が優秀のおかげで、こうして二つの職務を行うことができる

ナーシャは人が来る気配を感じて机の書類を一度引き出しにしまう


コンコン


「理事長、書類を提出に来ました」


「入っていいぞ」


「失礼します」


扉を開けて入ってきたのはアイン・カプリス教員だった


「レイはどうだ?」


アインが扉を閉めた瞬間に聞いてきたので苦笑しながら答える


「早速聞くの?悪い子ではないかな~。でも敬語は今のところ私以外には使わないみたい」


「なる程。アインに対しては敬語か。くくっ、随分と気に入られてるな」


「その様子だと、ナーちゃんにも敬語使ってないんだね」


アインは入ってくる時とは違い少し態度を崩して答えながらナーシャの机に先ほどの書類を置く


「なる程。レイがリーダーとは、面白いな」


「他の人たちもすごいよ~」


ナターシャは他のメンバーを見て、ほぅ、と感嘆の声を漏らす


「まさか、あのミューヘズがレイと一緒とはな」


「それがどうかしたの?」


「いや、私も確証があるわけではないからな。今は言えん」


タッグ戦の時にはフィレ・ミューヘズと聞いてピンと来なかったが、あの陣を見てまさかと思った。それを考えると今ではレイと一緒にタッグを組んだことや、一緒のチームにいることに驚きだった


「やはり、ヴィヴィオと組んだか。奴の魔力の質に惹かれたか」


「魔力の質?」


「ああ、レイ好みの質を保ってるんだよ」


どんな魔力か気になったが聞いてもわからないような気がするので聞くのをやめる


「シュリアとは予想通りだな」


「やっぱり、十二星座スターズだから?」


「いや、アイツは十二星座の実力は知らんだろう。レイが目をつけたのは七竜がいたからだ」


稀少な七竜をレイが手放さないことはナターシャには大体の予想はしていた

ナターシャは一通り確認したところで印鑑を取り出し、アインの捺した印の隣に同じように捺した

今ここにチーム“風”が結成された


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