風 ⅩⅢ
ⅩⅢ 夜中の談判
「今日は疲れたよ。久しぶりに形態移行使った」
深夜すでにみんなが眠っている頃
レイは学院の屋上に来て夜空に広がる星を見ながらレイの周りをくるくりと回っている白い光と話していた
「君にも見てほしかったな。……僕はここに来てから、君との時間が減った気がする」
白い光はレイの目の前で止まり、振り子のようにゆらゆらと動く
「確かに僕や君が狙われることはなくなったけど、僕は信用できる相手に会ってない」
屋上の手すりをグッと握りしめ、ギリッと歯を食いしばる
(もしこの子がいなくなったら、僕は……)
一瞬全てを破壊した学院が脳裏をよぎる。それを消し去るように首を振り、深呼吸をする
自分が護ればいい。そう思いながら星をみる
「君のことは、絶対に僕が護るから」
レイの目の前でゆらゆらと浮き続けている白い光を見ながら、自分に言い聞かせるように言う
……コツ
屋上へと続く階段から誰かの足音が聞こえ、急いで白い光をビンの中に素早く入れ、内ポケットに隠す。次に鋭く尖ったピックを取り出し、屋上に上がってきた人物に向かって投げた
「っ!」
ピックはキンと高い音を立てて入り口近くの壁に刺さる
「誰だ」
レイはもう一本ピックを構え、暗くてよく見えない相手に問う
相手はそれに何も答えずに魔法を撃ってきた
横に飛び避けながらピックを投げるがピックはすぐに撃ち落とされる
(銃か?)
相手の魔法を撃つスピードと時間が速く、恐らく銃、又はそれに通ずるものと判断する
「え……レイ君?」
向こうはこちらの顔が視認できたのか、攻撃を止める
それをチャンスと見たレイは立ち上がり、襟首を掴んで押し倒す
懐からサバイバルナイフを取り出し、首元に触れる
「ちょ!ちょっと待って!私!タリア!」
「タリア?」
どこかで見たことある顔だが、誰なのかがわからない
「だれだ?」
「覚えてない?生徒会総会長って言えばわかるかな?」
「……………クレア・ルージュの仲間か」
「………彼女のことは知ってるんだ」
クレアの名前を出すとタリアはレイの目を見ながら小さく囁いた
「ん?」
「別に。思い出すのに時間かかるんだなって」
「人の顔と名前を覚えるのは苦手なんだよ」
「そう。それより、そろそろ苦しく、なって来ちゃった」
先ほどとは違い言葉が途切れている。レイは襟首から手を離しタリアの上から退く
「何しに来たんだ」
「それは私が聞きたいな。今の時間帯は寮から出るのは禁止されてるよ」
服のほこりをパンパンと落とす
レイはそんな行動をしているタリアを見ようとはせずに手すりに体重をかけて星をみる
「今日は星をみたい気分だった。というか、アンタも同じだろ」
「私の場合はレイ・ラ・アストレス君を見かけたから、そう言えば取り消される。総会長だもの。学院からはそれなりに信頼をもらってる」
隣に来て手すりに肘を置きながらレイの顔を見る
それを横目で見ながら
「で、その場合俺はどうなるんだ?」
「魔法使用が一定期間制御される。他には一日中教員数名と戦ったりもするわ。あれは大変らしいわよ」
クスクスと笑いながら言ってくるのに対し、あまり興味の無いような感じで話を聞く
「結局、アンタは何でここに来たんだ?」
「ねえ、何で名前で呼んでくれないの?」
「話を逸らすな。なぜここにいる?」
レイがもう一度聞くと諦めたように息を吐くと小さく囁く
「……今日だから」
「は?」
「私は今日、絶対に星を観る。そう決めてたの。例え、教員止められても」
レイに向かって微笑みながら今までとは違う優しい声音でレイの問いに答える
「なんか思い入れがあるのか?彼氏とかの?」
「ち、違うもん!私今はフリーだもん!」
「急に子供っぽい喋りになったな」
「あ……わ、忘れて。お願いですから忘れてください」
指摘されて片手をレイに突き出して頼み込む
まあ別に他の人に言う気はないからそんなことはどうでもいいと思っている
「ねえ、レイ君」
「なに?」
「生徒会に入らない?別に第四生徒会でなくてもいいから。どこかの生徒会に入って」
「なぜそこまで俺を入れたがる?風魔法が使えるからか?」
「うん。大きな理由はそれ。私的には貴方を誰にも渡したくない」
「はぁ」
レイはこういう風に何度も言われたことがあり、もうすでにその言葉は聞き飽きていた。レイの中でその言葉は一番信用できない言葉であ
「俺を利用したいなら最初から言えばいいだろう」
「り、利用なんて……」
「利用するなら俺は利用されてやる。その代わりアンタも俺に利用されるなら、だ」
「貴方は常になにか対価を求めてるわね。なぜ?」
「それしか他人との付き合い方を知らないからだ」
そして、その対価は自分を絶対に裏切らないほどのもの。それを生きる術としていたレイからしたら当たり前で、普通に生きてきた人からしたらレイは異常である
「俺は生徒会には絶対に入らない。どこと繋がっているかもわからないのに」
「じゃあ、私を貴方のチームに入れて。貴方が生徒会に入らないなら、私が貴方のチームに入る」
「……………」
「そうすれば、貴方は私の力を利用できる。学院で五指に入るほどの力を持つ私を。そして私は貴方のことを探る。私は貴方に対して隠し事は殆どしないわ」
「信用できない」
「信用してほしいとは言ってないわ」
「……………」
「……………」
無言でお互いの顔を見る。その顔は正に真剣。他人の介入を許さないほどに長い沈黙。最初に沈黙を破ったのはレイだった
「俺の何を探る?」
「わからない。だから調べるの」
「……………」
「……………」
再び長い沈黙。二人はすでに星を観てはいない
レイはこの学院でフィレとニールのことは全く信用していない。そして、恐らくこの先も信用する事はないと考えている
タリアのように自らの目的を話す人には片手で数えられる位にしかいない
因みにナターシャはある程度は離すが一番大事なことは話さず、小事のことしか話そうとしない。しかし、それに今まで救われてることが多く、此方からは手を切ることは出来ないくらいの関係になっている
「お願い、レイ君」
「アンタは――」
「名前」
「クレア・ルージュが言った。タリアはレイ・ラ・アストレスを気にしていると」
「あ、あの子そこまで……。違うのよ?私はただ、過去にあった風魔法を使うのが貴方か確かめたいだけなの。貴方の生い立ちまでは調べないわ」
「過去?」
「ええそう。私は過去に一度だけ――」
「それはどんな奴だ?人柄は?容姿は?性格は?」
レイが一度に聞いてくるので戸惑いで言葉が出ない
「よ、よくは覚えてないわ。その頃は彼も私も子供だったの。今じゃ顔もよく覚えてないの」
「……ん。悪い」
タリアから離れて深呼吸を繰り返す
「タリアをチームに入れるかどうかはニールと相談しないことには何とも言えない」
「貴方自身はどうなの?」
「なにが?」
「だから!貴方は私を入れたいと思うの?」
「魔法も魔力の量も他人より優れているだけで何も変わらない。使い魔か守護獣は?」
「えっと竜…だけど。喚ぶ?」
「いいのか?」
「問題ないもの。カナミア」
タリアが手を広げると魔法陣が浮かび上がる。魔法陣の中心に魔力が集まり、そこから小さな竜が現れる
「……その、竜…」
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