風 ⅩⅠ
なにしてんだろ……と思ってしまった
ⅩⅠ 契約
転送石で送られた場所は学院内にある廃れた建物。
将来危険な職に就く可能性もあるので色々な場所を想定したステージが学院に設置されている。
その内の一つ〈廃墟〉が今回ランダムに選ばれたステージである。
〈廃墟〉の特性は壁や柱の一部が崩れやすく、足場も瓦礫などが転がっており不安定なこと。
「わかれたか」
『上か下か、どちらに進みますか?』
『下に行こう。もし上だったとしても走ればいい』
レイの隣にはフィレはいない。ランダムで飛ばされた四人はステージは一緒だが配置される場所もまたランダムなのである。
ヘタをすれば相手の目の前にでたり、全員一ヶ所に集まる可能性もある。
とりあえず下に向かうことを決めたレイは近くの階段を使って降りる。
「ここは…〈廃墟〉ですか」
周りを見渡して〈廃墟ステージ〉と悟ったフィレは近くにレイがいないことに気づき、どうやって捜そうかと考える。
(上には行けそうですね。下は……一応行けそうですが、足場が悪すぎますね。上から捜しま……!?)
上に行こうと決めたとき後ろから魔力を感じ、身体を素早く反らし、ギリギリで氷魔法が目の前を通り過ぎる。
「後ろががら空きだったよ?」
「御忠告どうもです。ですが少々手荒では?」
「今は敵同士だからね。仕方ないさ」
ちゃんと周りを見ていなかった所為で相手――ティテック・ファイゾンがもう一つの階段からやってくるとはとんだ不意打ちだと自分に悪態をつく。
それに今、フィレは階段の近く。逃げ道は上に行くか下に行くかの二択しかない。
(足場を崩されるよりは、やはり上に行くべきですね)
「貴方とはこの先も敵な気がします!」
そう言葉を放つと同時に、魔力を込める。
「スプラッシュ!」
三つの水球がティテックに向かっていく。
「アイスフィールド!」
周囲に霜がかかったと思ったら水球が氷と化しで重力に従いコンクリートの上に落ちる。
「フィレちゃんは逃げちゃったか。まあ、上にはヴァイルがいるから二人掛かりで行けば勝てるかな」
『レイ様』
『わかってる。上だったな。始まってるみたいだし、行くか』
さっきは走ると行っていたが、特に急ぐそぶりも見せずに上に進路変更する。
「何とか逃げられましたが、アストレスさんは一体どこに……」
「早く来てくれないと挟み撃ちされちまうからな」
「!! ……そうですか。すでにそちらは二人いましたか」
「悪いが、倒させてもらうぜ」
「ニック、行きますよ」
ヴァイル・パルスとその守護獣のゴーレムが前にいる。後ろからはすぐにティテック・ファイゾンが来る。完全に挟み撃ちとなってしまったフィレはさすがに一人では相手にするのは難しいと思いレイが来るまで耐えると決めた。
杖を構え、魔法を唱える。
「顕現せよ。フラッシュエッジ」
煌めく光の剣が姿を現し、その剣を手に取る。少し重いと感じたが、使い慣れていない魔法なので仕方ない、と思いヴァイルに剣先を向ける。
ヴァイルはゴーレムを自分の前に立たせてフィレの様子をうかがう。
「アークシャイン」
光の剣を一閃すると弧を描いた光がゴーレムに向かいぶつかる。
「なに!?」
「これなら!」
ゴーレムがよろめき、崩れ落ちそうになるが何とかこらえた。
フィレはこれを見てチャンスと思い、斬りかかりにいく。しかし、後ろの警戒を忘れていたフィレは足、腹部、肩を鋭い何かが傷つける。
「あ…あぁぁ!」
「さっきも行ったけど、後ろががら空きだよ。フィレちゃんは警戒という気持ちはないのかな?」
「あっ……くっ!」
「どうだい、僕のアイススパイクは。僕の使い魔は優秀だからね」
ティテックのそばには先ほどはいなかったウルフ系の使い魔がいた。
戦況を見ていたギャラリー達はまるで興醒めといった風に、戦いを眺めていた。
「なんだよ。対したことないじゃん」
「未だにもう一人の奴は現れねぇし」
「これは勝負決まったかな?」
それぞれが好き勝手言う中、生徒会の面々と理事長兼学院長のナターシャ・ファブリスは四人がつけている転送石から送られてくる映像を見ている。
「理事長は、どう思いますか?」
「このまま、アイツが好きにさせるとは思えん。何かしらアクションを起こすだろうな」
「アイツ、というのはレイ・ラ・アストレス君の事ですか?」
「……………」
生徒会総会長のタリア・シュリアが尋ねるが返ってくるのは沈黙。
見ていればわかるということなのだろう。
タリアは映し出される映像をここから先、目を逸らさずに見る。
「終わりだね。アイスシュート!」
「運の無さを嘆くんだな。サンダーレイン!」
氷弾と雷撃がフィレに向かって降り注ぐ。
満身創痍となったフィレは回避する術を持たない。この状況下では魔法も間に合わない。
(知りもしない人と一緒にはなりたくないですよ、レイ)
最後に悪あがきでも掻くように光の剣をティテックに向けて一閃。弧を描く光の刃がティテックを襲おうとするがそれを見届ける前に氷弾と雷撃の攻撃により建物が揺れる。
「あいつが来る前に決着はついたな」
「俺はそっちの力も見てみたかったんだけどな」
タッグマッチは文字通り二人で戦わなければならない。どちらかが倒れればその時点で負けは決定。
つまり、ここでフィレが戦えない状態だったらティテックとヴァイルの勝ちということになる。
土煙が晴れるのを黙ってみているとそこには先の攻撃により崩れた穴が空いていた。
二人はその穴の下を確かめるために慎重に近づき下を見る。
「あ~あ、こいつ戦えんのか?」
『おそらく治せる傷だと思いますけど』
「なん…だと!?」
「おいおい、マジかよ」
ティテック達はその穴から距離を取る。下をのぞき込んでそこにいたのはレイ・ラ・アストレスだからである。
レイは二人の姿を一瞬だが確認すると、フィレを片腕で抱きかかえ天井に手のひらを向ける。
「斬り裂け」
魔法の呪文とも言えない言葉を解くと風の刃が辺りの天井に亀裂を入れる
それからすぐに天井が崩れ落ちる。
「風の加護」
レイは今度は両手でフィレを抱きかかえ、風の膜を自分の周囲に張り、落ちてくるコンクリートをそらす。
「「うわあぁぁぁっ!」」
上から二人の叫び声が聞こえ、奇襲は成功したものと思われた。
だが、これでやられるはずがないと思い天井が完全に崩れたのを確認すると風の加護を解く。
瓦礫の山から二人の男の姿が現れた。
「やってくれたな!」
「おい、起きろ。まだ戦えるだろ」
ヴァイルが抗議をするが、レイはそれを無視してフィレの頬をペチペチと叩く。
しかし、反応が無いのを見てため息を一つ吐くと、フィレの唇と自分の唇を重ね合わせる。それは正しくキスと呼ばれるものだった。
「な!?」
「は!?」
レイの奇怪な行動に目を奪われる。
「ん……んん…」
フィレから吐息が漏れる。それと同時にフィレの体の傷が治り始めた。
(あれ、アストレスさん?)
「ん……ふぁ」
少し息苦しいと感じたフィレは段々と意識が覚醒し始める。
(え? な、何故私はアストレスさんとくく、口づけを!?)
『レイ様気づかれたようですよ』
「ん。そうか」
そっと口を離すと顔を真っ赤にした様子のフィレが固まっていた。
レイはフィレを地に着かせるが、両足に力の入らないフィレはレイに寄りかかるような形になる。
「大丈夫か?」
「死にそうです」
顔を真っ赤にしながらレイに返すが、レイはあまり気にした様子が見受けられないのが心に引っかかるが、レイの顔を見て戦いの意識も取り戻した。
「お、おまえは…俺のフィレちゃんによくも! アイススパイク!」
「知るかよ。ウィー」
『お任せを』
ティテックが怒りに任せた氷の弾丸をレイ達、というよりほとんどをレイに向けて放つが、レイはティテックの言葉を一蹴しながらウィーに指示を出す。
ウィーは腕を横に振るうとレイの時と同じ風の刃で氷の弾丸をすべて相殺する。
レイはフィレの正面に立ち名前を呼ぶ。
「フィレ・ミューヘズ」
「は、はい」
レイはフィレに片膝をつき、頭を下げる。
「今だけ自分は貴方の盾となり剣となる騎士となります」
「え、え?」
「勝手ながらに先方契約を結ばせていただきました」
「は、はぁ」
「貴方が望みを自分は叶えます。何なりと御命令を」
レイのいきなりな態度の変化について行けず、先ほどから生返事であるが今自分が望むことは決まっていた。
「あの二人を殺さない程度に痛めつけてください」
「それが貴方のお望みとあらば」
「行くぞ。ウィー」
『お任せを』
ウィーはレイの腕に自分の身体をくっつけ、光りを放って消える。
光が収まるとレイの腕には風で作られた剣が纏われていた。
「我が主――フィレ・ミューヘズの命により、お前たちを倒す」
レイの言葉にティテックとヴァイルだけでなくフィレ自身も戦慄した。
戦闘描写は苦手なんだよね~
大分分かりにくい所が幾つかあったと思います。すみません




