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第22話⑤「パンをくわえて」

遺跡を一望できる高台。


眼下には、

雲海に浮かぶような石造都市。


遠くには《インティ・クイラ》がそびえ、

高地の風が心地よく吹き抜けていた。


ユカたちは石段に腰を下ろし、

チカが持ってきた布包みを広げる。


中から現れたのは――


トウモロコシパン。


こんがり揚がったエンパナーダ。


蒸しジャガイモ。


フレッシュチーズ。


香ばしい干し肉。


そして。


「最後はこれや」


チカが得意げに取り出したのは、

朝、イルヤから受け取った

紫とうもろこしジュースのボトルだった。


「うわぁぁ!

めっちゃ美味しそう!」


ユカの目が一気に輝く。


「いただきまーす!!」


真っ先に手を伸ばしたのは、

蒸しジャガイモ。


それを見たチカが、

にやにやしながら顔を覗き込んだ。


「……あれ?」


「なに?」


「ユカちゃん、

もう“また芋!?”とか言わへんの?」


「ふっふっふ……」


なぜかユカが得意げに胸を張る。


「もう慣れたから大丈夫!」


拳まで握った。


「それにさ、

外で食べるご飯って

三割増しで美味しいって言うでしょ?」


「誰が言ってたんだよ」


レンが即座に突っ込む。


「だから、この芋も――」


ユカはジャガイモを空へ掲げた。


「三割増しでおいしいはずっ!!」


「理屈めちゃくちゃだろ」


「科学的根拠を確認できません」


ピコまで冷静に否定する。


だがチカだけは、

腕を組んでうんうんと頷いた。


「でも、それちょっとわかるわ」


「でしょ!?」


勢いよくジャガイモを頬張る。


「……んんっ!!」


ユカの目が見開かれた。


「おいしい!!

ほんとに三割増しだ!!」


「だから何なんだよ、その基準」


レンが呆れる。


チカが笑い、

ピコも小さく首を振る。


眼下には雲海。


頭上には青空。


古代都市を眺めながら、

四人の笑い声が高台に響いた。


そのとき。


ズゥゥン……。


足元が揺れた。


「……え?」


ユカの笑顔が消える。


石段の隙間から、

細かな砂がぱらぱらと落ちた。


ピコの目が光る。


「地殻振動を感知しました」


レンが立ち上がる。


「さっき調査員が言ってた地震か……?」


チカも周囲を見回した。


「でも今の……ちょっと変やな」


再び――


ズンッ。


今度は、

先ほどよりもはっきりとした揺れ。


遠くで鳥たちが一斉に飛び立つ。


そして。


遺跡の奥から――


「た、助けてくれぇぇぇ!!」


「化け物だぁぁぁ!!」


悲鳴が響いた。


「……っ!!」


ユカが反射的に立ち上がる。


「おい、ユカ!」


レンが呼び止めるより早い。


ユカは地面を蹴っていた。


考えるより先に。


助けを求める声が聞こえた方向へ。


ただ――


口には、

まだトウモロコシパンをくわえたままだった。


「んーーーっ!!」


「ちょっ!?

ユカちゃん!!」


チカも慌てて立ち上がる。


「パンくわえたまま走ったら、

行儀悪いやろーー!!」


「そこかよ!?」


レンが叫ぶ。


「ツッコミの優先順位が独特です」


ピコも即座に飛び上がる。


「ほら、追うで!!」


チカが駆け出す。


レンとピコも続いた。


石段を駆け下りる四人。


その先。


さっきまで穏やかだった

パチャママ遺跡の奥から――


黒い煙が、

空へ向かって立ち上がり始めていた。


《第22話・終わり》


次回予告


「パチャママでの旅も、

ついにおしまい――


……のはずだったんだけど。


チカとの別れは寂しいし、


イルヤさんは

なんだか恋愛イベント起こしてるし、


お弁当は芋だらけだしで、


最後まで大騒ぎ!


でも――


アマルさんが告げたのは、


“世界が更新される”


という不吉な予言。


そしてレンから、


まさかの報告まで――!?


次回、


『フラグメンツ・オブ・メリオラ

〜ユカの旅〜』


最終話

『更新される世界』


旅の終わりは――


新しい物語の始まり。」



※作者の活動報告に各話の設定や裏話などのコメントを書いています。

https://syosetu.com/userblog/list/


※シリーズ第一弾『フラグメンツ・オブ・トゥルース〜最後の投擲』はこちら。

https://ncode.syosetu.com/n8279mq/


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