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最終話①「似すぎた者同士」

遺跡の最奥――

山をくり抜いて造られた神殿の祭壇。


ユカが駆けつけた瞬間、

目の前には地獄のような光景が広がっていた。


「うわあああっ!!」


「逃げろーっ!!」


調査員たちが悲鳴を上げ、

四方へ逃げ惑っている。


その中心。


祭壇の上では、

空間そのものがぐにゃりと歪んでいた。


黒紫の亀裂。


そこから禍々しい瘴気が噴き出し、

何かが這い出してくる。


ギシャァァァァッ!!


巨大な翼を持つコンドル。


鋭い牙を剥くジャガー。


無数の目を持つ巨大な蛇。


どれもパチャママ神話に登場する

聖獣の面影を残している。


だが、その姿は異様に歪み、

理性を失ったように暴れ回っていた。


「もぐもぐ……っ、

な、なにこれぇ!?」


口いっぱいにトウモロコシパンを

詰め込んだまま、

ユカが目を見開く。


レンが思わず振り返った。


「お前、まだ食ってたのかよ!?」


ピコの目が高速で点滅する。


「仮想層と現実層の境界が、

急速に曖昧化しています!」


周囲に無数の解析データが展開される。


「仮想層のデータが、

現実世界で実体化しています。

いわば――“データモンスター”です!」


「コンドル……ジャガー……蛇……」


チカが怪物たちを見上げる。


いつもの笑顔は消えていた。


「パチャママ神話の守護獣や……

なんで、こんな姿に……」


その横で、

ユカがようやくパンを飲み込んだ。


そして、表情を引き締める。


「レン!チカ!

調査員さんたちを避難させて!」


「おい、ユカ!

お前はどうすんだよ!?」


レンの問いに、

ユカはニッと笑った。


「決まってるでしょ――」


左手を掲げる。


セラの指輪が光を宿す。


「こいつらを、こらしめる!」


言い終わるより早く、

ユカは地面を蹴っていた。


「突っ込むの早すぎだろ!!」


背後からレンのツッコミが飛ぶ。


「リアライズ――!!」


セラの指輪が眩い光を放つ。


「パラレル・アーカイブ――

レーヴァテイン・フレアノート!!」


紅蓮の炎が、

ユカの右腕を包み込む。


ゴォォォォッ!!


燃え上がる炎が一点へ収束し、

巨大な剣の形を作り出す。


炎剣《レーヴァテイン》。


ユカはその柄を握り締め、

真正面から怪物の群れへ飛び込んだ。


「はああああっ!!」


一閃。


巨大な炎柱が神殿を貫く。


ゴォォォォォッ!!


コンドル型が吹き飛び、

ジャガー型が炎に飲まれ、

巨大蛇が床へ叩きつけられる。


ギャアアアアアッ!!


「今だ!

こっちだ!!早く逃げろ!」


レンが叫び、

調査員たちを出口へ誘導する。


「た、助かった……!」


「止まるな!

そのまま外まで走れ!」


チカも駆け回りながら、

取り残された調査員を出口へ押し出していく。


だが――


ふと、振り返った。


炎と瘴気が渦巻く神殿。


その中心で、

ユカがレーヴァテインを振るっている。


一人で何体もの怪物を相手にしながら、

迷うことなく前へ出続ける。


チカの瞳が大きく揺れた。


「……あれが、

セラの指輪の力……」


驚き。


そして、その直後。


別の感情が、

むくむくと顔を出す。


純粋な好奇心。


チカの瞳が、

見る見るうちに輝き始めた。


「……めっちゃ気になる」


その声を聞いたレンが、

嫌な予感に顔をしかめる。


「おい」


チカが振り向く。


「なん?」


「変な気、起こすなよ」


「…………」


チカはユカを見る。


炎を見る。


怪物を見る。


もう一度、レンを見る。


そして満面の笑み。


「レン君、ごめん!」


「は?」


「あとお願い!!」


「ちょ――」


言い終わる前に、

チカは神殿へ向かって駆け出していた。


「お、おい!

勝手に行くな!!」


レンの制止など、

当然のように届かない。


チカは一直線に、

ユカのいる戦場へ飛び込んでいく。


レンは頭を抱えた。


「……二人とも自由すぎだろ」


炎が舞う。


瘴気が渦巻く。


その中へ、

何の迷いもなく飛び込んでいくチカの背中を見つめる。


レンは呆れたように息を吐き――


ふっと苦笑した。


「……いや」


ユカも。


チカも。


面白そうだと思えば、

危険より先に身体が動く。


止められても、

たぶん止まらない。


「似たもの……」


少し考えて、

言い直す。


「いや、似すぎた者同士だから

仕方ないってことか……」


そう呟くと、

レンは再び調査員たちへ向き直った。


「ほら!まだ残ってる!

全員、神殿の外へ!!」


背後では――


炎と黄金の光が、

今まさに交わろうとしていた。



※作者の活動報告に各話の設定や裏話などのコメントを書いています。

https://syosetu.com/userblog/list/


※シリーズ第一弾『フラグメンツ・オブ・トゥルース〜最後の投擲』はこちら。

https://ncode.syosetu.com/n8279mq/


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