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第21話⑤「ユカとチカ」

夜――。


チカの部屋。


石造りの壁を、

小さなランプの灯りが照らしている。


大きく開け放たれた窓からは、

高地の澄んだ夜風。


白いカーテンが、

ゆっくりと揺れていた。


ベッドの上では、

ユカとチカが並んで寝転んでいる。


窓の向こうには、

手を伸ばせば届きそうな満天の星空。


とっくに深夜だというのに、

二人のおしゃべりは終わる気配がなかった。


「……ほんでな」


「うんうん」


チカは天井を見上げながら、

楽しそうに笑った。


「昔、イルヤと二人で

パチンコ作ろうってなったんよ」


「へぇ〜」


「せやけど、

ちょうどええ玉がなくてな」


「うん」


「イルヤが、

“どうする?”って困っとって」


「それで?」


チカが得意げに胸を張る。


「そこで天才少女チカちゃん、

ひらめきました」


ユカの目が細くなる。


「嫌な予感しかしない」


「加工中のカマイ・スンク使えば

ええやんって」


「ダメに決まってるでしょ!?」


即答だった。


「ほんまにな〜」


「分かってるならやらないでよ!」


チカはケラケラ笑う。


「でも、めっちゃ飛んだで?

木の柵ぶち抜いて、

そのままパパの作業場まで

転がってってん」


「被害拡大してる!?」


「ほんでな」


チカは低い声を作る。


「後ろから――

“チカぁ……”」


「怖っ……!」


「振り向いたら、

パパが仁王立ちしとってな」


チカが両手を広げる。


「もう大魔神や。

あれはほんまに死んだと思ったわ」


「自業自得だよ!」


二人の笑い声が、

部屋いっぱいに広がった。


笑いが落ち着いたところで、

ユカは横にいるチカを見る。


「でもさ」


「ん?」


「チカとイルヤさんって、

ほんと仲良しなんだね」


「はぁ?」


チカの顔が、

一瞬で不機嫌になる。


「どこがやねん」


「だって、昔話に

毎回イルヤさん出てくるじゃん」


「たまたまや!」


「今日だって、

ずっと楽しそうだったし」


「気のせい気のせい」


チカはぷいっと顔を背ける。


「ていうか、あいつな。

人の黒歴史ベラベラ喋るし」


「でも褒めてたじゃん」


「……え?」


ユカがにやっとする。


「《パチャの指輪》を

一族で一番うまく使えるのは

チカだって」


チカの動きが止まった。


「……あ、あれは」


頬が、

ほんのり赤くなっていく。


「そのあと笑い取るための

フリやろ」


「へぇ〜?」


ユカの顔が、

さらに楽しそうになる。


「な、なんやねん、その顔」


「別に〜」


「絶対なんか企んどるやろ」


「じゃあ聞くけどさ」


ユカがチカの顔を覗き込む。


「チカって、

イルヤさんのこと好きでしょ?」


チカが固まった。


「…………は?」


「図星?」


「はぁぁぁぁ!?」


勢いよく飛び起きる。


「ちゃうちゃうちゃう!!

なんでそうなんねん!?」


「えー。絶対そうだよ」


「ちゃうって!!

そんなんちゃうし!」


顔を真っ赤にしながら、

必死に手を振る。


「い、いやっ!

別に嫌いちゃうけどな!?

嫌いちゃうけど、それとこれとは――」


自分で言って、

さらに赤くなる。


「いや違っ……!

◎△$♪×¥●&%#!!」


「ふふっ」


ユカが布団の上で笑う。


「図星だ〜」


「ぐぬぬ……!」


チカは悔しそうに唸る。


その顔が――

突然、にやりと変わった。


「……ほな」


「え?」


「ユカちゃんは?」


嫌な予感。


「レン君のこと、

どう思っとるん?」


今度はユカが固まった。


「……え?」


「え?」


「えええっ!?」


顔が一気に赤くなる。


「そ、そんなの……!

べ、別に……!」


「ほうほう」


チカが楽しそうに身を乗り出す。


「レンとは、

たまたま一緒に旅することになっただけで!」


「ふ〜ん」


「好きとか!

そういうんじゃなくて!」


「ほな、嫌いなん?」


「嫌いじゃなくて、すき――」


ユカが止まる。


チカの口元が上がった。


「……今、“すき”言うたな?」


「ちがーーう!!」


布団をばたばた叩く。


「人として!

人として好きって意味で!

恋愛感情とかじゃなくて!

仲間で!友達で!それから――」


完全に混乱する。


「◎△$♪×¥●&%#!!」


「顔真っ赤やん」


「なってない!」


「なっとるなっとる」


「なってないってば!」


「図星や〜♪」


「うぅ……!」


しばらく睨み合い――。


先にチカが吹き出した。


「あはははは!」


「もう……!」


ユカも我慢できずに笑い出す。


「ふふっ……あはは!」


二人はしばらく、

ベッドの上で笑い続けた。


やがて笑い疲れ、

並んで枕へ頭を沈める。


窓の向こうには、

どこまでも続く星空。


チカがぽつりと言った。


「……こういう時間、

ずっと続けばええのにな」


さっきまでのふざけた声とは、

少しだけ違っていた。


ユカは星を見上げたまま答える。


「……うん」


チカが小さく笑う。


「……さて!」


勢いよく布団を頭までかぶった。


「明日は朝早いし、

そろそろ寝よか」


「うん」


「おやすみ、ユカちゃん」


「おやすみ、チカ」


部屋の灯りが消える。


そのとき――


夜空を、

ひとすじの流れ星が駆け抜けた。


まるで、


出会ったばかりの二人の未来を、

そっと祝福するように。


《第21話・終わり》


次回予告


「パチャママ名物の芋に

ビビっとるユカちゃんを連れて、

次に向かうんは――雲の上の天空遺跡や!


ぽよ助で爆走!

絶景!

古代文明の謎!


……って、

めっちゃテンション上がっとったんやけど。


突然、遺跡で地震発生!


さらに現れた――

謎の“化け物”!?


次回、

『フラグメンツ・オブ・メリオラ

〜チカの……いやいや!ユカの旅〜』


第22話

『雲の上の遺跡で』


ほな、覚悟してついてきぃ!」



※作者の活動報告に各話の設定や裏話などのコメントを書いています。

https://syosetu.com/userblog/list/


※シリーズ第一弾『フラグメンツ・オブ・トゥルース〜最後の投擲』はこちら。

https://ncode.syosetu.com/n8279mq/



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