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君の感情(プロンプト)を、ぼくはまだ知らない  作者: 飛鳥創


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8/10

■ 第8話:雨を切り裂く疾走と、青い光の叫び

お越しいただきありがとうございます!

飛鳥創(So Asuka)と申します。


普段はITやAI関連の本なども書いているのですが、今回は「10年間の幼馴染。近すぎて触れられない10年の距離を、画面の中の青いAIが変えていく——。」という恋愛小説に挑戦してみました。


どうぞ気軽に、肩の力を抜いて楽しんでいってください!

 土砂降りの雨が、視界を真っ白に染めていた。


 甚平も傘もかなぐり捨て、僕は濡れそぼった白Tシャツ一枚で、渚ヶ丘の長い坂道を駆け下りていた。

 水たまりを蹴り上げるたびに、冷たい泥水が足元を跳ねる。叩きつける雨が容赦なく顔を打ち、呼吸が浅く乱れて肺が焼けつくように痛い。


「はぁ……っ! はぁ……っ! 葵……っ!」


 ぐらりと足元が滑り、僕は水たまりの中で派手に転倒した。

 ずざざっとアスファルトを滑り、右膝を激しくすりむく。激痛が走り、赤い血が雨水に溶けて流れていく。


(痛い……息が苦しい……)


 泥だらけの手でアスファルトを踏みしめ、僕はふっと笑った。

 スマートな男なら、こんな大雨の中に飛び出したりしない。転んで泥だらけになって血を流したりしない。

 でも——これが僕だ。格好悪くて、不器用で、泥臭い……桐生ハルという人間なんだ。


「へへ……っ、立ち上がるぞ……!」


 膝の血を気にせず、僕は再び雨の中へ跳び出した。


 ポケットの中で、スマホがジジジと悲鳴のような振動を続けている。

チラリと画面を見ると、画面の中のリリのグラフィックは、もう頭と胸のあたりしか残っていなかった。腰から下が砂のように崩れ、周囲にはエラーの文字コードが滝のように流れ落ちている。


『ハル……様……。残り時間……あと3分……18時発の電車が……来ます……』

「リリ! 喋るな、もうメモリを使うな!」

『いいえ……ハル様の心拍数を最後までカウントするのが……私の……使命です……』


 リリのライトブルーの瞳から、光の粒が涙となって零れ続ける。

 画面の中で透明になっていくリリが、最後の力を振り絞るように笑った。


『ハル……私、あなたの恋を応援できて……すごく幸せでした……』

「リリ……っ!」


 坂道を駆け抜け、駅前の踏切を飛び越える。

 カンカンカンカンと鳴り響く警報音。遠くから近づいてくる列車のヘッドライト。


 改札を強行突破し、階段を二段飛ばしで駆け上がる。

 ホームに滑り込んできた緑色の江ノ電。発車を告げる甲高いベルの音が、雨音を切り裂いてホームに響き渡っていた。


 プシューッと、ドアが閉まりかける音。


「葵ーーーーーーーッ!!」


 喉がちぎれんばかりの叫び。


 ホームの最前列、大きな黒いキャリーケースを持ち、濡れたボブカットの髪を小さく揺らして乗車口に足をかけようとしていた少女が——ハッと弾かれたように振り返った。


 夕立の雨の向こう。

 泥だらけで、膝から血を流し、雨に濡れそぼった僕の姿。


「ハル……!?」


 葵の丸い瞳が、信じられないものを見るように大きく見開かれた。


 ポケットの中で、リリのカウントダウンが【00:00:59】を切った——。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


「ちょっと面白いな」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

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次回更新もお楽しみに!


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