第19話:入学式
マリオンたち四人で並んで女子寄宿舎を出ると、男子寄宿舎前では年少組男子が待って居た。
「よっす!」
「想像通り、その制服は似合いますね。大叔母上もこうだったのかな」
「おはようございます」
「マリオン、よく似合っているぞ」
マリオンはいつもの笑顔で応える。
「おはよう、みんな!」
年少組八人で固まってクラス割りが貼ってあるという掲示板に向かう。
「どんなクラス割だろうな」
「グランツは成績順。基本的には入試の結果が反映されるはずですよ」
「みんな一緒だったら嬉しいけど、それは難しいでしょうね」
「年長組も、自分たちのクラス割を先に確認したら合流するって言ってましたよ」
マリオンたちはヒルデガルトの弟子だ。一年間教えを受けたマリオンたちは、魔術の成績だけなら間違いなくトップクラス。マリオンがやや劣るくらいだ。
そしてグランツには教養科目もある。こちらは結構学力がばらけているので、全員一緒は無理だろう、というのが共通の見解だった。
「えーと、マリオン、マリオン……あ、あった!」
マリオンは自分の名前を見つけた後、皆が一緒かどうか名前を探し出していく。
「私の名前もあったわ」
「みっけー」
「お、俺も居るな」
皆が同じクラスの位置で次々に自分の名前を見つけていく。
結局、年少組全員が同じクラスだった。
「うっそだろ?」
一番教養の学力が低いスウェードが呟いた。彼は人間力極振りなので、交友関係は広いが学力や体力は他より劣る。
マリオンもそれなりに高い教養を修めているが、本家のスパルタ教育を受けているアランや、王族教育を受けているマーセル王子に匹敵するか、と言われると首をひねるところだ。
(……これもお父様かしら)
職権乱用乱発だとしたら、ヒルデガルトによる折檻をお願いしなければならないだろう、とマリオンは胸に誓った。
次の休日にヒルデガルトに報告すれば、確実に膝を詰めるはずだ。
(それにしても、やっぱり精霊眼って目立つなぁ)
マリオンは女子寄宿舎に入ってからこうして名前を探している間まで、ずっと周囲から奇異の目を注がれてきた、と感じている。
周囲の生徒がマリオンの顔を見る――特に男子は興味津々だ。
その視線の意味を、マリオンは理解していない。
マリオンはこれからの学生生活に不安を感じ、大きなため息を吐いた。
レナが暢気に尋ねた。
「どうしたの? せっかく年少組全員一緒だったのに、ため息なんて吐いちゃって」
マリオンが力のない微笑で応える。
「いえ、やはり精霊眼は目立つな、と思って」
レナがニヤリと笑った。
「それなら安心できる要素が一つあるよ?」
マリオンはきょとんとして聞き返す。
「安心? どういうこと?」
レナがクラス割の中から、一人の名前を指さした。
「トビアス・エスターライヒ。精霊眼の男の子が同じクラスだもの。あまり目立たなくなるよ」
(精霊眼保持者が同じクラス?!)
ララが「随分珍しいわね。特等級ほどではなくても、精霊眼保持者だってレアには違いないというのに」と口にする。
人口三十万人のレブナント王国でも百人程度しか居ない精霊眼保持者だ。
それがグランツの同級生というのは相当にレアな事態と言える。
マリオンが驚いていると、年長組が合流してきた。
オリヴァー王子がマリオンに尋ねてくる。
「クラス分けはどうだったのですか?」
(あ、そうか周りに人がいるから猫被りモードなのね)
「年少組は、みなさま同じクラスでしたわ」
マリオンも同じく、貴族令嬢モードで応えた。
オリヴァー王子は頷いてから口を開いた。
「それは重畳です。それと、北方国家群からの留学生が同じクラスになっているはずですが、確認できましたか? 同じ精霊眼だそうですが。確か――」
オリヴァー王子の声に被るように、高めのテノールが響いた。
「それは私の事ですか?」
マリオンが振り向くと、シルバーブロンドの中に翡翠の瞳を湛えた少年が立っていた。
「トビアス・エスターライヒです。あなたがもう一人の精霊眼ですね。これから三年間、よろしくお願いします」
マリオンが初めて見る、自分とヒルデガルト以外の、しかも両目が精霊眼の人間である。
その双眸は無機質で非人間的な輝きで彩られ、感情を読み取ることが難しい。
マリオンはおずおずと微笑で応える。
「……はじめまして、マリオン・フォン・ファルケンシュタインですわ。よろしくお願いします」
サイモンがオリヴァー王子に疑問を投げかけた。
「なぜ彼が同じクラスに?」
「北方国家――留学元のヴィークスから要請を請けたんですよ。どうせなら、同じクラスにした方が二人の精神的な負担が少ないのではないか、と。それを父上と母上が承諾した形になります」
マリオンはギース議員が話していたことを思い出していた――”北方国家では迫害に近いような扱いを受けている”と言っていた。彼も今まで、そうだったのだろか。
マリオンは思い切って尋ねてみることにした。
「トビアス様は、北方国家ではお辛い目に遭っていらっしゃったのですか?」
トビアスはにっこりと笑って返した。
「トビアス、で結構ですよファルケンシュタイン侯爵令嬢。私は平民です。貴族に敬称を付けて頂く身分ではありません――ヴィークスは比較的迫害の少ない地域でしたから、大したことはありませんでしたよ」
「あら、では私の事もマリオンで構わなくてよ? 敬称は付けても付けなくても構わないけれど、平民であれば付けた方が無難でしょうね」
マリオンはトビアスのこれまでについて思いを馳せていた。
レブナントですら自分はプレッシャーを受けていた。
ヴィークスではレブナント以上に目を引いていた。
彼が今まで受けて来たものはおそらく、自分の比ではないだろう。
それを”大したことがない”と言える程、北方国家ではひどい扱いを受けるとでも言うのだろうか。
アミンがザフィーアの皆に声をかけた。
「そろそろ教室に散りましょう。遅れますよ」
マリオンたちは頷いて、それぞれの教室に足を向けた。
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グランツは自由席だ。どこに座っても良い。
”じゃあどこに座ろうか”という話になったのだが――
「母上からの言伝だ。トビアスをマリオンの傍に置いてやってくれ、とな。なるだけフォローをして欲しいと。これもヴィークスからの要請だ」
そのマーセル王子の一言も踏まえ、席は左後方隅、と決まった。
なるだけ注目を集めないよう、最後列の隅に行こう、ということだ。
精霊眼であるマリオンやトビアスを見たければ、ほとんどの生徒は振り返る必要がある。
授業中に盗み見ることは目立つし難しいだろう。
前列がトビアス、スウェード、アラン。
中列がヴァルター、レナ、ララ。
後列がマーセル王子、マリオン、サンドラだ。
マーセル王子が隅なのは、教室の様子を一望して睨みを利かせる為だと言っていた。
盗み見る奴がいても第二王子に睨み付けられれば、引っ込まざるを得まい、という思惑だ。
自由席ではあるが、最初に陣取った場所がそれ以降もその派閥の席になりがちだ。
特に、第二王子の決めた席に座るような度胸のある生徒も居ない。
マリオンたちは一年間、この席に座ることになるだろう。
「ヴァルターをマリオン様の傍に置くのを、よく許したわね」
レナが不思議な顔でマーセル王子を眺めつつ言った。
マーセル王子は何かを考える目で「まぁ、離せるなら離しておきたかったのは事実だがな」と口にした。
(つまり、離せない理由があったのかな?)
スウェードが、さっそく得意の会話術でトビアスと打ち解けていた。
「で、トビアスはどこから通ってるんだ? 寄宿じゃないんだろう?」
「いえ、寄宿ですよウォルフ伯爵令息。少し荷物の搬入に手間取っていたのですが、今日中には寄宿舎に入ると思います」
「俺の事はスウェードと呼び捨ててくれ。敬称を付けられると背中がむず痒くなるんだ。貴族だ平民だ、なんて俺は気にしないからよ」
――八時半。そろそろ入学式の説明をする教師がやってくる時間だ。
隅に座っているとはいえ、二人の精霊眼保持者はやはり人目を引いた。
教室に入ってきた生徒たちに、最初にぎょっとしたように見られてしまうのだ。だがそれが終わると、次第に視線に傾向が現れた。
男子の視線のほとんどはマリオンに集まっていた。次いでサンドラ、時折ララやレナも観られている。
女子の視線はトビアス中心ではあるものの、他の男子にも比較的均等に注がれていた。
(やっぱり、ザフィーアの事は有名なのかな)
マリオンがそんなことを考えていると教師が入室してきて、大きく手を叩いた。
「これから入学式の為に講堂に移動する。だがその前に伝えておくことがある――北方国家群、ヴィークス王国からの留学生がこのクラスに所属する。外交問題にならないよう、仲良くやってほしい。以上、理解した物から講堂に移動してくれ。入学式に席はない。全学年混在だから、自由に移動するといい」
言い終わった教師は教室を後にした。
生徒の視線がトビアスに集まった後、続々と教室を後にしていく。
片目の精霊眼が、ヒルデガルトの娘であるマリオンなのは有名だ。
ならば今まで聞いたことがない、両目が精霊眼のトビアスが留学生だろう、とあたりをつけているのだ。
アランが号令をかける。
「さぁ、我々も移動しましょう」
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トビアスを連れたザフィーア年少組が、年長組と途中で合流し、学院の講堂に入っていく。
やはり二人の精霊眼保持者はよく目立った。全学年生徒たちの視線が集まっていた。
(居心地悪いなぁ)
女子生徒の視線はトビアスを中心に、オリヴァー王子、マーセル王子、アラン、サイモンあたりに割と分散していた。
一方で男子生徒の視線はほぼ、マリオンに集まっていた。時折サンドラやレナ、ララもチラチラと見られていた。
この傾向は教室の時と変わらなかった。
九時になり、壇上に教師が現れ、新入生に対していくつかの注意事項や訓示を与えた――ノルベルトは最高責任者ではあるが近衛騎士なので、こういったセレモニーでも姿を現すことはない。
二年生や三年生に対しては、上級生である自覚を持つように、と訓戒を示した。
それが終わると壇上から「各自、教室に戻るように!」と声が上がり、生徒たちの波が講堂から流出していった。
拍子抜けしたようにマリオンが呟いた。
「……これで終わりなんですか? なんだか、教室で済ませられそうな内容でしたわね」
サイモンが頷いて応える。
「入学式は学年を超えた生徒間のお披露目なんだ。新入生の誰が上級生の、どの派閥に属するのか、それを示す意味が強い。グランツは貴族社会の縮図――派閥社会なんだよ」
つまり、マリオンたち年少組とトビアスは、オリヴァー王子の派閥だ、と周囲に認識されたことになるのか。
マリオンがそう問うと、オリヴァー王子が頷いて応えた。
「そうなりますね。私は上級生とはつるみませんし、同級生もザフィーア年長組の四人でしか組みません。同様に、私がザフィーアしか派閥に入れていないことが周囲に知られたでしょう――トビアスは、まぁついでですね。私の保護下にある、という意味に取られるでしょう」
レナが突っ込みを入れる。
「第一王子の派閥が同級生四人しか居ない、というのは少し問題があるのではなくて? まるで人望がないように見えますわよ?」
ララがそれをフォローした。
「あら、第一王子オリヴァー殿下と騎士団長の息子アレックス様、北方守護指揮官ワグナー伯爵の嫡男アミン様、そしてなによりファルケンシュタイン侯爵の嫡男サイモン様が属した派閥よ? 量は少なくとも質は飛び切り高いわ」
サンドラがそれに同意した。
「特に、サイモン様の存在が大きいですわね。レブナント王国の軍事力、その半分を占めるとすら言われているヒルデガルト先生のご長男ですもの。サイモン様が味方しているだけで、他の貴族子女など十把一絡げですわ」
オリヴァー王子が頷いて補足する。
「そのうえ年少組には第二王子であるマーセル、ファルケンシュタイン公爵家嫡男のアラン、北方守護指揮官ワグナー伯爵令嬢のララ、東方守護指揮官ウォルフ伯爵嫡男のスウェードと令嬢のレナ、南方守護指揮官クライン伯爵嫡男のヴァルター、魔術騎士団長ブランデンブルク伯爵令嬢のサンドラ、そして極めつけにファルケンシュタイン侯爵令嬢のマリオンがいる。年少組が加わってくれたおかげで、質を維持したまま量も増えた。この学院でこれ以上の派閥はありませんよ」
サイモンが苦笑を浮かべた。
「俺やマリオンに母上のような荒唐無稽な力を求められても困ってしまうのだがな。我々は普通の人間だ。”空を駆け山を消し飛ばす魔術師”にはなれない」
アミンが加わってきた。
「だがマリオン様はヒルデガルト先生と同じく片目の精霊眼だ。期待は大きいでしょう――これから、大変ですよ?」
マリオンは乾いた笑いを上げてそれに応えた。
「サイ兄様の言う通り、私たちは普通の人間ですので、大したことは出来ませんわ。過大な期待をされても応えようがありません」
トビアスが興味深そうに尋ねて来た。
「なんですか? その”空を駆け山を消し飛ばす魔術師”というのは。ヒルデガルト様にはそのような異名があるのですか?」
北方国家群にはあまりヒルデガルトの逸話が伝わっていない。レブナントとの国交が最も浅い地域だからだ。一般市民には噂話が広まっていないのだ。
アランが春の陽射しのような笑顔でトビアスに応えた。
「そういう逸話があるんですよ。実際に見た人間もいるという噂ですが、名乗り出た人間は居ません。ヒルデガルト先生にはそう言った、人間離れした逸話が豊富なんです」
マーセル王子が小さく手を叩いた。
「――さぁ、そろそろ出入口も空き始めた。今日は入学式だけで学院は終わりだ。とっとと教室に戻って帰る準備をしよう」
全員がそれに応じて声を上げ、足を講堂の外に向けた。
****
オリヴァー王子は王宮に戻り、残りは寄宿舎へ戻った。
トビアスも「荷物はそろっていませんが、部屋はありますので」と言って寄宿舎の中へ消えていった。午後には到着する予定と告げていた。
マリオンとサンドラも部屋に戻る。部屋の時計を見るとまだ十時を回っていない。
サンドラから「部屋着に着替えるのはお昼が終わってからの方がいいわよ」と忠告され、マリオンは着替えずに椅子に腰を下ろした。
レナとララが紅茶ポットを持って部屋に遊びに来て、マリオンたちもクローゼットからカップを取り出してお茶の時間、ということになった。
ローテーブルの周囲にそれぞれが制服姿で腰を下ろす。
マリオンはカップを傾けて紅茶の香りを楽しんだ後、息を吐いた。
「覚悟はしてたつもりだったけど、やっぱり精霊眼は目立つわね。あんなに視線を集めるものだとは思わなかったわ」
レナとララ、サンドラは床に頽れていた。
勢いよく起き上がったレナが「それ、本気で言ってるのよね?!」とマリオンに確認を取った。
マリオンは勢いに押されつつ、頷いた。
「だって、注目はされていたじゃない。トビアスだって注目されていたわ」
ゆるゆると起き上がったララが頭を抱えつつ「あなたのポンコツ、まだ直ってなかったのね」とぼやいた。
マリオンが小首を傾げていると、起き上がってきたサンドラがマリオンの両肩に手を置いて、言い含めるように確認を取る。
「視線以外に気づいたことはない? 誰から視線を受けていたとか」
「そう言われると、男子生徒からの視線が多かったと思うけど……女子生徒はトビアス以外の男子たちも見ているようだったわね」
「同じような視線に覚えはない? 例えばザフィーアの男子からの視線よ?」
マリオンは首を傾げながら思い出す。
「そうね。確かにどこか似たような視線だった気がするわね」
「ザフィーアの男子はどんな視線をあなたに送っていたの?」
「……異性としての好意を含んだ視線だ、という話だったわよね? それは散々言い含められたから覚えてるわよ?」
「それに似た視線ということはどういうこと?!」
マリオンはしばらく考えてから、口を開いた。
「…………まさかぁ」
「「「ここまで言い含めてもまだいうのかこのポンコツ!!」」」
「だって、全校生徒男子の大半から飛んできたのよ?! いくらなんでも多すぎない?! それに、女性としての魅力ならサニーの方がずっと上よ?! レナやララだって魅力的な女子じゃない!」
サンドラは長身で出るところは出て引っ込むところは引っ込む、肉付きが良く実に女性の理想的体型だ。
父親譲りで美しい顔立ちもしている。十三歳の今はそれに磨きがかかっている。
レナやララも、体型こそサンドラに一歩譲るが標準的な体型で、親譲りの整った顔立ちを持った美少女だ。
一方のマリオンは相変わらず低身長で慎ましい体型のまま。そのうえ精霊眼という異物を持っている。
女性的魅力、という点においては三人に叶わないだろう。それがマリオンの認識だった。
ララが大きくため息を吐いた後、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「入学式で見渡したところ、二年生や三年生に飛び抜けた美貌の女子生徒、というのは居ないわ。一年生の中ではサニーが頭一つ抜けている感じはあるけれど、他は大差がない。私やレナは上位陣に入るかしらね。全体を見渡してマリーを超える女性は居ないわ――ヒルデガルト先生の時はクラウディア様という女王が居たけれど、今年度にそういった圧倒的な方は居ないの。クラウディア様と並び称されたヒルデガルト先生の若い頃にそっくりと言われるあなたが、そういう意味で注目を集めるのは当然なのよ」
マリオンはまだ納得いってないように反論をする。
「でも私、精霊眼よ? そりゃあ精霊眼になる前なら”それくらい、お母様の娘だから当たり前ね!”くらいは言えたかもしれないけど、今はとても言い切れないわ」
レナが疲れたように紅茶を含みながら言葉を返した。
「この国の人間はヒルデガルト先生で精霊眼の存在に慣れてしまっているのよ。”ちょっと変わった瞳だな”くらいにしか思われないわ。大したハンデにならないのよ。そしてあなたの持つ雰囲気は可憐なもの。その雰囲気とその体型はよく合うのよ。だから貧相な体型も、大きなハンデにはならないの」
(貧相って断言された……)
マリオンが一番気にしている事である。これでも一人の乙女だ。サンドラの半分でいいから、女性的な体型になりたかった、と常々願っているのだ。
マリオンは一人、テーブルに潰れてその衝撃を受け止めていた。
そんなマリオンにサンドラが抱き着いた。
「大丈夫よ! 抱き心地は充分あるから! これから三年間、おはようからおやすみまでを通り越しておやすみ中もずっと一緒よ!」
「しまった! そうだ忘れてた! サニー! その悪癖はいい加減直して頂戴! 私の安眠が三年間遠のくわ!」
レナとララは他人事のようにカップを傾けている。
「毎日続けていればそのうち慣れるわよ」
「今年度も夏季休暇はあるらしいから、その間は解放されるわよ?」
「ちょっと! お茶を飲んでないで助けて! これ自力じゃ抜けられないのよ!」
「あらいいじゃない! お昼までマリー枕を堪能するわ!」
「しなくていいから! 制服が皺になるわ!」
「大丈夫、その程度で皺になるようなやわな服じゃないわ。レブナントの技術力の粋を集めた制服よ?」
ララからから冷静な指摘が入った。
何故学生の制服に技術力の粋を集めるのかは分からないが、昔から高性能な衣服として有名である。
近年は交流の増えた東方国家や西方国家、さらには北方国家の技術も取り込み始め、さらに質が上がった。
こうしてサンドラの宣言通り、マリオンはお昼になるまでサンドラの魔手から逃れることなく時間が過ぎていった。




