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第11話:温かい家庭

 私の振り下ろす金色の剣は、見事にシュネーヴァイス山脈を抉り取っていた。


 幅数百メートル以上の道が、山脈の南北を貫通している。


(んー、自分で言っておきながらほんとにできちゃうとは……やはり古代魔法、反則では?)



 レブナント軍から進撃の合図であるラッパが吹き鳴らされ、南北守護軍から構成される二万の兵士たちが次々と進軍していく。今は十一月。もう間もなく、この一帯は雪に閉ざされる。それまでに急いで山脈を通過しなければならない。


 今回の軍の総司令を務める、ブラウンシュヴァイク辺境伯が私の傍にやってきた。


「ファルケンシュタイン侯爵の魔法が、ここまで凄まじいものだとはな。話には聞いていたが、この目で見ても信じられん」


 私は微笑で応える。


「私も、ここまで巧くいくとは思っていませんでした――では帝国攻略最後の一手、よろしくお願いしますね」


「ああ。来年の雪解けでまた会おう!」


 そう言うとブラウンシュヴァイク辺境伯も馬に跨り、軍の先頭に戻っていった。



(雪解けでまた会おう、か。レブナントに何かあっても、レブナント軍が救援に駆け付ける道はない。それまでは私が守り切らないと!)


 私も早く王宮に戻って、各地に睨みを利かせなければならない。


 馬車に乗り込み、レブナント王都へ急がせた。





****


 ――殿下の執務室。


 王宮に、連絡術式用の魔道具は残っていない。最後の一つはジュリアスが持って行ってしまった。


 私たちは帝国に攻め入った彼らを信じ、日々の執務をこなしていた。



 私は、普段はジュリアスに任せきりだった、雑事を含む執務を片付けていた。


「ヒルデガルト、ちょっといいか」


 目を上げると、殿下が気の抜けた顔で書類を手に私の執務室に入ってきたところだった。


「なにかありましたか?」


「西方国家の一部が、南方国家に攻め込んだらしい」


 私は頭を抱えながら応える。


「小賢しい国もあったものね。そんな力があるなら西方連合軍に尽くしなさいよ……」


「まったくだな――レブナントは助勢する同盟を結んでいる。俺とノルベルトは二千の兵を連れてちょっと鎮圧に行ってくる」


 私は顔を上げて尋ねる。


「二千で足りるんですか?」


「ああ、あちらも大差ない。しかも半分以上が民間人を徴兵して作った即席の軍隊の様だ。南方国家でもなんとか防戦は出来てるみたいだが、追い返すところまでは力が足りないらしい。俺たちが行けばすぐに片が付くだろう。俺たちが戻るまでの間、王都を頼む」


「わかりました――ベルトは?」


「今は兵士たちを編成している。終わり次第、ここに来るよう伝えておこう」


「よろしくお願いします」


 殿下はひらひらと暢気に手を振りながら、部屋を出ていった。


(嫌な予感の通り、動きを見せる西方国家が居たのか)


 動くのが一国だけとは限らない。次に動く国家が居た場合は、私が鎮圧に向かわねばならないだろう。




 しばらくして、ベルトが私の執務室に顔を出した。その顔はやはり、暢気なものだった。


「ヒルダ。少しの間留守にするが、無茶はしないでくれ」


「ええ、もちろん――直ぐに出発してしまうの?」


「ああそうだ。おそらく一か月以内に戻ってこれると思う」


 最長一か月――事が起こるには十分な時間だ。


 私は嫌な予感を微笑の裏に隠し、ベルトに応えた。


「あなたの帰りを待ってるわ。気を付けてね」


 ベルトは頷いた後、執務室を後にした。



 いくらレブナントががら空きとは言っても、少数の兵力で王都を攻め落としたところで、帝国を解体し終わったレブナント軍が戻ってくれば殲滅されるだけだ。


 そんな無意味なことを考える国家はいないと思うのだが――



 だがそんな私の想像を上回る事に、事態は発展していくのだった。





****


 ――殿下とベルトが王宮を発ってから一週間後。


 私の元に文官が慌てて駆け込んできた。


「敵襲です! 西方から一万の兵がまっすぐ王都を目指しています!」


 私の手から、持っていたペンが零れ落ちた。


 直ぐに冷静になり「わかりました。残った兵士は陛下の周辺を守らせてください。私が敵に対応します」と文官に告げ、下がらせた。



 ――一万の兵を隠している国家が居たか。いや、おそらく半数以上は民間人を徴用したものだろうが、数が多い。


 そもそも狙いが解らない。一時的に占領しても、その程度であれば戻ってきたレブナント軍に殲滅されるだけだ。


 考えても分からないものは判断を保留するに限る。今はただ、敵の到着を待つことにしよう。





 ――五日後、王都の前に、一万の西方国家軍が展開していた。


(民兵じゃない、正規兵ばかりか。小賢しい)


 私は陛下から「せめて少しは兵士を付けなさい」と言われ、百名程度の兵士を従えて敵軍と対峙していた。


 この人数の軍隊が居ては、殿下たち二千の兵士も容易に近づくことはできないだろう。下手に近づけば襲い掛かられて、殿下の命が危うい。それは避けねばならない事態だ。



 敵軍から伝令がやってきて、書状を読み上げはじめた。


「レブナントに告ぐ! 貴国に在籍する筆頭宮廷魔術師、ヒルデガルト・フォン・ファルケンシュタインの投降を要求する! この要求が飲まれなかった場合、わが軍は王都の蹂躙を開始する!」


 そう告げると、使者は自軍に戻っていった。



(狙いは私、か。私が人間相手に権能を使えないことまで伝わってるのかしら。妙に強気ね)


 少なくとも、空を駆け大地を抉ると噂される魔術師を相手にしている緊張感は感じられない。


 しかも王都の人々を人質に取る辺り、私のことをよく調査しているようだった。



 私の周囲に居る兵士たちが狼狽しているのが伝わってくる。


 今ここに居るのは百名、陛下の元に九百名。あと十日もすれば、殿下の率いる二千の兵が戻ってくるとはいえ、一万を相手取るには不足が過ぎる。


 王宮に残っているのは一般兵士で騎士ではない。害獣程度なら相手にしてきているが、実戦経験はその程度だ。一万の兵士を目の前に怖気づくのも仕方がない。


(ここに居られても足手まといね)


「あなたたち、ここはいいから陛下の元に戻りなさい。あの馬鹿どもはわたくしがなんとかいたします」


 兵士たちは驚いたが、この場から逃げられることに安堵したのか、すぐさま陛下の元へ駆け出していった。


 王都の民は息を潜めているようだ。普段と違い、街から活気を感じることはできない。



(これはあんまりやりたくなかったんだけど……しょうがないか)


 私はイングヴェイに祈りを捧げて、手元に集まる魔力を確認していた。





****


 一時間後、王都の前では、一万の西方国家軍と一万のレブナント軍が激突していた。



「なんだこいつら! 化け物か!」


 西方国家軍の兵士の叫びが聞こえる。


 いくら切りつけても平気な顔で反撃してくるレブナント軍の兵士を相手に、萎縮し始めたようだ。


 レブナント軍の兵士は手に何も持っておらず、素手で西方国家軍に立ち向かっている。殴り、押し倒し、無力化したら次の兵士に向かう。


「はーい、おかわりいくわよー」


 私の暢気な声が戦場に響き渡る。


 戦況が有利に傾き始めたことを確認して、私は追加で一万のレブナント軍を新たに生み出した。


 ――古代魔法版『蜃気楼』の軍隊である。自律行動する兵士たちに与えているイメージは「相手を無力化すること」のみ。ベースイメージはクラウ襲撃事件で見たベルトだ。


 つまり今、新たに生み出された一万を追加した、合計二万人のノルベルト・フォン・キルステン(十五歳)が西方国家軍に襲い掛かっていた。


 鬼の形相で殴りかかってくる二万人の若いベルトである。肉体強化術で強化されたその瞬発力は次々と西方国家軍の兵士を無力化していく。


 逃げる隙も与えず、一人残らずぼこぼこにしていく。


 もう一時間も経過しないうちに、西方国家軍は完全に沈黙していた。



(ベルトのイメージが悪くなりそうだから、最後の手段だったんだけどねー)


 おそらく今後、この戦いに参加した西方国家の兵は、ベルトの姿を見るだけで震えあがる事だろう。


 一万人のベルトに敵兵を抑え込ませ、残りのベルトにはロープを調達させて敵兵を縛り上げていく。


 全員の捕縛が終わったところで、『蜃気楼』を解除した。



 遠くから様子をうかがっていたらしいレブナントの兵士が、恐る恐る近づいてきた。


「ファルケンシュタイン侯爵、これはなにをなさったのですか……」


 私はにっこりと笑みを返し「内緒よ」と答えた。魔術師にとって、魔法は機密なのだ。


「兵士達は一か所にまとめておいてください。指揮官らしき人物がいたらここに連れてきてね」


 私の指示を受け、兵士たちが西方国家の兵たちを運んでいく。



 十分後、私の前に指揮官らしき人物が転がされていた。顔はぼこぼこに殴られ兜は脱げているが、着ている鎧は士官の上等なものだ。


 他にも数人、士官らしき人物が転がされているが、今私の目の前に居るのが指揮官で間違いないだろう。


 魔法で水を生み出し、指揮官に浴びせかけ覚醒させる。


「……なにが起こった」


 目を覚ましたらしい指揮官は、事態を飲み込めていないようだ。


「あなた、どこの国の人間なのかしら?」


 私の問いかけに、指揮官は沈黙で返した。


「その鎧、ルーニア国のものによく似てるわね。ルーニア国所属の兵士、でいいのかしら?」


 今度の問いかけにも、指揮官は沈黙で返した。


「……私を狙った理由は、なにかしら? 私の身柄を確保した後、なにをするつもりだったの?」


 やはり、指揮官は沈黙で返した。


 私は大きくため息を吐いた。


「……強情な人ね。正直に吐けば、苦しまずに済むのに」


 私のその言葉に、だが指揮官は強気だった。


「ハッ! 貴様が人間相手に魔法を使えないことは調査済みだ。そんな腰抜けに何ができる!」


 私はニコニコと心からの笑みを浮かべた。


「そうね……こんなのはどうかしら?」


 私は古代魔法で強制的に指揮官を眠らせた――眠り草の術式など目ではない、一瞬で意識を奪う魔法だ。


 そのまま、酷い悪夢を見る魔法を重ねる。指揮官が十分にうなされた頃合いを見て、強制的に覚醒する魔法をかけ、指揮官を起こした。


「どうかしら? 正直におしゃべりする気になりました?」


 指揮官は沈黙で返した。


「じゃあ、しばらくこれを繰り返すから、しゃべる気になったら、心が壊れる前に早めに言ってね?」


 言うが早いか、私は即座に指揮官を眠らし――以下略。





 ――二時間後。


「あなた、かなり強情ね?」


 既に百回を優に超える悪夢の洗礼に、指揮官は耐えていた。


 たかが夢、されど夢。眠りと言う、心が無防備な状態に強制的に陥れられ、精神的なダメージの大きいイメージで苛まれ続けるのだ。精神的にも、そして肉体的にもかなりの負荷がかかっているのが解る。


 その責め苦に、よく耐えてる。だが、あともう一押しだろう。


「そろそろ陽が傾きかけて来たわね――私も飽きてきたから、見せる悪夢をもっと酷いものに変えるけど、大丈夫? 心が壊れてしまわない? 今までのは、とっても手心を加えて来たのよ? あなたが素直に”ルーニアの兵です”って言えば、悪夢からは解放してあげるわ」


 この二時間、必死に耐えて来た悪夢が”手心を加えられたもの”という事実を認識したのか、ついに心の折れた指揮官が「……ルーニア国所属のものだ」と呟いた。


 その後の私の質問には、とても素直になってくれたので、ご褒美に安眠の効果を加えて三日間目覚めない魔法をかけた。



「――ふぅ。軍人さんって強情なのね。疲れちゃった。ねぇ、この人は牢屋に入れておいてあげてね」


 私の背後で蒼い顔をして様子を見守っていた兵士に告げ、私は執務室に戻っていった。





****


 ――三日後。



「ヒルダ! 無事か!」


 私の執務室に、ベルトが慌てて飛び込んできた。


 私はそれを笑顔で迎える。


「ええ無事よ? どうしたの? そんなに慌てて。ずいぶん早かったわね?」


 予定ではもう数日は後のはずだ。


「王都が軍に襲われたと聞いて、殿下の許可をもらって馬を飛ばしてきた。だが敵兵は既に捕縛済みだそうだな。君がやったのか?」


 私は「もちろんよ? そういう計画だったでしょう?」と笑みで応える。


「ルーニア国が、私の魔法に目を付けたらしいの。私から秘儀を聞き出すつもりだったみたいだけど、どうして自分たちに扱えると思ったのかしらね?」


 私は肩をすくめてみせた。ルーニア国は魔術が盛んな国ではある。だが他国の魔法を盗もう、というのはさすがに血迷い過ぎだ。古代魔法は当然として、現代魔法だろうと一朝一夕で習得できるものではない。


「敵兵は全員捕縛済みだから、レブナント軍が帰国したら、ドレアニアン王国にも協力してもらってルーニア国にお仕置きしないといけないわね」


 本来なら、全国家が力を合わせて帝国を打倒しなければならない、そんなタイミングで「こっそり正規兵一万を隠してました」である。西方国家連合軍を指揮するドレアニアン王の面子も丸潰れだ。


 ベルトは胸を撫で下ろし、安堵した表情で質問してきた。


「君が無事でよかった――だが、何をしたんだ? 王宮に残っていた兵士たちの、私を見る目が以前と違うんだが」


(あら、あの光景を目撃されてたのね)


 私は微笑みを浮かべて質問に答える。


「ちょっとキルステン伯爵令息時代のベルトを二万人ほど『蜃気楼』で作り出して、敵兵をぼこぼこにしただけよ?」


「ぼこぼこ?」


「ぼこぼこ」


「……もしかして、クラウディア様襲撃事件の時の?」


「あら、いい勘してるわね。そうよ?」


 しばしの沈黙――笑みが交錯する。


「もう、それを使うのはやめてくれないかな? 私のイメージが酷いことになる」


「でも、あれが一番イメージしやすいんですもの。大丈夫よ、最後の手段だから。滅多なことじゃ使わないわ」


 がっくりと項垂れたベルトが「本当に、最後の手段にしてくれ」と嘆願してきたので「ええ、もちろんよ」と明るい声で返してあげた。





****


 ――雪が降りしきる侯爵邸の庭。子供たちは雪に大はしゃぎで飛び込んでいる。



「お母様! 雪です!」


「ええそうね。あなたたちは雪が大好きね」


 雪まみれになるマリーとサイに笑みを返しつつ、見守る。


 子供たちを追いかけるベルトは大変そうだ――一緒になって、遊んであげているようだ。



 社交界を使って、私が二万の『蜃気楼』でルーニア一万の軍を退けたことを流布していた。


 この噂を聞いて、がら空きのレブナントに攻め入ろうとする国は、もう居ない。がら空きに見えても、私がいくらでも無敵の兵士を生み出すのだ。手を出すだけ無駄、というのが理解できたはずだ。


 クラウは「ほんと、あなたはやることが派手よね」と呆れながら、エマと一緒に噂を流すのを手伝ってくれていた。


(クラウには言われたくないかなー)


 派手好きな訳ではないのだが、結果的に派手になってしまう、というだけなのだ。




 十一年前の今頃、私はこの精霊眼をイングヴェイから授けられた。


 あの頃夢見ていた、愛の溢れる家庭――それを今、私は手に入れている。子供たちと笑顔で戯れる、優しい夫の姿を見やりながら、感慨にふける。


 夫と共に、私に愛を教えてくれたお父様――彼は今も、書斎で新しい魔法の研究をしている。孫たちにデレデレなのは、仕方あるまい。



 空を見上げる。鈍色の空――かつては貴族の重責で押し潰されそうになりながら見上げた空も、今は懐かしい。


 私は多分、与えられた責務を十全に果たせているだろう。胸を張ってそう言える――ジュリアスにかなり助けられてはいるが。


(ジュリアスはどうしてるかな)


 従軍して魔術師団を指揮していたのだ。危険と隣り合わせである。怪我などしていなければいいのだが――でも彼は、お父様を上回る大魔術師だ。今回活躍して、彼の名が轟くのかもしれない。



 あと四か月もすれば、帝国領からみんなが返ってくる。諜報部からの連絡で、無事帝都の制圧は完了し、帝国軍は降伏したとあった。今は帝国解体を進めている最中だという。かつて帝国に征服された国家を復権させ、領土を返還する予定だという。帝国領は今後、多数の北方国家群となるだろう。


 好戦的な大国家である帝国が瓦解した今、大陸で最大の軍事力を持つのはレブナントとなった――その力の半分はファルケンシュタイン侯爵だ、という噂があるが耳を塞ぐことにする。


 だがレブナントは穏健な国家だ。他国へ侵攻する意図はなく、各国と不可侵条約を積極的に結ぶ国だ。危険視する国はいないだろう。


 つまり、大陸は雪解けと共に本当の春を迎えることになる。各国が文化を交流させ、平和に発展していく時代だ。


 戦乱は終わる。子供たちに平和な時代を届けられたことに、胸を撫で下ろす。



(――イングヴェイ、聞こえてる?)


『ああ、聞こえてるよ』


(私にこの左目を授けてくれて、ありがとう)


『なに、どういたしまして』


(これから先、この大陸の人々はどうなっていくのかしら)


『それは君たちの問題だ。君たちが頑張ることさ。私はただ、見守るだけだ』


(あなたはいっつもそればかりね! でも、それが神様ってものなのでしょうね)


『そうだね。私は神だからね』



 イングヴェイは変わらない。ただ私を見守ってくれているだけだ。


 でもそれで十分なのだ。彼が見てくれていると思うだけで、私は背筋が伸びる思いになる。


 彼の愛に恥じない人間であろう、そう思える。


 かつては自分のものと思えなかったこの左目の精霊眼も、いつの間にか私は、愛しい自分の一部として認識できるようになっていた。


 今の私を作り上げるきっかけとなった、イングヴェイの愛の証だ。




「お母様! 一緒にスノーマン作ろう!」


 マリーの誘いに、笑顔で応える。


「ええ、いいわよ! ベルトたちよりおっきなスノーマンを作っちゃいましょう!」


 サイとベルトが作るスノーマンの隣で、マリーと一緒に雪を捏ね始める。


「お母様! 魔術を使うのは反則です!」


 手で雪を捏ねていたサイが不服を言ってきた。


「あら、だって雪に直接触れたら霜焼けになってしまうわ。それに、魔術師は魔術を使う物よ?」


 悔しそうなサイを横目に、マリーと一緒に魔力で雪玉を捏ね上げた――そう、マリーもどうやら、強い魔力を持っているらしいのだ。この年齢にして既に、魔力制御を覚えている。どのくらい強いかは、十二歳を迎える時に分かるだろう。


「マリーはヒルダによく似ているから、きっと将来は筆頭宮廷魔術師だな!」


 ベルトの明るい声が、鈍色の空に響いた。


 私はその声に応える。


「もしそんなことになったら、親子三代で筆頭ね……さすがにそれは、どうなのかしら」


 でもそれも面白いかもしれない――きっとお父様は喜ぶだろう。





 その晩、侯爵邸の庭には五体のスノーマンが並んでいた。


 一番大きいのがお父さんスノーマン。


 その隣にお母さんスノーマン。


 お父さんとお母さんの間に挟まるように、二つの子供のスノーマン。


 お爺ちゃんスノーマンも居る。



 雪は冷たいけれど、温かい光景だ。


 私が追い求めていたものが、そこには在る。


 これからも私は、この光景を守り続けていくことだろう。


ヒルダの夢が成就したので、これにてヒルダの物語は終了です(多分)


プロットとは名ばかりの1枚のイメージボードから暴走特急してついに30万文字ですか。この物語はいったいどこから生み出されるのだろう? 我ながら不思議です。なんか手が勝手に物語を綴り始めるんですよね。書いてる自分でも、話がどう転がるのかわからないまま、楽しんで書いてました。


リハビリに執筆開始してから第4章推敲完了まで、丁度一か月かな。1万文字/日ですか。どういうペースだ?

それだけ「ヒルデガルト」というキャラクターを気に入っていたのかもしれません。


マリオンやサイモンの物語が続いていくかは……自分でもまだわからないですね。

頭の中のこの子たちがいい感じの性格に育っていったら、また勝手に物語が紡がれるかもしれません。→紡がれちゃいました。興味のある方、お時間のある方は5章へお進みください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 全話拝読させていただきました。読み進めるのが大変楽しく、途中からやめられなくなりました! 第4章は、主人公視点で軽快に書かれていて、テンポ良く読めました。ただ、帝国や西方国家連合の登場人物…
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