特大防御?
高校野球の全国大会、その一回戦の試合前だ。
片方の学校が練習している時間帯に、レフトスタンドで応援団長が叫んだ。
「展、開!」
すると、レフトスタンドの様子が一変した。
そこにいる高校生たちが一斉に、ダークグリーンの盾を自分の正面に、傾斜をつけて構えたのだ。
レフトスタンドに突如、巨大な壁が出現する。
この光景を目にしたアナウンサーが、実況席で大声を上げた。
「あれは、まさか!」
隣にいたゲストが尋ねる。
「あの変なのを、知っているんですか?」
「ええ。プロ野球の試合で以前、あれと同じようなものを、見たことがあります。たしか名前は、『グリーンモンスター』。相手チームのホームランを防ぐための『特大防御壁』、『臨時の外野フェンス』です!」
しかし、アナウンサーの記憶にある『グリーンモンスター』と、完全に一致しているわけではなかった。
前に見たやつは、ダークグリーン一色。
それに対して、今回のやつには文字がついている。外野フェンスには通常、広告がついているので、あれを模したのだろうか。
レフトスタンドに現れた『グリーンモンスター』、そこに書かれているのは・・・・・・。
「ああ、なるほど。これから対戦する両校の、故郷の『名所』とか『名産品』ですね」
ということは、この『グリーンモンスター』、相手チームのホームランを防ぐためのものではなく・・・・・・。
「どうやら、私の知っている『グリーンモンスター』とは、別物のようです」
表情を緩めるアナウンサー。
次の瞬間、再び応援団長が叫んだ。
「『新型グリーンモンスター』、第二形態へ移行!」
ダークグリーンの盾が一斉に反転し、レフトスタンドの様子が一変する。今度の壁は白だ。
そこにも、文字が書かれている。今度の文字は、墨汁によるもの。これから対戦する両校の名前と、「お互いがんばろう」というメッセージだ。
このサプライズに、ライトスタンドからは、大きな拍手がわき起こる。
その拍手が球場全体へと広がっていくのに、それほど時間はかからなかった。
次回は「クロスプレー」のお話です。




