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特大防御!

 相手チームの四番打者が登場すると、外野スタンドは大きくざわついた。


 この選手にホームランを打たれて、試合に負けるパターンが多いのだ。他の選手たちをいくらおさえていても、この選手の一振ひとふりで、戦況せんきょうをひっくり返されてしまう。


 はげしい優勝争いをしている最中さいちゅうなので、直接対決での黒星くろぼしは、できる限り減らしておきたい。


 そのためには、この選手にホームランを打たれてはいけないのだ。しかし・・・・・・。


 昨日の試合では、第一打席から特大の一発をびてしまった。第三打席、第四打席でも打たれてしまい、そのまま敗戦。


 味方チームは色々と対策をしているようだが、まったく通用していない。


 てきながら、本当にすごい選手だと思う。それは素直すなおみとめる。


 だからといって、完全にあきらめる、そんなわけにはいかない。この選手にさえホームランを打たれなければ、勝率は大きくね上がるのだ。その先にあるのは、「優勝」のふた文字もじ


 たしかに、味方チームの対策は、どれも通用しなかった。苦しい状況なのは、外から見ていてもわかる。


 こういう時こそ、ファンが力にならなければ。


「いくぞ!」


 外野スタンドにいるファンが団結だんけつする。ホームランを阻止そしするための秘策があった。


てんかい!」


 応援おうえん団長の声で、外野スタンドの様子ようすが一変する。


 外野スタンドにいるファン全員が一斉いっせいに、ダークグリーンのたてを自分の正面に、傾斜けいしゃをつけてかまえたのだ。


 さらに、すぐ近くのゲートをくぐって、同じ盾を持った増援ぞうえんが駆けつけてくる。彼らは通路担当だ。ボールが入ってくる余地よちを残さない。


 こうして外野スタンドに、傾斜のついた巨大なかべが出現する。


 作戦名は『グリーンモンスター』。


 この盾の色は、外野フェンスの色と同じだ。これは、ファンみずから体をって、「臨時りんじの外野フェンス」となる作戦。


「さあ、どこからでも、かかって来い!」


「どんなホームランだって跳ね返してやる!」


「ここまでが外野フェンスだ!」


 応援団の楽器担当が、ゲームのラスボス戦っぽい音楽を流して、味方を鼓舞こぶする。


 外野スタンドにいるファンが、全員でさけんだ。


「いざ、尋常じんじょうに勝負!」


 これに、相手チームの四番打者もこたえる。予告ホームランのジェスチャーをしてきた。バットの先端を、『グリーンモンスター』の中心部分に向けてくる。


 数秒後、ピッチャーが初球を投じた。


 相手選手は全力のフルスイングだ。


 それは、快音かいおんと同時だった。さすがと言うべきか、ホームラン性の当たりだ。


 しかし、ここまでは予想通り。


「来るぞ!」


えろ!」


「特大防御だ!」


 とはいえ、外野スタンドにいるファン全員が、屈強くっきょうな男たちというわけではない。女、子供、老人もいるのだ。


 もしも弾丸だんがんライナーで飛んでくるホームランなら、命中する場所によっては、この『グリーンモンスター』を突破されてしまうだろう。


 外野スタンドにいるファンは、両腕りょううでに力を入れていのり続ける。


 みんなの力で、あの選手のホームランを止めるのだ。そうすれば味方チームは、この試合に勝てるはず!


 すぐさま、強烈きょうれつな音がした。直撃ちょくげきしたのは、『グリーンモンスター』の中央付近。


 その結果は・・・・・・


「耐えたぞ!」


「成功だ!」


「ボールを跳ね返したぞ!」


 一斉に歓声がわき起こる。


 跳ね返したボールは、味方の外野手がキャッチした。


 しかし、その直後だ。


「ホームラン!」


 審判しんぱんの声がひびわたったのである。






 翌日よくじつ、相手チームの四番打者が登場すると、外野スタンドは大きくざわついた。


 昨日の試合は負けてしまったが、今日こそは勝つ。


「いくぞ!」


 外野スタンドにいるファンが団結する。ホームランを阻止するための秘策があった。


てんかい!」


 応援団長の声で、外野スタンドの様子が一変する。


 外野スタンドにいるファン全員が一斉に、ダークグリーンの盾を構えた。


 さらに、すぐ近くのゲートをくぐって、同じ盾を持った増援が駆けつけてくる。彼らは通路担当だ。ボールが入ってくる余地を残さない。


 こうして外野スタンドに、傾斜のついた巨大な壁が出現する。


 作戦名は『強化型グリーンモンスター』。


 盾の内側にスポンジ素材そざいを張りつけて、衝撃しょうげき吸収きゅうしゅう効果を追加ついかしている。そして、さらに・・・・・・。


 応援団の楽器担当が、ゲームのラスボス戦っぽい音楽を流して、味方を鼓舞する。今日は人数と楽器の種類を増やしているので、音の迫力はくりょくが昨日とは違っていた。


 これに、相手チームの四番打者も応える。予告ホームランのジェスチャーをしてきた。バットの先端を、『強化型グリーンモンスター』の中心部分に向けてくる。


 しかも、昨日同様、初球から快音を響かせてきた。さすがと言うべきか、ホームラン性の当たりだ。


 このあとの展開も、昨日とだいたい同じになる。


 ファンが団結してきずき上げた『強化型グリーンモンスター』が、ホームランを跳ね返した。


 そのボールを、味方の外野手がキャッチする。


 そこで応援団長が叫んだ。


「第二形態へ移行いこう!」


 これこそが、本当の秘策だ。ホームランをふせいだあとに、この『強化型グリーンモンスター』は、さらなる進化をげることになる。


 直後に審判が、「アウト」の判定をした。


 外野スタンドのファンは、歓声を爆発させる。


 が、球場内にいる他の観客たちは、目が点になっていた。


 外野スタンドの通路に、大勢の審判がいる。おそらく百人以上。彼ら全員が一斉に、「アウト」の判定をしているのだ。


 これって、さっきまで通路で盾を構えていたファンが、審判のコスプレをしているだけじゃ・・・・・・。


 球場全体の注目が、本物の審判へと集まる。


 本物の審判は外野スタンドの方に視線を向けると、もうわけなさそうな顔をしてから、「ホームラン」のジェスチャーをした。


 外野スタンドにいるファンの団結力には感心するが、野球のルール上、今のは「ホームラン」だ。「アウト」ではない。


 この判定に、外野スタンドのファンは一斉にうなだれる。


 しかし、彼らの挑戦はまだ始まったばかりだ。


 いつの日かまた、新たな秘策を用意して、相手チームのホームランを阻止しにくる・・・・・・かもしれない?


次回は「一回戦の試合前」のお話です。

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