スポーツ新聞、ドラフト予想
日付が変わった。今日の夕方には、プロ野球のドラフト会議が行われる。
「まだ判明しないのか?」
あるスポーツ新聞社では深夜、焦りの声が飛んでいた。
今日の新聞の一面に、「各球団のドラフト一位指名は、どの選手なのか」という予想を載せることになっている。
十一球団については、すでに把握していた。
ところが、一球団だけがわからない。
さまざまな人脈を駆使して、情報収集にあたっているけれども、未だ特定できていなかった。
候補の選手は三人いる。
その中に一位指名の選手がいるのは、確実なのだが・・・・・・。
「他紙の様子は、どうだ?」
「どこも同じような感じっぽいです」
昨日までに発売された野球雑誌でも、三人の名前を並べているところが多いという。
最近では、ドラフト会議の数時間前になって、最終決定を行う球団もある。
しかし、その前にこっちは、新聞を刷らなければならないのだ。
球団側が後出しジャンケンをしようと思えば、できる状況にある。
だが、スポーツ新聞の予想を外したい、そんな理由で、一番欲しい選手を決めるだろうか。いや、普通はしない。
「どうします? 予想の欄には、三人の名前を載せますか?」
「駄目だ。一位指名の予想は、各球団一人ずつ。うちの会社は昔から、その方針でやっている」
それで的中率が低いのならまだしも、そうではないのだ。的中率では毎年、他のスポーツ新聞や野球雑誌を抑えて、トップが当たり前。悪くても二位だ。
そんなプライドがあるので、予想は一人にこだわりたい。三人載せるなど、うちの新聞に期待してくれている読者を、裏切ることになる。
しかし、紙面を刷る期限は、刻一刻と迫ってきていた。
どこかで最終決定をしなければならない。三人の候補者、誰の名前を載せるのか。
さらに待ってみるが、状況は進展しなかった。
これ以上は待てないという時間になったので、
「仕方がない。例の方法でいく」
すぐさま箱が用意される。その中には、各選手の名前が書かれた紙が、それぞれ一枚ずつ入っていた。
この会社では、最後まで迷った時には、こうやって「クジ引き」で決めるという伝統がある。
過去にも、この方法を用いて、高い的中率を誇ってきたのだ。
だから、今回も大丈夫なはず!
「では、引くぞ」
箱の中から紙を一枚だけ取り出した。
これで、「ドラフト一位指名」の予想決定!
次回は「外野スタンド」のお話です。




