超能力
ドラフト会議の一位指名で、四球団が競合した。
他球団が見守る中、四球団の代表者たちがステージへと向かう。
そして、司会者の指示に従って、箱の中から順番に一つずつ、クジの入った封筒を引いていく。
はたして、どの球団が当たりクジを手にするのか。
「それでは、一斉にお開けください!」
司会者の声とともに、四球団の代表者たちが封筒の中身を確認する。
しかし、彼らは互いに顔を見合わせるだけで、誰もガッツポーズをしようとしない。
早く名乗り出るよう、司会者が促してみたが、四人の様子は変わらなかった。
これはいったい?
司会者は異変を感じて、スタッフたちに指示を出した。
即座に確認作業が行われる。
その結果、なんと全員のクジが白紙だった! 四つの封筒のいずれにも、当たりクジが入っていなかったのである。
すぐにやり直しが決まり、新しい封筒が用意される。
この時、四球団の代表者たちを見ながら、一人の男が笑みを浮かべていた。
ある球団の関係者で、自分の両手をテーブルの下に隠している。テーブルクロスがあるので、中で何をしているのか、外からは見ることができない。
(何回やろうと、同じことだ)
男は右手に何もつかんでいなかった。
一方で、「左手」には、四つの封筒をつかんでいる。
(はああああ!)
声には出さずに気合いを込めると、不思議なことが起こった。
男は今、「右手」の方に、四つの封筒をつかんでいる。
で、左手の方には、何もつかんでいない。
さっきまでとは正反対だ。
これこそが、この男の超能力。
四球団の代表者たちが二回目のクジを引き終わる。
「それでは、一斉にお開けください!」
今回も全員が白紙だった。会場がざわつく。
(無駄なことだ。当たりクジの入った封筒は、箱の中にある時点で、俺の「右手」に瞬間移動させている)
男は内心で笑いが止まらなかった。この超能力がある限り、あの四球団が何回クジを引こうとも、当たりを手にすることは、絶対にないのだ。
とはいえ、箱の中が空っぽになるのはまずい。
そこで、右手の瞬間移動と同時に、「左手」からは別の封筒を四つ、箱の中へと瞬間移動させているのだ。
よって、奴らが引くのは、すり替え済みの外れクジのみ。
(早くあきらめろ。その選手は、うちの球団が二位で指名する)
新たな封筒を四つ、男は「左手」につかんだ。封筒の中に入っているのは、どれも白紙の外れクジだ。
(当たりクジを何回用意しようとも、俺の超能力で交換してやる)
外れクジ入りの封筒は、大量に用意してきた。こうやっていれば、いずれ奴らはあきらめるだろう。縁がなかったのだと、早く悟れ。その選手は、うちがいただく!
男が勝利を確信していると、司会者が落ち着いた声で言う。
「クジ引きじゃなくて、ジャンケンにしましょうか。それでは、最初はグー」
次回は「お寺」のお話です。




