セカンド誕生日
美しい弧を描いた打球が、外野スタンドへと吸い込まれていく。
実況が告げる。
「入ったぁぁぁぁぁぁ! これはバースデーアーチ!」
バースデーアーチとは、誕生日に打つホームランのことだ。
しかし、プロ野球は一年中やっているわけではないので、試合のある時期に誕生日の来ない選手もいる。
そんな選手は、絶対に「バースデーアーチ」を打つことができない。投手の場合、「バースデー勝利」が不可能だ。
これは不公平ではないだろうか?
そういった声があり、プロ野球では実験的に、『セカンド誕生日』制を導入してみることにした。
本来の誕生日とは別に、便宜上、もう一つの誕生日を設定するのだ。それが『セカンド誕生日』制。
基本的には、本来の誕生日の六か月後が、『セカンド誕生日』になる。
その選手の誕生日が「一月一日」なら、六か月後の「七月一日」が『セカンド誕生日』。月だけが「六か月」追加されて、日付はそのままだ。
ただし、「三十一日」生まれだと、六か月後が「三十日まで」ということもある。その場合の『セカンド誕生日』は月末、「三十日」になる。六か月後が「二十八日まで」の時も同様で、月末が『セカンド誕生日』になるのだ。
これにより、プロ野球の選手は全員、シーズン中に必ず、「本来の誕生日」か『セカンド誕生日』が、巡ってくることになる。「バースデーアーチ」や「バースデー勝利」が可能だ。
なお、誕生日の選手は当日、試合前の練習で『金色の腕章』をつけることが決まった。こうしておけば、傍目にもわかりやすい。
試合中にも腕章をつけるかどうかは、個人の判断に任せる。各選手の好きにしていい。
また、その日に試合が組まれていない、もしくは、雨天中止などで試合が延期になってしまった、という場合、次の試合まで誕生日を繰り越すかどうかは、各球団の判断に任せる。
このようにして始まった『セカンド誕生日』制。
事前の不安をよそに、選手からもファンからも、おおむね好評を得ることができた。誕生日は大勢で祝った方が盛り上がる。
しばらくして、ある試合での出来事だ。
「プレイボール!」
主審が大声で宣言する。試合開始だ。
ところが、その主審、『金色の腕章』をつけている!?
ひょっとして・・・・・・。
両チームのベンチから、それぞれの監督が出てきた。腕章をつけている理由を、主審に直接確認する。
すると、やはりだ。今日が誕生日だという。
誕生日の選手たちが、みんなから祝福されている、それがうらやましかったのだとか。
「そういうことでしたか」
両チームの監督は笑顔になると、その場で拍手をして、主審の誕生日をお祝いする。
球場全体も、それに続いた。ファンも、選手たちも、他の審判たちも、みんなで祝福する。誕生日おめでとー。
そんな温かい雰囲気の中、
「けっ、何が誕生日だよ」
苦々しく吐き捨てる者がいた。
ホームチームの「マスコットキャラクター」である。
ベンチ裏で自分の公式プロフィールを見返すのだが、誕生日の欄に載っているのは、「あんぱんの月、メロンパンの日」。
「これって、何月何日だよ!」
マスコットキャラクターはぶち切れる。
本来の誕生日、その日付が意味不明なので、『セカンド誕生日』も特定不可能だ。
次回、「あんぱんの月、メロンパンの日」の日付が判明。




