「ベスボマ、ベスボマ、ベースボールピープル・・・・・・」
プロ野球のドラフト会議で、最初の球団が一位指名の選手を開示した。
直後に突然、その球団の円卓にいる全員が手をつないで、こう唱え始めたのだ。
「ベスボマ、ベスボマ、ベースボールピープル・・・・・・」
彼らの顔は真剣そのもので、ふざけている感じには見えない。
会場内がざわつく。あの球団は何をやっているのか。
異様な雰囲気の中、司会者が「声を出さないように」と、その球団を注意した。
それで彼らは無言になったものの、相変わらず真剣な顔で、隣同士と手をつないでいる。
会場にいた他の者たちは考える。ひょっとして、幸運を招き寄せるための「おまじない」か何かだろうか。
その上で彼らの様子を観察すると、人間の目には見えない力、おそらくは幸運を、一つに結集しようとしている。そんな印象を受けなくもない。
しかし、馬鹿馬鹿しい。あんなことをしただけで、一位指名の当たりクジを引けるのなら、誰も苦労はしないって。
ところが、三球団競合の末に当たりクジを手にしたのは、その球団だった。
会場内が再びざわつく。さっきのやつ、本当に効果があるのか?
それから一年後。
今年もドラフト会議が始まった。
一位指名の選手を開示するなり、次々と各球団の円卓では、隣同士と手をつないで、例の言葉を唱え始める。
「ベスボマ、ベスボマ、ベースボールピープル・・・・・・」
「ベスボマ、ベスボマ、ベースボールピープル・・・・・・」
「ベスボマ、ベスボマ、ベースボールピープル・・・・・・」
その会場にはたまたま、日本野球を取材する目的で、大勢の外国人記者たちがいた。
この時目にした衝撃を、彼らは母国に戻ったあとで記事にする。
おかげで、この言葉は世界中に広まることになった。
それから百年後。
「ベスボマ、ベスボマ、ベースボールピープル・・・・・・」
世界のあちこちでは、さまざまな場面において、幸運の「おまじない」として、この言葉が使われている。
だが、その由来を正しく知る者は、極めて少ない。
「ベスボマ、ベスボマ、ベースボールピープル・・・・・・」
次回は「競馬場」のお話です。




